日本大学医学部志望理由書及び面接対策
目的と基本戦略
1.1 基本スタンス
医学部入試における面接は、単なる学力確認の補完ではありません。それは、大学が掲げる「アドミッション・ポリシー(受入方針)」と、受験生が描く「将来のビジョン」が、どれだけ深く、かつ現実的に重なり合っているかを確認する重要なマッチングの場です。日本大学医学部は約100年の歴史を持つ伝統校であり、その教育システムは「自主創造」の理念の下、時代の要請に合わせて常に進化を続けています。
本レポートでは、あなたが提示した10通りの「理想の医師像」それぞれについて、日本大学が公開している「3つのポリシー(ディプロマ・カリキュラム・アドミッション)」および「具体的教育リソース(付属病院、実習制度、総合大学としての環境)」を徹底的に精査・分析し、志望動機のロジックを提供します。
1.2 戦略の核:均質性の中の「運用」を見る
日本の医学教育は文部科学省が定める「医学教育モデル・コア・カリキュラム」により標準化されており、どの大学でも学ぶべき医学の基本内容は共通しています。したがって、「他大学にはない唯一無二のカリキュラム」を探そうとして「貴学にしかありません」と主張することは、論理的な脆弱性を招くリスクがあります。
重要なのは、「標準的な医学教育を、日本大学はどのような哲学(自主創造・医明博愛)と環境(総合大学・板橋病院等の臨床フィールド)で運用しているか」に着目することです。
「この大学が一番優れているから」という他者比較ではなく、「私の目指す医師像を実現するために、この大学の環境が最も合理的であり、私の成長にとって適切である(Fit)」という「適合性」を語ることが、合格への鍵となります。
第1部:日本大学医学部の「教育のカラー」と基盤データ
個別の医師像ごとの対策に入る前に、すべての志望理由の土台となる日本大学医学部全体に通底する「教育のカラー」を、公開データに基づき体系化します。
1. 教育理念とポリシーの再解釈
公式サイトや大学案内には「自主創造」「医明博愛」という言葉が並びますが、これを面接の場で通用する言語として再解釈する必要があります。
① アドミッション・ポリシー(AP)の実質的意味
アドミッション・ポリシーによると、日本大学医学部は入学者に対し以下の資質を求めています。これらは単なる精神論ではなく、入学後のカリキュラムに適応できるかどうかのスクリーニング基準となります。
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「医学・医療の分野で社会に貢献したいという明確な目的意識」
漠然とした「人を助けたい」という感情論ではなく、社会構造の中で医師としてどう機能したいかという具体的なキャリアビジョンが求められています。 -
「それを実現しようとする強い意志」
医学部は6年間の過酷な学習と、その後の生涯にわたる研鑽が必要です。医師国家試験合格をゴールとせず、その先を見据える持続可能なモチベーションが問われます。 -
「多様な人々と協働して学ぶ態度」
現代医療はチーム医療が前提です。医師だけの閉じた世界ではなく、多職種(コメディカル)や患者との対話を重視し、他者の専門性を尊重できる協調性が必須条件とされています。
② カリキュラム・ポリシー(CP)とディプロマ・ポリシー(DP)の接続
日本大学の教育は、入学直後の「動機づけ」から卒業時の「臨床能力」までが一貫して設計されています。
| 段階 | ポリシーの焦点 | 具体的施策と特徴 |
|---|---|---|
| 初期教育 (1-2年次) |
動機づけと人間形成 | 医学知識がない段階から現場を見せる「早期医学体験実習」。総合大学の利点を活かした「文理学部連携」による人間教育。 |
| 発展教育 (3-4年次) |
知識統合と論理的思考 | 知識を統合する「チュートリアル教育」や「臨床医学講義」。PBL(問題解決型学習)を通じた能動的学習態度の涵養。 |
| 実践教育 (5-6年次) |
臨床実践能力 | 診療参加型臨床実習(クリニカル・クラークシップ)。特に「地域医療実習」や「選択臨床実習」での自由度の高さが特徴。 |
2. 教育環境の具体的強み(Positive Environment Factors)
志望理由を補強する「ファクト(事実)」として、以下のリソースを詳細に把握しておく必要があります。これらは面接時の「逆質問」や「具体的に何に興味があるか」という問いへの回答の源泉となります。
① 日本大学医学部附属板橋病院の臨床力
特定機能病院であり、高度救命救急センターを有する板橋病院は、学生にとって最大の教育リソースです。
- 3次救急の現場: 東京DMAT指定病院として、重症外傷、急性中毒、広範囲熱傷などを受け入れています。学生は教科書的な疾患だけでなく、「待ったなし」の臨床現場を肌で感じることができます。
- 高度医療: 心臓血管外科や脳神経外科など、高難度の手術症例が豊富であり、最新の医療技術に触れる機会が保証されています。
② 総合大学としてのスケールメリット
日本大学は16学部87学科を擁する日本最大級の総合大学です。医学部は単科大学として独立している場合が多い中、他学部との物理的・制度的な距離の近さは特筆すべき環境要因です。
- 他学部連携: 文理学部での教養教育や、薬学部・歯学部との連携教育(IPE)は、視野の狭い「医学オタク」にならず、社会的な視野を持つ医師を育成する土壌となっています。
③ ネットワークと地域医療
都内の附属病院群に加え、沖縄県(県立北部病院、久米島)での離島医療実習プログラムなど、学外にも豊富な実習フィールドを持っています。これにより、「最先端医療」と「へき地医療」の両極端を経験し、医師としての幅を広げることが可能です。
第2部:10通りの「理想の医師像」別マッチング詳細分析
ここからは、あなたが想定する10パターンの「理想の医師像」に対し、日本大学のリソースをどのように結びつけ、論理的かつ説得力のある志望理由を構成するかを、各章ごとに詳述します。
第1章:病気だけでなく、人を診る医師
1.1 背景と意図の言語化
「人を診る」という言葉は医学部志望動機において最も頻出するフレーズの一つですが、それゆえに陳腐化しやすいリスクがあります。この理想像を掲げる場合、単なる優しさのアピールではなく、「全人的医療(Holistic Medicine)を実践するための具体的な方法論を学びたい」という姿勢を示す必要があります。
1.2 日本大学における適合リソース
日本大学のカリキュラムには、この理念を具体化するための仕組みが低学年から組み込まれています。
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早期医学体験実習(Early Medical Exposure):
内容: 1年次の授業科目「自主創造の基礎」や「医学序論」の中で実施されます。医学的な専門知識をまだ持たない段階で、介護老人保健施設や福祉施設、病院の見学を行います。
意義: 「治療(Cure)」の視点ではなく、「ケア(Care)」の視点から患者や利用者に接することで、医療行為以前に必要な「人と人との関わり」や「生活背景への想像力」を養います。解剖実習においても、ご遺体に対して一人の人間として向き合う倫理観が徹底されています。 -
文理学部との連携による教養教育:
内容: 医学部のキャンパス内での学習にとどまらず、文理学部の授業を受講する機会があります。
意義: 心理学、社会学、文学など、人間を深く理解するために必要なリベラルアーツを、医学部以外の学生と共に学ぶことで、多様な価値観に触れ、患者の心理や社会的背景を理解する土壌を作ることができます。
1.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
「人を診る」ためには、医学知識以前に「人間理解」と「生活者の視点」が必要である。貴学の1年次からの早期体験実習と、総合大学の利点を活かした教養教育は、その視点を養うのに最適である。
【志望理由書・面接での展開例】
「私は、疾患の治療(Cure)だけでなく、患者さんの生活背景や心理までを含めて支える(Care)ことができる医師になりたいと考えています。貴学を志望した最大の理由は、入学直後の1年次から『早期医学体験実習』を通じて、医学的介入以前の『人と人との関わり』を現場で学べる点に強く惹かれたからです。
多くの大学で臨床実習は高学年から始まりますが、貴学では知識がない段階から介護や福祉の現場を体験することで、患者さんを『症例』としてではなく『生活者』として捉える視点を早期に確立できると考えます。また、総合大学である貴学の環境を活かし、文理学部の授業などを通じて多角的に人間を理解する教養を深めることは、私が目指す『人を診る医療』の土台となると考えています。」
1.4 想定問答と対話への備え
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Q: 「人を診る」とは、具体的に臨床現場でどうすることだと思いますか?
A: 患者さんの病態生理だけでなく、その人が大切にしている価値観、家族関係、社会的背景を理解し、その人にとって「納得できる医療のゴール」を対話の中で一緒に探すことだと考えています。医学的に正しい治療が、必ずしもその患者さんの人生にとって最善とは限らない場合もあると考えるからです。 -
Q: なぜその力を養うのに日本大学が良いのですか?
A: 貴学のカリキュラム・ポリシーにあるように、低学年から福祉の現場を見る機会が設けられている点が他大学と比較しても特徴的だと感じたからです。頭でっかちな知識を身につける前に、まずは現場の空気と人の心に触れる経験を積みたいと考えています。
第2章:地域医療の最後の砦となる医師
2.1 背景と意図の言語化
地域医療崩壊が叫ばれる中、へき地や地方都市で医療を支える意志は高く評価されます。しかし、「地域医療=田舎の診療所」という短絡的なイメージではなく、高度医療機関と地域医療機関の連携(病診連携)や、地域ごとの医療資源の偏在に対する理解を示す必要があります。
2.2 日本大学における適合リソース
都心に位置する日本大学ですが、実は「地域医療」を学ぶためのコントラストの効いた環境が整っています。
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附属板橋病院の「砦」としての機能:
板橋区および周辺地域(城北地区)の中核病院として、高度医療だけでなく、地域住民のあらゆる健康問題を受け入れる体制をとっています。
「最後の砦」とは、どんな患者も断らず、高度な判断で対応する能力を意味します。板橋病院での実習は、まさにその「砦」の内側を体験する場です。 -
多彩な地域医療ネットワークと選択実習:
6年次の「選択臨床実習」では、学内のコースだけでなく、沖縄県(県立北部病院、公立久米島病院)や都内の地域病院での実習が選択可能です。特に沖縄のプログラムでは、診療だけでなく、保健師活動の見学や役場福祉課の見学も組み込まれています。
東京の高度医療と、医療資源が限られた離島医療の両極端を学生時代に経験することで、地域医療に求められる「診断力」と「搬送判断力」の重要性を実体験として学ぶことができます。
2.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
地域医療を守るには、「限られた資源で対応する力」と「高度医療への橋渡し能力」の両方が必要である。貴学の板橋病院での高度医療研修と、沖縄などでの地域実習を組み合わせることで、その両輪を学べる。
【志望理由書・面接での展開例】
「私は将来、医療資源の限られた地域でも、住民の生命と健康を守り抜く『最後の砦』となる医師を目指しています。そのためには、最先端の高度医療を知り尽くした上で、限られた設備の中で最善を尽くす応用力が必要だと考えます。
貴学を志望したのは、地域の中核として断らない医療を実践する附属板橋病院で高度な臨床能力の基礎を築きつつ、6年次の選択実習で沖縄県の離島医療やへき地医療を経験できるプログラムがある点に強く惹かれたからです。特に久米島等での実習において、診療だけでなく保健・福祉行政との連携まで学べる点は、私が目指す『地域を包括的に支える医師像』に直結する経験になると考えています。」
2.4 想定問答と対話への備え
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Q: なぜ地元の大学ではなく、東京の日大で地域医療を学びたいのですか?
A: 地域医療には、その場で完結させるプライマリ・ケア能力と、高度医療機関へ送るべきかを見極めるトリアージ能力の両方が必要だと考えます。貴学のような症例数の多い特定機能病院で「送られる側(高度医療)」の現実を知ることで、地域に戻った際に「いつ、どのタイミングで送るべきか」という的確な判断ができる医師になれると考えたからです。
第3章:チーム医療の要となる医師
3.1 背景と意図の言語化
現代医療において「医師一人ですべてを行う」ことは不可能です。看護師、薬剤師、技師など多職種と連携する能力(Interprofessional Work: IPW)は必須スキルです。この理想像では、医師としてのリーダーシップだけでなく、他職種へのリスペクトと調整能力をアピールします。
3.2 日本大学における適合リソース
日本大学は「医・歯・薬」の医療系3学部を擁する総合大学であり、この環境はチーム医療教育(IPE: Interprofessional Education)において圧倒的な強みとなります。
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学部連携PBLチュートリアルと合同実習:
医学部、歯学部(松戸歯学部含む)、薬学部の学生が合同で学ぶプログラム(「チーム医療の基盤A・B」や「初年次体験実習」)が実施されています。
学生時代から他学部の学生と同じ課題に取り組み議論することで、互いの専門性や視点の違い、専門用語の壁などを肌感覚で理解できます。これは単科大学では得られない経験です。 -
臨床現場での多職種カンファレンス:
板橋病院の救命救急センターなどでは、医師、看護師、薬剤師、臨床工学技士による毎日のカンファレンスが定例化されています。
実習において、教科書的なチーム医療ではなく、治療方針を巡るリアルな多職種連携を目の当たりにできます。
3.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
チーム医療の要になるには、学生時代から他職種の専門性を理解し、共通言語を持つ訓練が必要である。貴学の医・歯・薬連携教育(IPE)は、そのための最適なトレーニング環境である。
【志望理由書・面接での展開例】
「高度化・複雑化する現代医療において、私は多職種の専門性を最大限に引き出し、チームのハブとして機能する医師になりたいと考えています。貴学は医学部だけでなく、歯学部、薬学部を有する総合大学であり、1年次から『学部連携PBL』や合同実習を通じて、将来の同僚となる他職種の学生と議論し、互いの専門性を尊重する姿勢を学べる点に独自の魅力を感じました。
医師になってから連携を模索するのではなく、学生時代から『チーム医療の文化』が根付いている貴学の環境でこそ、各職種の視点を深く理解し、真のリーダーシップを発揮できる医師へと成長できると考えています。」
3.4 想定問答と対話への備え
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Q: チーム医療において医師の役割とは何だと思いますか?
A: 単にトップダウンで指示を出すことではなく、各スタッフが専門的知見に基づいた意見を言いやすい心理的安全性を確保し、最終的な治療方針の決定と責任を担うことだと思います。貴学のPBL教育を通じて、多様な意見を集約するファシリテーション能力も磨きたいと考えています。
第4章:研究マインドを持ち続ける臨床医
4.1 背景と意図の言語化
「臨床医(Clinician)」と「研究者(Researcher)」は対立するものではありません。目の前の患者の治療に行き詰まった時、科学的な思考で解決策を探る「リサーチマインド」は良医の条件です。日本大学の「自主創造」の理念は、まさにこの探究心を指しています。
4.2 日本大学における適合リソース
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自主創造の基礎とカリキュラム・ポリシー(CP3・CP5):
CPにおいて「科学的探究・医学研究への志向」「未知の問題に対して仮説を立てる挑戦力」が明記されています。1年次の「自主創造の基礎」は、自ら課題を発見し学ぶ姿勢を養う初年次教育です。
受動的な学習ではなく、自律的な探究プロセスを低学年から叩き込まれることで、将来の研究活動へのハードルが下がります。 -
研究室配属とトランスレーショナルリサーチ:
高学年での研究室配属(基礎研究必修など)や、希望者が参加できるリサーチプログラムがあります。また、日本大学には「トランスレーショナルリサーチセンター」があり、基礎研究の成果を臨床に応用する橋渡し研究が盛んです。
臨床の実学を重視する日本大学だからこそ、「臨床に役立つ研究」という視点を学びやすい環境にあります。
4.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
臨床上の疑問を研究で解決できる医師になりたい。貴学の「自主創造」の理念に基づく探究学習と、基礎と臨床の垣根が低い研究環境は、リサーチマインドを養うのに適している。
【志望理由書・面接での展開例】
「私は、臨床の現場で遭遇する未解決の問題に対し、自ら研究を通じて解決策を見出し、医学の進歩に還元できる『研究マインドを持った臨床医』を目指しています。貴学が掲げる『自主創造』の理念、特に『自ら学ぶ』『自ら考える』姿勢を重視したカリキュラムに強く惹かれました。
特に、基礎医学と臨床医学の連携が強い貴学において、研究室配属や選択実習を通じて科学的思考プロセスを徹底的に身につけたいと考えています。臨床の実践知と研究の論理的思考の両方をバランスよく学べる貴学の環境は、私の理想とする医師像に合致しています。」
4.4 想定問答と対話への備え
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Q: 研究医ではなく、なぜ臨床医として研究したいのですか?
A: 患者さんの苦しみを直接肌で感じる臨床医だからこそ、「何が今本当に必要とされているか」という切実な研究テーマを見つけられると考えるからです。貴学のトランスレーショナルリサーチのような、ベッドサイドとベンチ(実験台)を行き来する医師になりたいです。
第5章:グローバルな視野を持つ医師
5.1 背景と意図の言語化
医療のグローバル化は、単に英語が話せることだけを指しません。最新の医学知見(多くは英語論文)へのアクセス能力、多様な文化的背景を持つ患者への対応力、そして国際的な医療水準の理解が含まれます。
5.2 日本大学における適合リソース
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CP6(コミュニケーション力・発信力):
「自らの考えを国内外に発信するための能力」を育成することがポリシーとして明記されています。 -
附属病院の国際対応力:
板橋病院などの特定機能病院には、外国人患者も訪れます。また、医学部では医学英語教育や、海外からの留学生との交流機会(時期や情勢によりますが、国際交流プログラム等)を通じて、グローバルスタンダードに触れる機会があります。 -
研究活動を通じた国際性:
各研究室では国際学会での発表や英語論文の執筆が行われており、配属実習などを通じてそのプロセスに参加可能です。
5.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
世界標準の医療を提供するために、国際的な発信力と受容力が必要である。貴学の「国内外への発信能力」を重視するポリシーと、多様な患者を受け入れる臨床環境でその力を磨きたい。
【志望理由書・面接での展開例】
「医療のグローバル化が進む中、私は世界標準の知見を常に吸収し、目の前の患者さんに還元できる医師になりたいと考えています。貴学のカリキュラム・ポリシーにある『自らの考えを国内外に発信するための能力』を養う姿勢に深く共感しました。
また、特定機能病院として多様な文化的背景を持つ患者さんを受け入れる貴学附属病院での実習を通じて、医学英語の運用能力だけでなく、異文化に対する理解と柔軟なコミュニケーション能力を磨きたいと考えています。将来は、貴学で培った知見を活かし、国際的な医療課題にも貢献できる医師を目指します。」
5.4 想定問答と対話への備え
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Q: 英語は得意ですか?
A: (得意な場合)はい、実用英語技能検定○級を取得しており、現在は医学論文を読むための語彙力を強化しています。(苦手な場合)現在はまだ勉強中ですが、貴学の英語カリキュラムやジャーナルクラブ等の活動を通じて、卒業までに論文を自由に読み書きできるレベルに到達したいと考えています。
第6章:救急医療の最前線で戦う医師
6.1 背景と意図の言語化
救急医療は体力と精神力、そして瞬時の判断力が求められる過酷な現場です。この道を志すこと自体が高い志の表れですが、憧れだけでなく「現実の厳しさ」を理解していることを示す必要があります。
6.2 日本大学における適合リソース
ここは日本大学医学部のアピールポイントとして最も強力な要素の一つです。
-
日本大学医学部附属板橋病院 救命救急センター:
実績: 「東京DMAT」指定病院であり、東京都の母体救命事業やこども救命センター事業にも参画しています。
内容: 3次救急として、心肺停止症例(ECMO対応)、重症外傷、急性薬物中毒、広範囲熱傷など、他院では対応困難な症例を24時間体制で受け入れています。
教育: 救急科専門医が常駐し、朝夕のカンファレンスで治療方針を共有する「チーム医療」が徹底されています。学生実習でもこの熱気ある現場に触れることができます。
6.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
救命の最前線で戦うには、圧倒的な症例数と高度なチーム医療の現場で鍛えられる必要がある。貴学の板橋病院救命救急センターは、まさにその理想的な修練の場である。
【志望理由書・面接での展開例】
「私は、一分一秒を争う救急医療の現場で、生命の危機に瀕した患者さんを救う医師になりたいと強く願っています。貴学附属板橋病院の救命救急センターは、東京都の3次救急の要であり、重症外傷や中毒、周産期救急まで幅広く受け入れる『断らない救急』を実践されています。
特に、多職種が連携して24時間体制で治療にあたるチーム医療の姿勢や、ECMOなどの高度な救命技術を駆使する環境に強く惹かれました。この圧倒的な臨床現場を有する貴学で、学生時代から救急医療の厳しさとやりがいを肌で感じ、迅速な判断力と強靭な精神力を養いたいと考え、志望しました。」
6.4 想定問答と対話への備え
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Q: 救急は激務で燃え尽きる医師も多いですが、覚悟はありますか?
A: そのリスクは認識しています。だからこそ、個人の頑張りだけに依存するのではなく、貴学のようにカンファレンスで情報を共有し、チーム全体で患者さんを支えるシステムが機能している環境で働くことが重要だと考えています。仲間と支え合いながら研鑽を積みたいです。
第7章:生涯学び続ける医師
7.1 背景と意図の言語化
医学知識の半減期は数年と言われ、医師にとって継続学習は義務です。しかし、それを「義務」としてではなく「喜び」として捉え、自律的に学ぶ姿勢(Self-directed Learning)を持っているかどうかが問われます。
7.2 日本大学における適合リソース
日本大学の教育スローガン「自主創造」は、まさにこの医師像と合致します。
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教育理念「自主創造」とCP8(省察力・自律的学習):
内容: 「自ら学ぶ」「自ら考える」「自ら道を開く」という3つの柱からなる自主創造の理念は、誰かに教えられるのを待つのではなく、自ら課題を見つけて解決する姿勢を求めています。
手法: テュートリアル教育やPBL(問題解決型学習)において、少人数グループで能動的に学習する機会が豊富に用意されています。 -
卒後教育の充実:
内容: 「日本大学専修医制度」や大学院教育など、卒業後も大学に戻って専門医研修や研究を行えるキャリアパスが整備されており、生涯学習の拠点として機能しています。
7.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
医学の進歩に対応し続けるには、「教わる」姿勢から「自ら学ぶ」姿勢への転換が必要である。貴学の「自主創造」の理念と、PBL中心のカリキュラムは、その自律性を養うのに適しています。
【志望理由書・面接での展開例】
「医学の進歩は日進月歩であり、私は生涯にわたり謙虚に学び続ける医師でありたいと考えています。貴学の教育理念である『自主創造』、特に受動的な知識習得ではなく『自ら学ぶ』『自ら考える』姿勢を重視したカリキュラムに強く共感しました。
特にPBL(問題解決型学習)などを通じて、知識そのものだけでなく『情報の探し方』や『未解決問題へのアプローチ方法』をトレーニングできる貴学の教育環境は、私が理想とする『一生伸び続ける医師』になるために必要不可欠であると確信しています。」
7.4 想定問答と対話への備え
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Q: あなたにとって「自ら学ぶ」とはどういうことですか?
A: 教科書やガイドラインを覚えるだけでなく、目の前の患者さんの症状から疑問を持ち、文献を調べて根拠に基づいた答えを導き出すプロセスを繰り返すことだと思います。
第8章:災害時にリーダーシップを発揮する医師
8.1 背景と意図の言語化
日本は災害大国であり、DMAT(災害派遣医療チーム)への関心は高いです。災害医療は平時の救急医療の延長線上にあり、特別な訓練と組織力が必要です。
8.2 日本大学における適合リソース
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災害拠点病院としての機能:
板橋病院は災害拠点病院として指定されており、発災時には地域の医療救護活動の中心となります。 -
指導体制:
救急医学系救急集中治療医学分野には、DMAT隊員として活動経験のある医師(櫻井医師など)が在籍しており、実践的な指導を受けることが可能です。 -
カリキュラム:
災害時のトリアージや、限られた資源での医療活動は、救急医療実習の中で学ぶことができます。
8.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
災害時に動ける医師になるには、平時の救急医療能力と組織的な訓練が不可欠である。災害拠点病院でありDMATの実績を持つ貴学で、その両方を学びたい。
【志望理由書・面接での展開例】
「私は、大規模災害などの有事の際に、混乱の中で冷静なリーダーシップを発揮し、一人でも多くの命を守れる医師になりたいと考えています。貴学附属板橋病院は災害拠点病院として機能し、DMAT隊員としても活躍される先生方が指導にあたられていると伺いました。
『災害医療は平時の救急医療の延長にある』と言われますが、高度な3次救急体制を持つ貴学で臨床の基礎体力を培うとともに、災害時の指揮命令系統やトリアージの実際を学ぶことで、いざという時に地域社会に貢献できる医師を目指します。」
8.4 想定問答と対話への備え
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Q: 災害医療には何が一番大切だと思いますか?
A: 個人のスキルも大切ですが、それ以上に「組織として動く力」と「情報の管理」だと考えます。貴学の実習を通じて、チームの中で自分がどう動くべきかを判断する状況把握能力を養いたいです。
第9章:総合的な診療能力を持つ医師(Generalist)
9.1 背景と意図の言語化
専門医志向が強い一方で、超高齢社会では複数の疾患を抱える患者が増加しており、全身を診ることができる「総合診療能力(Generalistのマインド)」が求められています。
9.2 日本大学における適合リソース
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クリニカル・クラークシップ(診療参加型実習)の広がり:
内容: 5-6年次の実習では、大学病院の専門診療科だけでなく、地域の連携病院での実習も選択できます。
意義: 大学病院では「診断がついた後の専門治療」を見ることが多いですが、地域医療実習では「診断がつかない段階の患者」や「コモンディジーズ(ありふれた病気)」を診る機会があり、ジェネラリストとしての診断推論能力を磨くことができます。 -
APにおける「判断力」「思考力」:
内容: 特定の分野だけでなく、基礎的な知識・技能を統合して判断する能力が入学時から重視されています。
9.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
専門分化が進む中で、患者を全身的に診る能力は不可欠である。貴学の高度専門医療と地域医療実習の双方を経験できる環境で、バランスの取れた総合診療能力を養いたい。
【志望理由書・面接での展開例】
「私は特定の臓器だけでなく、患者さんの抱える複合的な健康問題を包括的に解決できる、総合的な診療能力を持った医師を目指しています。貴学の臨床実習では、高度な専門医療を行う附属板橋病院と、地域医療を担う連携病院の双方を経験できる点に魅力を感じました。
専門性を極めることと、全身を診ることは矛盾しないと考えます。多様な疾患に対応する実習の中で、『木を見て森も見る』視点を養い、どのような患者さんにも最初の相談相手として信頼される医師になりたいです。」
9.4 想定問答と対話への備え
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Q: 専門医資格は取らないつもりですか?
A: いえ、何か一つの強みとなる専門分野(サブスペシャリティ)は持ちたいと考えています。しかし、自分の専門外だからといって患者さんを突き放すのではなく、適切な初期対応や専門医への紹介ができる広い裾野を持った専門医になりたいという意味です。
第10章:どんなに忙しくても、笑顔と優しさを忘れない医師
10.1 背景と意図の言語化
これは最も情緒的で、かつ最も実践が難しい理想像です。忙しさは余裕を奪います。これを実現するには、個人の性格だけでなく、「コミュニケーションの技術」と「精神的なタフネス」、そして「組織的なサポート」が必要です。
10.2 日本大学における適合リソース
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模擬患者(SP)参加型実習:
コミュニケーション実習において、訓練を受けた模擬患者(SP)に対し、医療面接の練習を行います。
医学的な正解だけでなく、「共感的な態度」「話しやすい雰囲気」「非言語コミュニケーション」が客観的に評価されます。優しさを「技術」として習得する機会です。 -
メンタルケアの重視:
板橋病院の救急センターでは、薬物中毒患者に対し精神科と連携してメンタルケアを行うなど、身体治療だけで終わらせない全人的な優しさをシステムとして実践しています。 -
「医明博愛」の実践:
知識(明)だけでなく、優しさ(博愛)を兼ね備えるという建学の精神は、教育の根幹にあります。
10.3 志望理由構成ロジック案
【ロジックの骨子】
優しさは精神論ではなく、技術と環境によって支えられるものである。貴学のSP実習などの実践的教育と、患者の心身両面を支える臨床環境で、真の「博愛」を体現したい。
【志望理由書・面接での展開例】
「高度な医療技術を持つことは前提として、私は患者さんの不安に寄り添い、どんな時でも笑顔と優しさを忘れない医師でありたいです。それは単なる心がけではなく、コミュニケーションの技術と、患者さんを支えるチームの力があってこそ実現できるものだと考えます。
貴学では、模擬患者(SP)の方々の協力による実践的なコミュニケーション教育が行われており、患者さん視点での『良き医師』の態度を客観的に学べる点に強く惹かれました。また、救急医療の現場でもメンタルケアを重視するなど、心身両面からのサポートを組織として実践している貴学の環境でこそ、私が目指す医師像に近づけると確信しています。」
10.4 想定問答と対話への備え
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Q: 忙しくてどうしても笑顔になれない時はどうしますか?
A: プロフェッショナルとして、患者さんの前では不安を与えない態度を保つよう努めます。しかし、人間ですので限界はあります。その時は一人で抱え込まず、同僚にサポートを求めたり、チームで業務を分担したりして、心に余裕を取り戻すよう工夫します。貴学で学ぶチーム医療の精神は、そのためにも役立つと考えています。
第3部:面接本番への備えと戦略的対話術
志望理由のロジックが固まったら、次はそれを実際の面接でどう運用するかです。面接官との対話を「試験」ではなく「先輩医師との会話」に近づけるための戦略を提示します。
1. 面接官(医師)の視点と評価基準
面接官は主に以下の3点をチェックしています。
- 適性: 医師として、また日大生としてふさわしい倫理観とコミュニケーション能力があるか。
- 意欲: 入学後、挫折せずに6年間(そしてその先も)学び続けるモチベーションがあるか。
- 準備: 大学のことを正しく理解し、リスペクトを持って調べてきているか。
2. 「なぜ日本大学か?」へのキラーフレーズ(Fitの強調)
他大学と比較して「ここがNo.1だから」という言い方は、反証された時に弱くなります。「私のニーズに最も合致している(Fitしている)」という言い方が最強です。
推奨フレーズ例
- 「私の目指す○○という医師像には、初期から現場を知る経験が必要不可欠であり、貴学の『早期医学体験実習』と『地域医療実習』の体系的なつながりが、私にとって最も理想的な環境だと感じたからです。」
- 「総合大学である貴学の多様性と、伝統ある板橋病院の圧倒的な臨床現場の双方に身を置くことで、偏りのないバランスの取れた医師になれると確信しているからです。」
3. 想定される「深掘り質問」への対策
① ストレス耐性に関する質問
質問: 「実習で理不尽な目に遭ったり、患者さんに怒鳴られたりしたらどうしますか?」
対策: 感情的にならず、客観的に対処できるかを見られています。
回答案: 「まずは患者さんの訴えを傾聴し、怒りの原因がどこにあるのか(病気への不安なのか、対応への不満なのか)を理解するよう努めます。その上で、自分一人で解決しようとせず、速やかに指導医やチームのメンバーに報告・相談し、組織として対応します。」
② 大学理解に関する質問
質問: 「オープンキャンパスに来て、何を感じましたか?(または、Webサイトを見てどう思いましたか?)」
対策: 具体的なエピソードを交え、観察眼をアピールします。
回答案: 「学生さんが先生に積極的に質問している姿を見て、風通しの良い学習環境だと感じました」「板橋病院の待合室で、地域の方々が多く利用されているのを見て、地域医療の拠点としての信頼の厚さを肌で感じました」など。
③ 入学後のビジョンに関する質問
質問: 「勉強以外にやりたいことはありますか?」
対策: 日大は部活動も盛んです。体力と協調性をアピールします。
回答案: 「部活動に参加したいと考えています。医師には体力も重要ですし、先輩後輩の縦のつながりの中で、礼儀やチームワークを学びたいからです。」
4. 陥りやすい罠と回避策
-
NGワード: 「教えてもらう」「させてもらう」
大学は受動的にサービスを受ける場所ではありません。「貴学の環境を最大限に活用し、主体的に学び取りたい」という能動的な表現を使いましょう。 -
知ったかぶり:
専門的な医療用語(ECMOやトランスレーショナルリサーチなど)を使う際は、突っ込まれても自分の言葉で説明できる範囲にとどめましょう。分からないことは「勉強不足で申し訳ありません。入学後に詳しく学びたいです」と素直に認める誠実さが大切です。
結び:合格へのマインドセット
日本大学医学部は、伝統的に「臨床に強い実地医家」を育てることに定評があります。あなたが示した10通りの理想像は、どれも現在の医療現場で切実に求められている医師の姿です。
面接官は、完璧な人間を求めているわけではありません。求めているのは、「自分の理想を持ち、それに向かって努力できる素直さと強さを持った若者」です。
本レポートで整理した「大学の強み(ファクト)」と「あなたの理想(ビジョン)」を、論理という糸でしっかりと結びつけてください。そして、面接の場では、用意した原稿を読み上げるのではなく、目の前の面接官との対話を楽しんでください。その姿勢こそが、コミュニケーション能力の何よりの証明となります。
あなたの熱意が正しく伝わり、日本大学医学部への扉が開かれることを、心より応援しています。
引用文献
- 入学者受入れ方針(アドミッション・ポリシー) | 日本大学医学部, [https://www.med.nihon-u.ac.jp/admition_policy.php](https://www.med.nihon-u.ac.jp/admition_policy.php)
- 教育研究上の目的・教育方針 | 概要 | 日本大学医学部, [https://www.med.nihon-u.ac.jp/gaiyou/policy.php](https://www.med.nihon-u.ac.jp/gaiyou/policy.php)
- 医学部の実習にはどんなものがあるの?詳しい内容について徹底解説, [https://www.kyotoijuku.com/column/medicalschool-practical-training/](https://www.kyotoijuku.com/column/medicalschool-practical-training/)
- カリキュラム | 医学部医学科 | 日本大学医学部, [https://www.med.nihon-u.ac.jp/kyouiku/curriculum.php](https://www.med.nihon-u.ac.jp/kyouiku/curriculum.php)
- PBL 実習 - 文部科学省, [https://www.mext.go.jp/content/20201028-mxt_daigakuc03-100001115_015.pdf](https://www.mext.go.jp/content/20201028-mxt_daigakuc03-100001115_015.pdf)
- 初期研修プログラム - 日本大学医学部附属板橋病院 - レジナビ, [https://www.residentnavi.com/hospitals/274/early](https://www.residentnavi.com/hospitals/274/early)
- 救命救急センター | 診療科・部門 | 日本大学医学部附属板橋病院 ..., [https://www.itabashi.med.nihon-u.ac.jp/division/critical_care](https://www.itabashi.med.nihon-u.ac.jp/division/critical_care)
- 医系総合大学における初年次専門職連携教育の教育効果 - J-Stage, [https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaipe/9/1/9_29/_article/-char/ja/](https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaipe/9/1/9_29/_article/-char/ja/)
- 研究・研究所 | 日本大学医学部, [https://www.med.nihon-u.ac.jp/research/index.html](https://www.med.nihon-u.ac.jp/research/index.html)
- 医師臨床研修プログラム - 日本大学, [https://www.nihon-u.ac.jp/hospital/document/recruit/junior/internprogram_2024.pdf](https://www.nihon-u.ac.jp/hospital/document/recruit/junior/internprogram_2024.pdf)
- 医師臨床研修医 | 採用希望の方へ | 日本大学病院, [https://www.nihon-u.ac.jp/hospital/recruit/junior](https://www.nihon-u.ac.jp/hospital/recruit/junior)