東京慈恵会医科大学 一般選抜 出題傾向 英語
2018年度~最新入試の傾向まとめ
傾向と対策の概要
2018年度に形式が大幅に変更されて以来、本学の英語入試は、長文読解問題3題と英作文問題1題(または読解問題内での自由英作文)という形式で安定しています。
合格の鍵は、学術的で専門性の高いテーマの長文を、60分という限られた時間内で正確に読み解く読解力にあります。特に、文脈の深い理解を問う空所補充や指示語問題の難易度が高く、また、高度な内容を論理的に展開する英作文能力が合否を分ける重要な要素となっています。
試験形式の安定性と構成
試験形式は2018年度以降、長文読解3題、英作文1題の合計4題構成(ただし、2020年度以降は英作文が読解問題内に統合される傾向がある)で、一貫して60分が与えられています。
- 長文読解(I, II, III): 3題とも学術論文や専門書からの引用で、分量が多く、高度なテーマを扱います。
- 英作文(IV、または読解問題内): 自由英作文(意見論述)または日本語の要約・翻訳形式の出題が見られます。
試験形式の大きな変化
最も大きな形式の変更は2018年度に起こりました。
文法・語彙問題の廃止と統合
2017年度までの独立した文法・語彙問題が廃止され、その要素がすべて長文読解問題の中に統合されました。これにより、単なる知識ではなく、文脈の中で語彙や文構造を正確に理解する能力が求められるようになりました。
2019年度以降、全体構造は安定していますが、英作文の出題形式には軽微な変化が見られます。
英作文の統合
従来の独立した日本語和文英訳(2018, 2019) の形式に加え、2020年度以降は、読解内容に関連したテーマで自分の意見を論理的な英語で記述させる自由英作文が出題されることが増えています(例:2020年Ⅲ問6、2022年Ⅱ問X/Ⅲ問6、2023年Ⅲ問X)。
出題分野や出題テーマの傾向
出題されるテーマは、医学部入試らしく、医学、生物学、認知科学、社会科学、倫理学といった学術的で専門的な内容が中心です。特に、医療や人間の行動原理、現代社会の課題に関連するテーマが多く選ばれています。
| 年度 | 主な出題テーマの例 | 分野 |
|---|---|---|
| 2025 | 炎症と老化(炎症時計)、乳幼児健忘、人体組織の商品化(生命倫理) | 医学/生物学、心理学/倫理学 |
| 2024 | 血液型とマラリア、自然発生説への反論(パスツール)、健康の自己管理 | 医学/生物学、科学史、心理学 |
| 2023 | 知的負荷と疲労のメカニズム、集合知のアルゴリズム、医療ミスと医師の態度 | 認知科学、社会科学、倫理学/医学 |
| 2022 | 疫学(ジョン・スノウ)、休眠状態の弱い関係の活用、埋没費用の誤謬 | 医学/科学史、心理学/経済学 |
| 2021 | 天然痘ワクチン開発史、光の治癒力、間違いの質と学習効果 | 科学史、医学、認知科学 |
| 2020 | がん細胞の浸潤、終末期患者に対する緩和ケア、ギャンブラーの誤謬 | 医学、倫理学、心理学 |
| 2019 | 女性外科医のジレンマ、身体構造の順応性、危険に対する人々の認知 | 社会学/医学、生物学、心理学 |
| 2018 | 米国の経済モデル、動物と車の衝突、ネグレクトと脳の働き | 経済学、環境/生物、神経科学 |
特徴的な傾向
- 文脈読解の難しさ: 英文自体の難易度は標準的とされることが多い一方で、指示語(代名詞など)が指す内容が文脈全体を理解しないと判断できない問題や、文挿入問題など、文と文、段落と段落の論理的つながりを深く問う問題が多いです。
- 空所補充の高度化: 空所補充問題は、適切な単語の形や意味を選ぶだけでなく、文脈全体、あるいは筆者の主張を踏まえた高度な語彙選択を要求します。
- 論理的思考力の要求: 内容真偽を問う選択肢は、本文中の記述を単に言い換えたものだけでなく、本文の趣旨から論理的に推論される内容を選ぶものが多く、表面的な理解では対応できません。
- 英作文の配点の重要性: 英作文問題は解答欄の大きさから約120~150語程度の記述が求められることが多く、論理的な構成、具体的な理由や例を盛り込む表現力が不可欠です。
対策
学術的英文の多読と速読
医学・科学系の専門的なテーマの英文に日常的に触れ、未知の語彙が出ても前後の文脈から意味を推測する力を養う必要があります。60分で3題の長文を処理するには、速読力が必須です。
語彙力と文法力の徹底的な強化
独立した文法問題はなくなりましたが、高度な内容を扱う読解問題や英作文で正解を導くためには、上級レベルの語彙力と、複雑な構文を正確に把握できる精緻な文法知識が不可欠です。
論理的読解の訓練
長文を読む際は、筆者の主張、論の展開、段落間の接続関係を意識的に追う訓練を行いましょう。指示語や接続詞が何を指すのかを常に確認し、文脈の深い理解度を問う問題に対応できるようにします。
英作文の徹底演習
- 論理構成の構築: 序論・本論・結論の基本構造(Introduction, Body, Conclusion) に沿って、説得力のある論理を迅速に組み立てる練習。
- 具体的例の準備: 抽象的な意見だけでなく、裏付けとなる具体的な理由や例(架空の例も可)を英語で記述する練習を積むこと。
- 日本語の言い換え練習: 日本語の文章を直訳するのではなく、自然で正確な英語で表現できるように、難しい日本語を平易な英語に言い換える練習が有効です。
これらの対策を通じて、単に英語を訳すだけでなく、論理的思考力と表現力を総合的に高めることが、慈恵医大の英語入試突破に繋がります。
例え話: 慈恵医大の英語入試は、高度な学術論文を読み解く「情報将校」の資質を試しているようなものです。与えられる長文は、まるで暗号が隠された機密文書であり、単に単語を訳す「辞書」の能力だけでは不十分です。文脈や筆者の意図を深く読み取る「推理力」、そしてそれを正確かつ論理的に上官(採点者)に報告する「英作文能力」という、複合的なスキルが求められています。