東京慈恵会医科大学 一般選抜 出題傾向 化学
傾向と対策の概要
東京慈恵会医科大学の化学は、理論、無機、有機の各分野を網羅しつつ、これらの分野を融合した問題が中心となる傾向が一貫しています。
最大の特徴は、リード文や設問に薬物、生体反応、医療といった医学に関連する題材が深く組み込まれている点です。問題の難易度は標準的な基礎知識で解答できる部分が多いものの、各年度に必ず1つ以上、高度な思考力や計算力、あるいは非標準的な知識(教科書外の反応、馴染みの薄い物質など)を要する難問が含まれており、これが合否を分ける要因となっています。
試験形式の安定性と構成
| 項目 | 2018年度~2023年度 | 2024年度~2025年度(最新) |
|---|---|---|
| 試験時間 | 120分 | 120分 |
| 大問数 | 4題 (理論、理論・無機融合、有機・理論融合、有機など) | 3題 (理論、理論・融合、有機・融合など) |
| 解答形式 | すべて解答用紙に記入。主に空所補充、計算、構造式記述、一部論述。 | 同様(空所補充、計算、構造式記述など) |
試験形式の大きな変化
2018年度から2023年度まで大問4題構成で安定していましたが、2024年度および2025年度では大問数が3題に減少しました。試験時間120分に変更がないため、1題あたりの問題文や設問の分量が、以前より増加する可能性があります。
また、2020年度の問題4(エステル合成実験)では「データの活用」が意識された出題があり、2022年度の問題4(ポリアスパラギン酸)では高分子のリサイクルに関する問題が問われるなど、時代の要請に応じたテーマも取り入れられています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題は、理論・無機・有機の三分野からバランスよく出題されますが、複数の分野を統合した「融合問題」が中心となります。
理論化学:
- 熱化学・化学平衡:ボルタ電池やダニエル電池などの電池(2019, 2024)、反応熱や熱化学サイクル(2019)、オゾン層の形成に関する反応熱(2021)、ルシャトリエの原理に基づく平衡移動(2023)など、幅広いテーマで出題されます。
- 溶液・コロイド:消毒用エタノールの濃度計算(2018)、凝固点降下(2018, 2020, 2025)、コロイド(2018)、溶解度積と金属イオンの回収率計算(2021) など、計算と知識が融合されます。
- 分離・精製:凝固点降下のグラフ解釈(2020) や混合物の蒸留(2022)、有機化合物の分離操作(2022) など、実験操作やグラフ読み取りに関する問題が頻出しています。
- 応用理論:光触媒(2022) や浸透圧を利用した計算(2022)、核化学(2025) など、やや発展的なトピックも含まれます。
無機化学:
- 錯イオン・両性元素:水酸化アルミニウム(2018)、金属イオンの系統分析(2021) など、標準的なテーマは引き続き出題されます。
- 生体内無機物:ヘモグロビンやフェリチンなど、鉄イオンを題材とした特有の出題(2019)が見られます。
- 窒素化合物:アンモニアの性質やオストワルト法(2020)、二酸化炭素の定量実験と関連させた炭酸塩の平衡(2023) など、応用的なテーマが多いです。
有機化学:
- 医薬品・生体関連物質:アドレナリン(2018)、イソニアジド(2019)、キノン類(2020)、テルミサルタン(2023) など、医薬品の合成経路や反応性が題材となることが多いです。
- 高分子・生体高分子:天然ゴムや合成ゴム(2018)、多糖類(アミロペクチン、グリコーゲン)の枝分かれ分析(2019)、ポリアスパラギン酸(2022)、蛍光タンパク質(2021) など、高分子化学が重視されています。
- 構造決定・反応:構造式を与えられた状態での官能基の反応性や滴定曲線からの構造推定(2018のアドレナリン)、アルカンの物理的性質(2023)、テルペン類(2024)など、高度な知識と推測力を要する問題も含まれます。
特徴的な傾向
- 医学・生体関連テーマの徹底:ほぼ全ての大問で医療や生体に関わる物質がテーマとなっており、この傾向は一貫しています。
- 馴染みの薄い物質の登場:受験生に馴染みの薄い物質(例:ハイドロタルサイト、アダマンタン、ポリアスパラギン酸、テルペン)をリード文で提示し、その性質や反応を高校化学の基礎知識で解かせるスタイルが特徴的です。
- 論述・思考問題の難しさ:複雑な反応順序や平衡状態を推定させる問題、実験操作の理由(ブランクテストなど)は、特に難易度が高く、差がつきやすい傾向にあります。
- 計算の正確性要求:手順が多く、pHや有効数字の扱いに細心の注意を払う必要があります(例:9.0ではなく9.00を正答とするなど)。
対策
1. 基礎知識の徹底と正確性向上
出題の多くは基礎・標準的な問題で構成されており、これらを迅速かつ正確に解答することが前提です。特に、熱化学、化学平衡、溶液の性質(凝固点降下、溶解度積)、反応速度、無機化合物の性質、有機化合物の反応と官能基に関する知識は磐石にする必要があります。
2. 融合問題・応用問題への対応
理論、無機、有機の知識を統合して使用する練習を積むことが不可欠です。特に、生体関連物質や医薬品を題材にしたリード文から、問われている化学現象(酸化還元、平衡、酸塩基反応など)を正確に読み取る訓練が必要です。
3. 有機化学の構造決定と反応性の習得
合成経路や構造決定には高い推測力が必要です。既習の医薬品や生体高分子(タンパク質、多糖類)の構造と関連づけながら学習を進め、高分子化合物や分離操作の問題にも慣れておくべきです。
4. 過去問を用いた実践的な演習
慈恵医大特有の、馴染みの薄い物質を題材とした問題に慣れるため、過去問演習が必須です。特に、複雑な計算問題や論述・説明問題では、解答手順や記述のポイントを掴んでおくことで、試験本番での難問への対処能力が向上します。
5. データ解釈と論理的思考の強化
グラフや表から傾向を読み取る問題や、複数の平衡反応が絡む問題、実験操作の理由を問う問題に対応するため、「なぜその操作が必要なのか」という論理的な背景まで理解しておくことが重要です。