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埼玉医科大学 一般選抜 出題傾向 小論

埼玉医科大学の小論文試験は、人文科学、社会科学、認知科学、芸術、科学哲学など極めて広範な分野から専門的な文章を引用し、受験生の高度な読解力、分析的思考力、および論理的表現力を総合的に試すものです。

初期の試験(2018〜2020年度)では、出題内容は多岐にわたるものの、解答形式は基本的にマーク式が主体でした。しかし、近年(2024年度、2025年度)は、試験形式が「小論文(和文・英文)」と称され、日本語による記述・要約、英文和訳、英文作成、および図表を参照した論述など、記述・論述能力を重視する問題が大幅に増加しています。この変化により、正確かつ簡潔な表現力が合否を分ける重要な要因となっています。

試験形式の安定性と構成

  • 試験時間: 多くの年度で60分が指定されています。
  • 大問構成: 過去には4つの大問で構成されていた時期もありますが、近年は3つの大問で構成されています。
  • 出題の核: 専門的な長文を提示し、その内容理解を問う設問群に解答させるという、読解中心の形式は一貫しています。

試験形式の大きな変化

最大の変化は、解答形式の劇的な変化です。

マーク式から記述・論述式への移行

2018年度〜2020年度の資料では、解答は解答用紙の解答欄にマークすることが指示されていました。しかし、2024年度以降の一般選抜後期では、試験名称が「小論文(和文・英文)」となり、解答は解答冊子の該当箇所に記入することが指示されています。

具体的な記述形式として、200字以内、150字以内、100字以内、50字以内といった厳密な字数制限での説明や要約が課されています。

英語(英文)を用いた出題の組み込み

2024年度および2025年度の試験では、大問の約3分の1が英文の読解問題となっています。これには、英文の和訳、および指定された日本語の意味を表現する英文の記述(英作文)が含まれています。

出題分野や出題テーマの傾向

出題テーマは、医学・生命科学の背景を持つ知識だけでなく、人間、社会、文化、思考の根源に関わるリベラルアーツ的な内容が中心です。

分野 具体的なテーマ例 出典年度例
認知科学・心理学 粘菌の時間記憶と周期性予測、知識の錯覚(認知的分業)、論理的思考と社会性、言語隠蔽効果(言葉が視覚記憶を変化させる)、心の声の認識 2018, 2019, 2020, 2025
芸術・文化・美学 クレーの絵画と時間の概念(造形的完成)、「日本の眼」(奇数の美、無地の美)と茶美、桜の花と時間性の美学、翻訳論(ハツカネズミの性転換) 2018, 2019, 2020
身体論・知覚 江戸と明治の「身」と「身体」の対比(解剖図の比較)、飛行機内の騒音とうま味知覚の変化、桑田真澄の投球動作における感覚と運動のズレ 2020, 2024
社会・倫理 狩猟採集社会の「平等」(自律性の維持)、『火垂るの墓』と自己責任論、広範な「ケア(Care)」の定義、無力感と選択のパラドックス 2018, 2019, 2024

特徴的な傾向

図表の読み取りと統合的な理解の要求

2025年度前期では、シマウマの縞模様に関する実験結果のグラフ(図)を読み取り、そのデータ(統計的に有意な差など)を参照して結論とその論拠を説明させる問題が出題されています。これは、文章読解に加え、視覚情報を分析し論理的に言語化する能力が求められていることを示します。

高度な専門用語の理解

「知識の錯覚」「内なる書物」「技術決定論」「言語隠蔽効果」など、専門的または哲学的な概念が出題され、これらの概念を文章の文脈から正確に定義・説明する能力が求められます。

意識と身体のズレに関するテーマの頻出

桑田真澄の投球の「感覚と運動のズレ」や、人間の論理的思考が抽象的な問題では機能しにくいというウェイソン/コスミデス実験の例に見られるように、人間の認知や身体の「無意識」や「非論理的」な側面に焦点を当てたテーマが特徴的です。

対策

近年増加している記述形式、特に英語を用いた出題に対応するため、以下の対策が効果的です。

1. 多角的で精密な読解力の養成

人文・社会科学系の書籍や論考を広く読み、主張、論拠、比喩、対比構造を瞬時に見抜く訓練を行います。特に、抽象的な概念を、筆者の意図に即して正確に把握する練習が必要です。

2. 記述・要約能力の徹底的な訓練

字数制限(特に100〜150字)を厳守し、問いに対して過不足なく答える簡潔で正確な日本語表現を習得します。複数の要素(例:グラフA, B, C)を参照しつつ論理を構成する訓練も欠かせません。

3. 英文読解・論述(和訳・英作文)の強化

  • 英文和訳: 学術的・論理的な文章を、文法的に正確かつ自然な日本語に訳出する練習が必要です。
  • 英作文: 指定された日本語の内容を、文脈に適合する適切な表現で英語に記述できる訓練が必須です。

この試験で求められる能力は、たとえるなら、複雑に絡み合った機械の設計図(長文)を読み解き、その設計意図(筆者の主張)を理解するだけでなく、その構造(論理)を極小の部品(字数制限、単語)に至るまで正確に言語化し、さらにその設計図が別の言語(英語)で書かれていても自在に扱うことができる精密工学者のようなものです。近年の傾向は、特に設計図を「精密に書き直す」技術の重要性を高めています。