昭和医科大学 一般選抜 出題傾向 国語
Ⅰ期(2018年度~最新入試)
傾向と対策の概要
昭和医科大学医学部の国語の入試は、現代文のみで構成され、医学、生命倫理、哲学、社会論といった学際的なテーマの論説文が出題される傾向が顕著です。
出題形式は、空所補充、傍線部説明、そして難度の高い記述問題が中心であり、特に90分という試験時間に対して、文章量が多く、内容が複雑であるため、高い読解速度と論理的思考力が要求されます。
試験形式の安定性と構成
試験は一貫して現代文の論説文を素材としています。
| 試験時間 | 90分 |
|---|---|
| 難易度 | やや難(相当レベル) |
| 設問構成 | 空所補充、語句の意味、内容説明、記述問題(傍線部説明や要旨記述) |
大問数の変動
大問の総数には年度ごとの変動が見られますが、いずれの年においても出題される文章の分量は多く、時間的な厳しさは変わりません。
- 2021年度:現代文の大問四題
- 2022年度:三題に減少
- 2024年度:現代文のみで大問一題(資料が国語全体の一部のみの可能性あり)
- 2025年度:二題
試験形式の大きな変化
大問の数の増減はありますが、近年で最も注目すべき変化は、記述問題の重要性の維持と、それに伴う解答の要求レベルの高さです。
記述問題のポイント
指定された字数制限内(例:60字以内、100字以内、30字や40字以内)で、文章中の複雑な事実的または論理的な内容を正確に要約・説明する能力が求められます。
特に、キーワードの対比や定義を理解し、その違いを正確に記述させる問題が多く見られます。
(例:2021年度の「因果的効果」と「因果的効力」の区別、2025年度の「欠落」と「欠如」の理解)
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは、医学部入試に特有の学術的・倫理的な分野に集中しています。
生命倫理と医療の目標
- 死生観と終末期医療:「生と死の境界」の曖昧さ、「安楽死・尊厳死」の是非、「医療のゴール」や「法システム」の構造、「無駄な延命治療」など。
- 生命の定義:生物の構造維持や自己増殖など、「生命とは何か」という根源的な問いや、生命が持つ特性に関する論文。
身体論と自己・他者
- 自己と他者の関係性、身体が持つ意味や存在、人間の「人格性」の確立といった、哲学的な身体論や自己意識に関するテーマ。
社会科学的アプローチ
- 医療経済とEBM:医療資源の配分効率性や、EBM(根拠に基づく医療)の限界と倫理的な側面。
- 文化・技術批評:食物と文化の関わりや、技術の進歩が人間や社会に与える影響(例:2024年度の『ガリヴァー旅行記』の批評)。
特徴的な傾向
- 専門用語の正確な理解:論説文で扱われる専門的なキーワード(例:EBM、生命の定義、権利、平等など)を、文脈に応じて正確に定義し、説明する能力が不可欠です。
- 論理構造の把握:文章全体の論理的な流れ、筆者の主張と反論、そして具体例が指し示す抽象的な意味合いを素早く理解する必要があります。
- 文章構成力と字数制限:記述問題では、与えられた字数制限を厳守しつつ、必要な要素(句読点を含めた字数)を過不足なく盛り込むことが採点のポイントとなります。
対策
記述対策の徹底
過去問を通じて、字数制限のある記述問題の練習を徹底することが最も重要です。特に、傍線部だけでなく文章全体を読み込み、筆者の主張や論理展開の要点を正確に抽出・要約する練習が必要です。
学際的なテーマへの慣れ
医学部入試で頻出する生命倫理、哲学、社会科学といった学術的な論説文を多く読み、その論理展開や使用される専門用語に慣れておく必要があります。特に、医学や倫理に関わる論文の読解は必須です。
読解速度と時間配分
文章量が多いため、90分間で全ての問題を解き切るためには、速読力と、正確な内容理解を両立させる訓練が必要です。時間配分を意識し、選択式問題で時間を稼ぎ、記述問題に時間を割く戦略が有効です。
昭和医科大学医学部の国語試験は、まるで時間制限のある高度な外科手術に例えられます。
出題される文章は、手術前に患者の複雑な病状(学際的なテーマ)を深く把握するための専門的な資料です。受験生は、限られた時間(90分)で、この長大な資料から最も重要な診断結果(核となる論理やキーワード)を迅速に見つけ出し、指定された細かなメス(字数制限)を使って、その核心を正確に切り出し(記述解答)、縫い合わせる(文章構成)ことが求められます。
速さと正確さ、そして専門知識の全てが成功の鍵となります。
Ⅱ期(2021年度資料より)
傾向と対策の概要
2021年度の医学部II期入試(国語)においては、現代の倫理的・哲学的議論を扱った専門的でアカデミックな文章が採用されていることが特徴です。
試験形式と構成
2021年度の医学部II期入試の試験構成は以下の通りです。
| 試験日時 | 令和3年3月6日 9:30 ~ 11:50 |
|---|---|
| 試験科目 | 英語、数学、国語 |
| 選択方式 | 国語、数学、または選択した1科目(受験票に表示)が配布 |
| 解答用紙 | 「国語(その1)」1枚、「国語(その2)」1枚 |
出題分野や出題テーマの傾向
2021年度の国語の出題テーマは、現代社会、倫理、科学哲学といったアカデミックかつ専門的な分野に集中している傾向が見られます。
大問I:生命・自由・倫理
- テーマ:「生の良いこと」(the goodness of life)や「生の才能」(giftedness of life)、そして「予期せぬものへの解放性」(openness to the unbidden) といった、人間の生や自由、倫理に関する哲学的な考察。
- 出典/背景:現代を代表する政治哲学者であるマイケル・J・サンデル、およびレオン・R・カスの著作や議論。生命倫理(バイオエシックス)や医療技術の進歩に伴う倫理的問題が背景にあります。
大問II:科学・価値・社会
- テーマ:科学と価値、社会の関係に関する議論。科学技術が人間や社会に及ぼす影響、科学的知識の限界、そして「価値自由」(value-freedom)の概念など。
- 内容:技術革新と社会の変容、知識と価値の関連性、および価値規範をめぐる議論。
特徴的な傾向
抽象度の高い文章と引用
現代社会が抱える倫理的課題や、科学哲学の根幹に関わる、抽象度が高く専門的な現代文が選ばれています。
難解な日本語の文章の中で、欧米の著名な学者の専門的な議論やキーワードが取り入れられており、背景知識を直接問う問題はないものの、現代の医療・生命倫理に関する議論に触れておく必要性を示唆しています。
対策(II期傾向からの分析)
- 高度な現代文読解力の養成:抽象的な概念や専門用語が多く含まれる文章を、時間内に正確に理解し、論旨を把握する訓練が必要です。
- 現代社会・生命倫理に関する知識:哲学、倫理学、社会学、特に生命倫理(バイオエシックス)の主要なテーマ(遺伝子編集、延命治療、尊厳、価値自由など)に関する知識を深めておくことが、文章理解の助けとなります。
- 語彙力の強化:文章中に登場する難解な専門用語や抽象的な概念(例:「予期せぬものへの解放性」、「価値自由」)を正確に理解できるよう、高度な語彙力を身につける必要があります。