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昭和医科大学医学部における教育理念と臨床実践の統合分析

昭和医科大学(以下、昭和大学)医学部は、1928年の創立以来、「至誠一貫」という建学の精神を掲げ、高度な医学知識と技術、そして豊かな人間性を兼ね備えた医療人の育成に邁進してきました。本学は、医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部の4学部を擁する医系総合大学として、そのリソースを最大限に活用した独自の教育システムを構築しています。特に1年次の全寮制教育や、全学年を通じて実施される多職種連携教育(IPE)は、現代医療が求める「チーム医療のリーダー」を育むための強固な基盤となっています。

本報告書では、志望者が掲げる10通りの「理想の医師像」がいかに昭和大学の教育カリキュラム、附属病院の機能、そして学風と合致しているかを詳細に分析します。

1.「病気だけでなく、人を診る医師」:全人的医療

医療の本質は、生命の現象としての病気を科学的に解明することに留まらず、その苦しみを持つ「人」としての存在に寄り添うことにある。昭和大学はこの「人を診る」姿勢を、建学の精神「至誠一貫」と校章に込められた「清楚な美」という二つの言葉で象徴しています。

至誠一貫と清楚な美の哲学的基盤

「至誠一貫」とは、「常に相手の立場に立ってまごころを尽くす」という精神を指します。これは、単なるマナーや技術としての接遇ではなく、医師としての実存的なあり方を問うものです。また、百合の紋章に象徴される「清楚な美」とは、誠実さ、真摯さ、謙虚さを内包した資質を指し、これらが人間教育の中で調和されることが目指されています。医学教育の初期段階において、これらの精神を徹底的に涵養(かんよう)することは、将来、技術のみに走ることなく、患者の人生や背景を尊重できる医師となるための不可欠なプロセスです。

医系総合大学としての多角的視点

「人を診る」ためには、医学的な知見だけでなく、看護、薬剤、リハビリテーションといった多様な専門職の視点を理解する必要があります。昭和大学のディプロマ・ポリシーでは、医療や健康に関わる科学に強い興味を持つとともに、真心を持って人に尽くす意欲が求められています。1年次から他学部の学生と生活を共にする全寮制教育は、自分とは異なる専門性を持つ他者の存在を意識させ、患者を一面的ではなく多面的な「人」として捉える感性を養う場となっています。

理念の構成要素 意味・定義 医師像への反映
至誠一貫 常に相手の立場に立ってまごころを尽くす 患者の心理的・社会的背景への深い理解
清楚な美 誠実さ、真摯さ、謙虚さを備えた内面的な資質 傲慢にならず、謙虚に患者と向き合う姿勢
涵養 水が自然に染み込むようにゆっくり養い育てる 6年間を通じた持続的な人間性の成長

2.「何でも相談してもらえる、心の距離が近い医師」:コミュニケーション

患者が医師に対して心を開き、些細な悩みまでも相談できる関係性を築くためには、卓越したコミュニケーション能力と「共感力」が求められます。昭和大学は、これらを座学で教えるのではなく、密度の濃い対人接触と共同生活を通じて身体化させています。

富士吉田キャンパスにおける全寮制共同生活の教育的価値

1年次の全寮制教育は、昭和大学が誇る世界的に見ても類稀な教育システムです。富士吉田キャンパスでは、医・歯・薬・保健医療学部の学生が4人1部屋の混合編成で生活を送ります。異なるバックグラウンドを持つ他者と24時間を共にすることは、意見の相違や摩擦を自ら解決するプロセスを強います。久光学長は、この経験を「チーム医療を進めてくるうえで絶対的に必要な、コミュニケーションの力を養う練習」と位置づけています。ここで培われた「他人と一緒に暮らし、折り合いをつける能力」は、将来、患者との間に心理的な壁を作らず、親身に相談に乗るための対人スキルの基盤となります。

早期臨床体験を通じた共感の育成

教育プログラムのステップ1(1年次)では、「医療人マインドの獲得と共感」が目標に掲げられています。この段階で実施される初年次体験実習(病院、施設、在宅訪問)では、医学的知識が未熟なうちに、まず「患者や利用者の思い」に触れることが重視されます。特に在宅訪問実習において、高齢者の生活の場に足を踏み入れ、その肉声を聴く経験は、医師と患者という記号的な関係を超えた、人間同士の「心の距離」の近さを実感させる貴重な機会となります。

3.「最後の砦として、諦めずに命を救う医師」:高度救急

理想の医師像の一つとして、どんなに困難な症例であっても諦めず、最新の知見と技術で命を繋ぎ止める「最後の砦」としての姿があります。昭和大学は、高度な救急医療や専門的な治療を展開する8つの附属病院を擁しており、学生は最前線の医療現場でその厳しさと崇高さを学ぶことができます。

昭和大学病院(特定機能病院)の高度な医療機能

品川区旗の台に位置する昭和大学病院は、特定機能病院として高度な医療の提供、医療技術の開発、そして医療人の育成を大きな柱としています。救急医療機能の認定を受けており、救命救急科や総合・救急診療科による24時間体制の医療を提供しています。ICU・CCU・SCUといった高度集中治療体制が完備されており、重症患者の命を救うための設備と専門スタッフが集結しています。

専門領域における卓越性と粘り強い治療

本学の附属病院群は、がん、心臓病、周産期医療など、多岐にわたる専門センターを有しています。例えば、昭和大学病院の「循環器センター」や、藤が丘病院の「脳卒中ケアユニット(SCU)」などは、一分一秒を争う急性期疾患に対する「最後の砦」として機能しています。特に、低侵襲な心臓手術であるTAVI(経カテーテル大動脈弁移植術)の実施や、ECMO(人工肺・心臓)を用いた高度な生命維持管理など、先進的な技術を駆使する現場に学生が触れることで、医療の限界に挑む医師の使命感を養います。

附属病院名 主な救急・高度医療機能 特徴的なセンター・設備
昭和大学病院 特定機能病院、三次救急 救命救急センター、循環器センター、ICU/CCU/SCU
藤が丘病院 災害拠点病院、2次・3次救急 救命救急科、脳卒中ケアユニット(SCU)、ICU
江東豊洲病院 災害拠点病院、脳卒中急患対応 脳血管センター(24時間365日スクランブル体制)
横浜市北部病院 紹介受診重点、救急センター こどもセンター、循環器センター、救急センター(ER)

4.「患者さんとその家族に、安心を与えられる医師」:ケアとホスピタリティ

医師の役割は病状の改善に留まらず、治療のプロセス全体を通じて患者と家族に「安心」を提供することにあります。昭和大学の附属病院では、多職種によるきめ細かなサポート体制が構築されており、学生は実習を通じて「チームで支える安心」のあり方を学びます。

多職種混成チームによる全人的サポート

各附属病院では、RST(呼吸ケアチーム)、NST(栄養サポートチーム)、緩和ケアチーム、リエゾンチーム(精神科医、看護師、心理士等の混成)などが活発に活動しています。これらは、医師一人の判断では補いきれない患者のQOLや家族の精神的負担に焦点を当てた活動です。学生は、病棟実習においてこれらのチームに加わり、多様な専門職が連携することで、いかに患者家族の不安が解消され、信頼と安心が醸成されるかを目の当たりにします。

5.「地域の暮らしを丸ごと支える、街の頼れる医師」:地域医療

大学病院という高度医療の場に身を置きながらも、地域住民の日常の暮らしを支える「街のお医者さん」のような視点を持つことは、良き臨床医の条件です。昭和大学は、初年次から地域に根ざした実習を組み込み、地域医療への関心を高めています。

地域社会を教室とする初年次体験実習

1年次の「初年次体験実習」の中核の一つに、「在宅訪問実習」があります。富士吉田市内のお宅を実際に訪問し、高齢者の生活実態を直接伺うこの実習の目的は、「高齢者の生活を知る」ことにあります。病院という特殊な空間ではなく、生活の場において健康や疾患がどのように捉えられているかを学ぶことは、将来の「地域を支える医師」としての素養を育みます。

6.「常に学び続け、最新の治療を届けられる医師」:国際交流

医学は日進月歩であり、医師には生涯にわたり学習し続ける姿勢が求められます。昭和大学は、医系総合大学としての研究環境と、世界に広がる国際交流ネットワークを提供し、学生の知的探究心を刺激しています。

提携大学・機関 所在国 教育・研究上の特徴
ウィーン医科大学 オーストリア 欧州の伝統校、交換留学や短期研修を実施
ハワイ大学 米国 ワークショップ(夏・春)を通じた臨床教育交流
ロンドン大学クイーン・メアリー校 英国 医学研究の引用数が世界トップクラス
ミネソタ大学 米国 米国屈指の州立大学、高度な教育プログラム
トロント大学 カナダ カナダ屈指の名門校、幅広い医学研究交流

7.「チームの和を大切にし、全員の力を引き出せる医師」:チーム医療

現代医療は、多職種が連携する「チーム医療」なしには成立しません。医師には、チームのリーダーとしてメンバーの専門性を尊重し、和を保ちながら最大の成果を引き出す調整力が求められます。昭和大学は、この分野における日本のトップランナーです。

体系化された「チーム医療教育(IPE)」の段階的展開

  • STEP 1(1年次):「マインドの獲得と共感」:富士吉田での全寮生活と初年次体験実習を通じ、他職種(他学部生)への理解を深める。
  • STEP 2(2年次):「プロセスの体験」:在宅チーム医療と倫理TBL(チーム基盤型学習)などで、具体的な医療・福祉プロセスを体験する。
  • STEP 3(3年次):「あり方の考案」:患者中心のチーム医療のあり方を具体的に検討する演習を行う。
  • STEP 4(高学年次):「現場での実践」:学部混合チームで病棟実習を行い、実際の患者の治療プランを策定する。

8.「納得いくまで丁寧に説明し、不安を取り除ける医師」:インフォームドコンセント

インフォームド・コンセント(説明と同意)は、現代医療の根幹です。患者が納得感を持って治療を選択できるよう、専門的な内容を噛み砕いて伝え、不安を取り除く能力を、昭和大学は演習と実習を通じて磨き上げます。

9.「新しい治療法を見つけ出し、未来の患者さんも救える医師」:医学研究

目の前の患者を救うだけでなく、医学そのものを発展させ、まだ見ぬ未来の患者に貢献することも医師の重要な使命です。昭和大学は、研究マインドを持つ医師(メディカルサイエンティスト)の育成にも注力しています。

10.「どんなに忙しくても、笑顔と優しさを忘れない医師」:人間性

医療現場は過酷であり、医師が自身の精神的・身体的な健康を保ちながら、笑顔を絶やさずに接することは容易ではありません。昭和大学は、学生時代の豊かな人間関係とサポート体制を通じて、この「優しさ」の源泉となる心の余裕を育んでいます。

1年次の全寮制生活におけるイベントの企画・運営や、放課後の交流は、学生に「他者と楽しみを共有する」ことの喜びを教えます。苦楽を共にした「寮の同部屋の仲間(4学部混成)」は、一生の財産となり、困難に直面した際の心の支えとなります。

医系総合大学としての誇りと未来:総括的分析

昭和大学医学部は、単に高度な医学教育を提供する機関に留まらず、「至誠一貫」という哲学を具体的な教育・臨床システムに落とし込んだ、稀有な「人間形成の場」です。

結論:理想を現実に変える場

志望者が掲げる10の理想の医師像は、昭和大学医学部のカリキュラムと精神の中にすべて内包されています。

  • 人を診る:至誠一貫の精神と全寮制共同生活
  • 心の距離:共感を育む早期臨床体験と対人スキル訓練
  • 最後の砦:特定機能病院としての高度な救急・集中治療体制
  • 家族の安心:多職種チームによる包括的な家族支援・相談体制
  • 街の頼れる医者:在宅訪問実習と「ふたり主治医制」の学び
  • 学び続ける:臨床研究支援センターと世界的な国際交流網
  • チームの和:日本一と評される学部連携病棟実習の実績
  • 丁寧な説明:PBL/TBLで培われる論理的かつ共感的な対話力
  • 新しい治療法:専門センターでの最先端医療と大学院での研究
  • 笑顔と優しさ:学生生活を支える多層的なサポートと生涯の友情

引用文献

「至誠一貫」の精神|昭和医科大学 受験生特設サイト / 8つの附属病院で実践を身につける|昭和医科大学 / 次代を担う「医療人」を追求する昭和大学③ (President Online) / 学ぶと働くをつなぐ[40]良き医療人育成に向けて、チーム医療の ... / 三つのポリシー|昭和医科大学 / チーム医療教育|昭和医科大学 受験生特設サイト / 第1学年 「初年次体験実習」を行いました - 昭和医科大学 / 協定校一覧 - 昭和医科大学 ほか

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