藤田医科大学の多角的分析による理想の医師像との親和性
藤田医科大学は、建学の精神である「独創一理」を基盤とし、医療の質の向上と人間豊かな医療人の育成を両立させている日本屈指の医療教育機関です。単一の病院として国内最多の1,435床(全体では1,376床の一般・精神病床含む構成)を誇る藤田医科大学病院を筆頭に、地域医療、高度救急、先端研究、そして独自の多職種連携教育を展開しており、その全容を把握することは医学部面接において不可欠なプロセスです。
1. 「病気だけでなく、人を診る医師」を支える全人的教育と緩和ケア
「人を診る」という姿勢は、単なるスローガンではなく、患者の人生や価値観を尊重し、その背景にある苦悩に寄り添う覚悟を意味します。藤田医科大学の教育理念には「我ら、弱き人々への無限の同情心もて、片時も自己に驕ることなく医を行わん」という一節があり、これが全人的医療の根底をなしています。
緩和ケアセンターと多職種による支援体制
本学の緩和ケアセンターは、がん患者とその家族が抱える身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛を和らげることを目的としています。ここでは医師のみならず、看護師、薬剤師、臨床心理士、医療ソーシャルワーカー(MSW)、管理栄養士、リハビリテーションスタッフが緊密に連携しており、患者一人ひとりの栄養状態から就労、解雇問題といった社会的差別への対応に至るまで、多角的なサポートを行っています。このような環境は、病変という局所的な視点を超え、患者の「生活」そのものを支える医師としての視座を養います。
臨床実習における人間理解の深化
医学部5年次から始まるクリニカルクラークシップ(臨床実習)では、世界標準とされる合計72週間の実習期間を通じ、患者の病状だけでなく生活背景も含めた問題解決能力のトレーニングが課されます。特に、がん相談支援センターで行われる就労支援や就学相談などの業務に触れることは、医師が社会の一員として患者の人生にどのように介在すべきかを学ぶ機会となります。
| 分類 | 支援内容・機能 | 関連部門 |
|---|---|---|
| 身体的・精神的苦痛緩和 | 痛み、吐き気、だるさの緩和、心のつらさのケア | 緩和ケアセンター、臨床心理士 |
| 社会的支援 | 医療費、介護保険、助成制度の相談、就労支援 | がん相談支援センター、MSW |
| 生活・栄養支援 | 状態に合わせた栄養管理、胸・腹水濃縮濾過再静注法 | 管理栄養士、リハビリスタッフ |
2. 「何でも相談してもらえる、心の距離が近い医師」とコミュニケーション教育
患者にとって「話しやすい医師」であるためには、高い対人スキルと、相手を尊重する倫理観が必要です。藤田医科大学は、入学直後から他学部学生や地域住民との対話を通じて、この能力を磨くプログラムを提供しています。
アセンブリIによる対人スキルの基礎形成
1年次に必修となる「アセンブリI」では、医学部、医療科学部、保健衛生学部の垣根を超えた6〜7名のグループを構成し、「自分を知る」「他者を知る」「傾聴する」「質問する」といった体験学習を行います。このプロセスは、自己の認識を客観化し、異なる専門性を持つ他者をリスペクトする姿勢を植え付けます。将来、医師として患者の言葉に真摯に耳を傾けるための「聴く力」は、この初期教育において醸成されます。
地域に開かれた「ふじたまちかど保健室」
豊明団地内に設置された「ふじたまちかど保健室」は、大学が運営する地域包括ケアの拠点であり、看護師や理学療法士、作業療法士などが常駐して住民の健康相談や生活相談に応じています。学生がこうしたコミュニティ密着型の施設での活動を目の当たりにすることは、医療機関という枠組みを超えた「隣人としての医師」の在り方を考える契機となります。住民のニーズを調査し、それに基づいた健康講座を実施するなどの活動は、患者との心理的距離を縮めるための具体的な手法を学ぶ場となっています。
3. 「最後の砦として、諦めずに命を救う医師」と高度救急医療の現場
救急医療の最前線で「断らない医療」を実践し、絶体絶命の状況から命を救うという理想は、本学が誇る「高度救命救急センター」の実績と完全に一致します。
高度救命救急センターとしての責務と実績
藤田医科大学病院は、2021年4月に愛知県で2カ所目となる高度救命救急センターに指定されました。これは広範囲熱傷、急性中毒、四肢切断などの特殊疾病に対し、高度な専門医療を提供できる能力が国から認められたことを意味します。救急搬送台数は年間約13,000台と大学病院では全国1位を記録しており、応需率はほぼ100%に達します。この「絶対断らない」という強い意志と体制は、救命に懸ける医師の情熱を支える基盤です。
救急・集中治療のシームレスな連携
本学の救急総合内科は、ER(救急外来)部門と救命ICU(集中治療室)部門を同じスタッフが担当することで、医療の連続性を担保しています。また、中部地方初となる「ECMOカー」の導入や、ドクターカーとのダブル体制による病院前診療の充実は、一分一秒を争う救命現場における技術的・組織的な優位性を示しています。こうした環境での学びは、診断能力と全身管理能力の両面を徹底的に鍛え上げ、真の「救命医」を育成します。
| 救急医療指標 | 数値・詳細 |
|---|---|
| 年間救急車搬送台数 | 12,781台(大学病院全国1位) |
| 救急車応需率 | 94.3%(ほぼ100%を目標に運用) |
| 救命ICU病床 | 8床(Closed ICU)+ 20床(ハイケアユニット) |
| 特殊疾病対応 | 広範囲熱傷、急性中毒、四肢切断、ECMO管理 |
4. 「患者さんとその家族に、安心を与えられる医師」と重層的な家族支援
がんなどの重篤な疾患に直面した患者とその家族は、計り知れない不安の中にいます。藤田医科大学は、家族を含めたトータルケアをシステムとして構築し、安心を提供しています。
がん相談支援センターの役割
がん診療連携拠点病院に設置される「がん相談支援センター」では、医療ソーシャルワーカーが患者や家族の不安、疑問に寄り添い、様々な選択をサポートしています。治療に関する疑問だけでなく、家族としての接し方や、患者に病状をどう伝えるべきかといった、家族特有の悩みに対しても専門的なアドバイスが行われます。
ピアサポートとアピアランスケアの充実
本学では、がん体験者やその家族が相談員となる「ピアサポーター」による相談会が定期的に開催されています。同じ経験をした者同士の対話は、医療者による説明とは異なる次元の安心感を家族に与えます。また、抗がん剤の副作用による脱毛に対する「ウィッグ相談会」などのアピアランスケアは、患者が家族とともに前向きに生活を送るための大きな支えとなっています。これらの活動は、医師が家族の心理的状況を深く理解し、適切なタイミングで他職種に繋ぐことの重要性を教えてくれます。
5. 「地域の暮らしを丸ごと支える、街の頼れるお医者さん」と地域包括ケア
地域医療を志す医師にとって、患者の「生活」を医療・介護・福祉の統合的な視点から支える経験は不可欠です。藤田医科大学は、豊明市と連携し、全国でも先駆的な地域包括ケアモデルを構築しています。
けやきいきいきプロジェクトと学生居住
本学、豊明市、UR都市再生機構の3者が提携した「けやきいきいきプロジェクト」は、豊明団地を舞台にした地域再生と医療福祉の融合事業です。特筆すべきは「学生居住おとなりプロジェクト」であり、学生が団地に居住しながら地域貢献活動に参加し、住民のリアルな課題を共有する仕組みです。これは、診察室での対話だけでは得られない「地域で暮らすこと」の本質を理解する機会となります。
在宅医療と訪問看護の展開
本学は、大学病院を持つ学校法人として全国で初めて介護保険事業の認可を受け、24時間365日対応の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所を運営しています。また、リハビリテーション部門においても、国内最多の病床数(単一病院として)を背景に、急性期から回復期、そして在宅へと繋げるシームレスな支援を行っており、在宅復帰率は77.8%と高い水準を維持しています。地域の高齢化や多文化共生といった課題に正面から向き合う医師として、本学のフィールドは無限の学びを提供します。
| プロジェクト名 | 主な内容 | 参加主体 |
|---|---|---|
| けやきいきいきプロジェクト | 豊明団地における地域医療福祉拠点の形成 | 藤田医科大、豊明市、UR |
| ふじたまちかど保健室 | 看護師・療法士による健康・生活相談 | 藤田医科大、地域住民 |
| 学生居住おとなりプロジェクト | 学生が団地に住み、地域課題を解決支援 | 藤田医科大生、団地自治会 |
6. 「常に学び続け、最新の治療を届けられる医師」と先端低侵襲医療
医療の進歩に遅れることなく、常に最善の技術を提供したいと願う医師にとって、藤田医科大学は日本で最も刺激的な臨床環境の一つです。
ロボット手術支援センターの先駆性
本学は2008年に「ダビンチ」を導入して以来、日本におけるロボット支援手術のパイオニアとして、常に最新機種の導入と術式の開発をリードしてきました。現在は「ダビンチXi」に加え、オープンコンソールを採用した「Hugo™ RASシステム」や、人工膝関節・股関節置換術を支援する「ROSA」など、多種多様なロボットを運用しています。これらの技術は、3Dハイビジョン画像による拡大視野と手振れ防止機構により、従来の手術では困難であった繊細な操作を可能にし、出血量の低減や機能温存に大きく寄与しています。
呼吸器外科における低侵襲手術の開発
例えば呼吸器外科においては、剣状突起下アプローチによる単孔式胸腺摘出術などの独創的な術式が開発され、肋間神経を傷つけないことで術後の痛みやしびれを劇的に抑えることに成功しています。このような「患者に優しい医療」を追求する研究姿勢は、常に学び続ける医師としてのロールモデルを学生に提示しています。
7. 「チームの和を大切にし、全員の力を引き出せる医師」と専門職連携教育(IPE)
現代の高度医療は、一人の医師の知識だけでは完結し得ません。藤田医科大学が全学を挙げて推進する「アセンブリ教育」は、チーム医療の本質を理解し、リーダーシップを発揮できる医師を育成するための独自プログラムです。
段階的な専門職連携教育の構成
アセンブリ教育は、1年次から最終学年に至るまで、段階的にチームワークの質を高めていく構造となっています。
- アセンブリI(1年次):学部を越えたコミュニケーションの基礎を学びます。
- アセンブリII(2年次):災害避難所での支援をテーマに、チームでの課題解決と合意形成を実践します。
- アセンブリIII(3年次以上):他大学の医療・福祉系学生も加わり、世界有数の規模となるチーム基盤型学習(TBL)を行います。
- アセンブリIV(最終学年):実際の医療・福祉現場にチームで参画し、協働の成果を省察します。
職種間リスペクトの精神
アセンブリ教育において最も強調されるのは「他者をリスペクトする姿勢」です。単に職種の役割を知るだけでなく、共に活動し、議論し、共通の目的に向かう過程を通じて、医師として他の専門職の力をどのように引き出し、最大化させるかを体得します。この教育を受けた卒業生は、臨床現場において円滑なチーム運営を実現する中核的な人材となります。
| 年次 | プログラム名 | 重点項目 | 内容の特色 |
|---|---|---|---|
| 1年次 | アセンブリI | コミュニケーション | 傾聴、自己理解、他者理解のグループワーク |
| 2年次 | アセンブリII | チームワーク | 避難所運営をテーマにした課題解決策の提案 |
| 3年次〜 | アセンブリIII | 職種の理解 | 他大学合同のTBL、世界最大規模の参加者数 |
| 最終学年 | アセンブリIV | 協働の実践 | 実際の医療・福祉施設での多職種チーム参画 |
8. 「納得いくまで丁寧に説明し、不安を取り除ける医師」と臨床参加型実習
患者の不安を取り除くためには、医学的な正しさを伝えるだけでなく、患者の感情や理解度に合わせた対話が必要です。藤田医科大学の臨床実習は、この対話の質を向上させる工夫に満ちています。
72週間の充実したクリニカルクラークシップ
本学の臨床実習は、4年次後半から6年次にかけて、世界標準の72週間にわたって実施されます。この期間、学生は「スチューデントドクター」として診療チームの一員となり、実際の患者を受け持ちます。学生に専用の携帯電話を貸与し、電子カルテの入力を許可する取り組みは、責任ある立場から患者と向き合う自覚を促します。
告知の場への同席と倫理教育
実習中、学生は悪性腫瘍の告知や重要な検査の説明(インフォームドコンセント)に、指導医とともに立ち会うことが要求されます。そこでは、疾患の解説だけでなく、告知を受けた患者の動揺や苦悩を間近で感じ、それに対して医師がどのように言葉を選び、不安を和らげるかを学びます。また、VRを用いたシミュレーション実習により、ICU等の特殊な環境での観察力や判断力を養うことも、結果として患者への正確で安心感のある説明能力に繋がります。
9. 「新しい治療法を見つけ出し、未来の患者さんも救える医師」と研究活動
建学の精神「独創一理」は、既存の枠組みにとらわれず、真理を追求する学究精神を象徴しています。藤田医科大学は、臨床と研究を直結させ、新たな治療法の創出に挑む知の拠点です。
重点5分野と産官学連携の推進
本学は「がん」「精神・神経」「再生医療」「感染症」「医科学」を重点研究分野として定め、それぞれのセンターに最新の機器と国際的な研究者を配置しています。2020年には新型コロナウイルス感染症の治療において愛知県内の重症患者の約2割を受け入れるなど、臨床現場での実績を研究データとして蓄積し、ECMOを用いた治療指針の確立などに貢献しました。
独創性を育む教育環境
2年次から3年次にかけて行われる「医学研究演習」では、学生が自ら興味のある分野を選び、研究の基礎を学びます。また、産官学連携ポリシーに基づき、産業界との共同研究や起業支援も積極的に行われており、自らのアイデアが社会に実装される過程を目の当たりにすることができます。目の前の患者を救う「臨床」と、未来の何万人もの患者を救う「研究」の両立を、本学は強力にバックアップしています。
10. 「どんなに忙しくても、笑顔と優しさを忘れない医師」と人間性の陶冶
過酷な医療現場においても、医師の笑顔と優しさは患者にとって最大の救いとなります。藤田医科大学は、技術教育と同じ重みで、豊かな人間性を育むための教育を重視しています。
早期臨床体験(ECE)による初心の形成
医学部1年次の早期に実施される「早期臨床体験(ECE)」では、メディカルスタッフの業務を見学し、患者の苦悩に触れることで、医師を目指した原点を再確認します。看護業務の補助や入退院手続き、食事介助などを通じて、医療が多くの職種の献身的な活動によって支えられていることを学ぶ経験は、将来の傲慢さを戒め、謙虚な姿勢を育みます。
独創一理と無限の同情心
本学の教育理念に掲げられる「独創的な学究精神を堅持して真理を探究し、おおらかな誇りを持ち、感激性に富む、個性豊かな人格を形成する」という言葉は、医師である前に一人の人間として豊かであることを求めています。どんなに忙しい救急や先端外科の現場であっても、その根底には「弱き人々への無限の同情心」が流れており、それが藤田医科大学の医師たちの誇りとなっています。
総括:藤田医科大学が求める「等身大で説得力のある」志望者の姿勢
本報告書で検討した10通りの医師像は、すべて藤田医科大学の具体的活動や教育システムと密接に結びついています。面接において受験生が語るべきは、単なる美辞麗句ではなく、本学が提供する環境(例えばアセンブリ教育の段階的進化、国内最多の病床数、あるいは地域包括ケアの先駆的モデル)の中で、自分自身の理想がどのように現実の行動として結実していくかという具体的なシナリオです。
「独創一理」を建学の精神とする本学は、画一的な優等生を求めているわけではありません。自らの理想を掲げ、それを実現するために本学の多様なリソースをどのように活用し、チームの一員として、また一人の探究者として成長していきたいかを誠実に語る姿勢こそが、面接官の共感を生むのです。
引用文献
- センター紹介 | 藤田医科大学 産官学連携推進センター
- 高度救命救急センターに指定されました - 藤田医科大学病院
- 藤田医科大学病院リハビリテーション科|愛知県豊明市 - リハノワ
- 緩和医療科 - 藤田医科大学病院
- 緩和ケア - 藤田医科大学 腫瘍医学研究センター
- 6年間の学び・カリキュラム | 藤田医科大学
- 藤田医科大学病院 : 相談支援センター - 病名から病院を探す - がん情報サービス
- 「がん相談支援センター」で相談できることの例と利用者の声 - がん情報サービス
- がん相談支援センター - 藤田医科大学 腫瘍医学研究センター
- がん相談支援室について - 藤田医科大学病院
- 多職種連携教育 | 藤田医科大学 アセンブリ教育センター
- 特色のある取り組み - 藤田医科大学
- 多職種連携教育とは - 藤田医科大学
- 藤田医科大学 医療科学部 学部の特色 - 大学ポートレート(私学版)
- 藤田医科大学 地域包括ケア中核センター
- 藤田医科大学病院に「高度救命救急センター」が誕生へ 愛知県では2か所目 - YouTube
- 2021年4月1日より高度救命救急センターに指定されます - 藤田医科大学
- ER部門 - 藤田医科大学病院 救急総合内科・救急科
- 救命ICU部門 - 藤田医科大学病院 救急総合内科・救急科
- がん相談支援センター | 藤田医科大学病院
- 地域医療連携センター設置に関する協定を締結しました(本学・豊明市・東郷町) - 藤田医科大学
- リハビリテーション科 - 藤田医科大学病院
- 手術支援ロボット「ダビンチXi」を導入 - 藤田医科大学病院
- ロボット支援手術 - 藤田医科大学病院
- 内視鏡下手術支援ロボット「ダビンチ」 - 藤田医科大学 岡崎医療センター
- ロボット支援手術|da Vinciサージカルシステム - 藤田医科大学 腎泌尿器外科
- 藤田医科大学におけるIPE - アセンブリ教育
- 選択制臨床実習 シ ラ バ ス - 藤田医科大学
- 藤田医科大学看護学科 術後患者の観察を深める「VR(仮想現実)×看図アプローチ」臨床体験授業でリアル実習の精度をアップ
- 研究・産官学ポータル | 藤田医科大学
- 産連ポリシー | 事業紹介 | 藤田医科大学 産官学連携推進センター
- 藤田医科大学3つのポリシー