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福岡大学医学部における教育と理想的医師像への適合性

福岡大学医学部は、1970年の創設以来、半世紀以上にわたり九州・福岡の地において地域医療の核として、また高度専門医療の拠点として、卓越した医療人の育成を続けてきました。その教育の根本には「人の健康と福祉の増進」という医学の本来的使命があり、全人教育を基盤とした人間性豊かな医師、看護師、研究者の養成を目的としています。本報告書では、志望者が抱く10通りの理想的医師像を軸に、福岡大学医学部の教育カリキュラム、附属病院の機能、研究体制、および独自の学修成果目標である「FU-RIGHT」との整合性を、多角的な視点から詳細に検討し、その魅力を体系的に論述します。

1. 「病気だけでなく、人を診る医師」を育む教育基盤

現代医学が臓器別、あるいは遺伝子レベルでの精緻化を遂げる一方で、患者を一人の生活者として捉える「全人教育(Whole-person education)」の重要性は、福岡大学医学部の教育方針において最優先事項の一つとして掲げられています。

全人教育の理論的背景と螺旋型カリキュラム

福岡大学が採用している「螺旋(らせん)型教育」は、基礎医学と臨床医学を分断せず、学年が進むにつれて同一の概念をより高度な臨床的文脈で再学習する構造を持っています。これは、単に検査データとしての数値を解析する能力ではなく、その数値が患者のどのような生活習慣や心理的ストレスに起因しているのかを推論する能力を、段階的に培うための仕組みです。第1学年から始まる専門関連科目の設定は、学生が医学の「科学的側面」に染まる前に「人間的側面」に触れる機会を提供し、医療の対象が単なる臓器の集合体ではなく、豊かな背景を持つ人間であることを直感的に理解させます。

チュートリアル教育におけるバイオ・サイコ・ソーシャルモデルの導入

少人数グループで行われるテュートリアル教育(PBL: Problem-Based Learning)では、提示される症例シナリオに、患者の職業、家族構成、経済的状況、価値観といった社会的・心理的要因が意図的に組み込まれています。学生は、7人程度のグループでこれらの要因が疾患の経過や治療の選択にどのような影響を与えるかを討議し、生物学的な疾患(Disease)のみならず、患者個人の体験としての病い(Illness)を理解するトレーニングを積みます。

教育フェーズ 具体的施策 人間理解への影響
第1学年(導入期) 看護体験・施設見学 医療者の視点だけでなく、ケアを受ける側の視点と生活背景を体感する。
第2-4学年(統合期) テュートリアル教育(少人数討議) 疾患の背景にある社会的要因を特定し、問題解決を図る姿勢を養う。
第5-6学年(臨床期) 診療参加型臨床実習(クリニカルクラークシップ) 実際の患者との対話を通じて、個々の生活に即した医療の在り方を追求する。

2. 「心の距離が近い医師」を形作るコミュニケーション教育

患者が「先生になら話せる」と感じる心理的安全性を構築するためには、単なる愛想の良さではなく、医療面接学(Medical Interviewing)に基づいた高度なコミュニケーション技術が必要とされます。

医学教育推進講座による系統的な指導

福岡大学医学部には、全国的にも特徴的な「医学教育推進講座」が設置されており、ここが中心となって学生のコミュニケーション能力開発を担っています。第1学年という極めて早い段階で実施される、模擬患者(SP: Simulated Patient)を用いた医療面接体験は、学生に「聞くこと」の難しさと重要性を認識させます。ここでは、オープン質問の使用や非言語的スキルの重要性、共感の示し方などが、教育工学的な観点からフィードバックされます。

FU-RIGHTにおける信頼関係の定義

福岡大学医学部が定義する卒業時の学修成果目標「FU-RIGHT」の「R」は「Relationship(信頼関係)」を象徴しています。この目標設定は、医師としての専門知識(Intelligence)と同等、あるいはそれ以上に、患者や他者と良好な関係を築く能力が医師のプロフェッショナリズムの根幹であることを示しています。威圧感を与えず、かつ専門家としての信頼を勝ち取るためのバランス感覚は、6年間を通じて繰り返し評価され、磨かれるのです。

3. 「命を救う最後の砦」としての高度医療と救急体制

救急医療や外科を志す学生にとって、福岡大学病院の救命救急センターは、その使命感を具現化するための理想的なフィールドです。同病院は特定機能病院として、地域における重症患者の最終的な受け皿としての機能を果たしています。

「攻めの救急」を象徴するFMRCの運用

福岡大学病院の救命救急医療の最大の特徴は、病院内で患者を待つ受動的な姿勢ではなく、現場に医師を投入する「攻めの救急」を実践している点にあります。2018年に導入されたFMRC(ファーストメディカルレスポンスカー)は、消防からの要請により医師と看護師が救急現場へ直接駆けつけ、早期診断・早期治療を開始するためのシステムです。

  • 機動性の向上: ドクターヘリが着陸困難な都市部や夜間でも活動可能であり、狭所での救命活動にも対応する。
  • 救命率への寄与: 病院到着前の医療介入により、特に心肺停止事案や重度外傷における救命率と社会復帰率の向上に寄与している。
  • 現場教育の場: 指導医とともに現場に赴くことで、学生や若手医師は極限状態での判断力と技術の重要性を肌で学ぶことができる。

20床のICU体制と集学的治療

重症患者の全身管理を行うICU(集中治療室)は、EICU(救急集中治療室)12床とHCU(高度治療室)8床の計20床を有し、年間500〜600症例もの重篤な患者を受け入れています。ここでは、人工呼吸管理、PCPS(経皮的心肺補助装置)、血液浄化法といった高度な医療機器を駆使した集学的治療が行われており、どのような重症度であっても決して諦めない「最後の砦」としてのプライドが、各診療科の緊密な協力体制のもとに維持されています。

4. 「患者とその家族に、安心を与えられる医師」への支援体制

医療は患者本人のみならず、その家族をも対象としたケアであるという認識は、福岡大学病院の「地域医療連携センター」の活動に色濃く反映されています。

地域医療連携センターによる多角的サポート

地域医療連携センターは、単なる転院調整の窓口ではなく、患者や家族の不安を取り除くための多機能な支援組織です。医療相談窓口では、社会保障制度の案内、介護保険サービスの利用相談、障がい福祉サービスの調整など、病気に伴う生活上の課題を一つひとつ整理し、家族の負担を軽減するための具体的な解決策を提示しています。

家族を含めた意思決定支援

臨床実習において学生は、インフォームド・コンセント(説明と同意)の現場に立ち会い、指導医がどのように患者とその家族の不安を掬い上げ、納得のいく合意を形成していくかを学びます。病気そのものの説明だけでなく、その後の生活の見通しや家族が担うべき役割について、具体的かつ温かみのある言葉で伝えることの重要性が、実習を通じて強調されます。

5. 「地域の暮らしを支える、街の頼れる医師」を育む3病院実習

福岡大学医学部は、高度先進医療を提供する大学病院だけでなく、地域密着型の病院を附属に持つことで、プライマリ・ケアから高度専門医療までを網羅する実習環境を提供しています。

病院名 医療機能と特徴 地域における役割
福岡大学病院 高度先進医療・特定機能病院 3次救急、希少疾患、高難度手術を担当。
福岡大学筑紫病院 地域医療・2次救急 筑紫地区の中核として、身近な疾患から急性期まで幅広く対応。
福岡大学西新病院 地域の急性期・慢性期医療 福岡市早良区に位置し、より地域住民に近い距離での医療を提供。

学生はこれらの病院を巡ることで、大学病院での最先端治療の凄みを知ると同時に、地域病院における継続的な健康管理や在宅復帰支援の重要性を学びます。この経験は、将来どのような専門を選んだとしても、地域の医療ネットワークの中で自分が果たすべき役割を理解する糧となります。

6. 「常に学び続け、最新の治療を届けられる医師」の自律性

医学の進歩に遅れず、自己研鑽を継続することは、医師としての誠実さそのものです。福岡大学医学部のアドミッション・ポリシーには「自律学習能力」の重要性が明記されています。

卒業時成果目標「FU-RIGHT」のIntelligence

FU-RIGHTの「I」は「Intelligence(医学的知識・技能)」を表しますが、これは単に試験に合格するための知識ではなく、生涯を通じて学びを更新し続けるための「学ぶ力」を指しています。テュートリアル教育は、学生が自ら調べ、考え、発表するプロセスを習慣化させることで、教科書を待つのではなく、最新の論文やガイドラインを自ら取りに行く姿勢を醸成します。

医学教育センター(CMET)によるキャリアサポート

医学教育センターは、学生の学修成果を可視化し、適切なフィードバックを行うことで、自己研鑽の方向性を示しています。また、ITを活用したeラーニング環境の整備や、シミュレーション教育の充実により、最新の医療技術を安全に、かつ効率的に習得できる環境を整えています。

7. 「チームの和を大切にし、全員の力を引き出せる医師」の育成

現代医療における「主役」は医師一人ではなく、多職種で構成されるチームです。福岡大学医学部では、看護学科との合同授業や、診療参加型実習を通じて、チーム医療のリーダーシップとフォロワーシップを学ぶ機会を豊富に設けています。

看護学科との多職種連携教育(IPE)

医学科と看護学科の学生が共に学ぶ「医学部連携プログラム」は、各学年において段階的に実施されます。

  • 低学年時: 医療倫理や生命尊厳といった共通の価値観を確認し、お互いの職種を目指す動機を共有する。
  • 高学年時: 具体的な症例検討を通じて、看護師が捉える患者のADL(日常生活動作)やQOLの視点と、医師の治療方針をどのように統合するかを実践的に議論する。

クリニカルクラークシップにおけるチーム参画

第5学年以降の実習では、学生は病棟の診療チームの一員(Student Doctor)として扱われます。医師、看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士などが一堂に会するカンファレンスに参加し、それぞれの専門領域から出される意見を統合し、ベストな治療方針を導き出すプロセスを体験します。

8. 「納得いくまで丁寧に説明し、不安を取り除ける医師」の技法

インフォームド・コンセントの形骸化を防ぎ、真の意味での患者中心の医療を実践するため、福岡大学では臨床推論に基づいた論理的な説明能力を重視しています。

臨床推論とエビデンスに基づいたコミュニケーション

クリニカルクラークシップでは、患者から得た情報を整理し、診断に至るプロセスを論理的に構築する「臨床推論」のトレーニングが徹底されます。学生は、英語論文の読解を通じて最新の医学的根拠(エビデンス)を確認し、それをPowerPoint等を用いてプレゼンテーションする訓練を受けます。この「論理的に構築する力」こそが、患者に対して曖昧さを排除し、かつ分かりやすい言葉で納得のいく説明を行うための技術的基盤となります。

OSCEによる客観的評価

第4学年末に実施されるOSCE(客観的臨床能力試験)は、診察技能だけでなく「説明と同意」のスキルを客観的に評価します。患者役を相手に、専門用語を避け、患者の理解度を確認しながら対話を勧める能力が合否を左右します。福岡大学では医学教育推進講座のサポートにより、この標準化された高いレベルのコミュニケーション技術を全ての学生が身に付けられるよう指導しています。

9. 「新しい治療法を見つけ出し、未来の患者さんも救える医師」への道

臨床医として目の前の患者を救う一方で、研究を通じて世界中の患者に貢献したいという研究医志向の学生に対し、福岡大学は早期からの研究体験を提供しています。

1年次から始まる医学研究の体験

  • 第1学年: 医学研究の多様性を知るためのオムニバス形式の講座を体験し、研究への関心を喚起する。
  • 第2学年: 1ヶ月間の「基礎医学実習」にて、自ら選択した研究室に配属される。ここでは文献調査から実験、データの分析、討論、結果の報告までの一連の研究プロセスを完結させる。
  • 継続的な研究支援: 実習後も興味を持った学生は研究を継続することができ、学内のみならず学外、あるいは海外の学会での発表を支援する体制がある。

MD研究者育成プログラムの展望

より高度な研究を志す学生のために、学部在学中から大学院のカリキュラムの一部を開始できるようなプログラムや、将来的な学位(PhD)取得を見据えたキャリア指導も行われています。基礎医学系教室の充実した設備と、教員によるマンツーマンに近い熱心な指導は、多くの学生を研究の世界へと誘っています。

10. 「笑顔と優しさを忘れない医師」を育む人間性教育

医療現場の過酷さを超えて、医師が人としての温かさを失わないためには、本人の精神的なレジリエンス(回復力)と、豊かな人間性を育む環境が必要です。

FU-RIGHTのGoodnessと全人教育の精神

FU-RIGHTの「G」は「Goodness/Gentleness(優しさ・善良さ)」を意味します。これは、卓越した技能(Intelligence)を誇示するためではなく、苦しんでいる人を助けたいという「慈しみの心」を常に中心に置くことを、大学が医学教育の最高価値として掲げている証です。

総合大学ならではの多様性と「班制度」による絆

福岡大学は医学部単科大学ではなく、多種多様な学部を擁する総合大学です。この環境は、医学以外の教養や友人関係を通じて、学生の人間的な幅を広げることに大きく寄与しています。また、入学直後から始まる「班制度」は、学年の枠を超えた先輩・後輩の交流を促し、孤独になりがちな医学部の学修過程において互いに支え合う文化を醸成しています。この「支えられている」という実感こそが、将来、医師として忙しさに忙殺された時でも、患者に対して笑顔を向けられる心の余裕を生み出すのです。

結論:福岡大学医学部が約束する「理想の具現化」

福岡大学医学部の教育カリキュラムと附属病院の機能は、10通りの医師像のどれ一つとして疎かにせず、その全てに対して高い次元で応えられるように設計されています。

「攻めの救急」を実践する高度な技術(最後の砦)から、地域医療連携センターが支える家族への配慮(安心感)、そして看護学科との連携を通じたチーム医療(和)まで、福岡大学医学部には志望者の「理想」を「現実の能力」へと変えるための強固な枠組みが存在します。

卒業時に達成すべき学修成果目標「FU-RIGHT」は、単なるスローガンではなく、6年間の教育を通じて学生一人ひとりの血肉となる実質的な指針です。この精神を携えた卒業生たちは、福岡の地から全国、そして世界へと羽ばたき、医学の発展と人類の福祉に貢献し続けています。

引用文献

  • 学部 | 教育研究上の目的、三つのポリシー | 情報公表 | 福岡大学
  • 医学部 - 福岡大学
  • 教育理念・目標・学びの特色|医学科|福岡大学 医学部
  • 2026 福岡大学 医学部情報|大学の特徴|志望理由書や面接で役立つ情報
  • この学修ガイドは - 福岡大学
  • 地域医療連携 | 当院について | 福岡大学病院
  • 救命救急センター | 各部門・センター | 福岡大学病院
  • 診療内容|福岡大学医学部救命救急医学講座
  • 福岡大学病院 救急科専門Professional育成 研修プログラム
  • 地域医療連携センターについて - 福岡大学病院
  • 福岡大学 医学部 学部の特色 - 大学ポートレート(私学版)
  • 医学科 | 医学部 | 学部 | 教育 - 福岡大学
  • 医学研究科 Graduate School of Medicine - 福岡大学 大学院