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東京医科大学 一般選抜 出題傾向 化学

傾向と対策の概要

東京医科大学の化学は、基礎から標準レベルの問題が中心ですが、試験時間(2科目で120分)に対して問題量が非常に多いことが最大の特徴です。特に、煩雑で時間のかかる計算問題が多数出題される傾向があり、時間配分が合否に直結します。

大問1の正誤問題は毎年出題され、化学全範囲から正確な知識や用語の定義を問う内容となっており、曖昧な知識では対応できません。全体として、高い得点を取るためには、速く正確に解答する能力が求められます。

試験形式の安定性と構成

大問数

2018年度、2019年度、2020年度、2022年度、2024年度、2025年度はいずれも大問4題構成で出題されており、この形式は安定しています。

出題構成

大問は概ね以下の分野で構成されます。

  • 大問1:広範囲の知識を問う正誤問題(毎年出題)。
  • 理論化学/無機化学:中和滴定、溶解度、電気化学、気体の法則、熱化学などの計算中心の問題。
  • 有機化学/高分子・生化学:構造決定や反応に関する問題。

2025年度の構成

2025年度入試では、有機分野の問題が大問1の小問に含まれるのみで、大問としての出題がありませんでした。

試験形式の大きな変化

2021年度 一時的な大問数増加。前年までの4題から大問5題に増加しましたが、計算問題は比較的やりやすいものが多かったと評価されています。
2022年度 大問が4題に戻り、計算問題が少なくなり、内容的に易しくなったと評価されています。
2024年度 新課程や目新しいテーマの出題
  • エントロピー/反応の自発性:エンタルピー変化とエントロピー変化を用いて反応の進行を判断する設問(新課程を意識)。
  • 分配平衡のシミュレーション:分液ろうとを用いた抽出実験をテーマにした複雑な問題。
2025年度 塩/水混合物の状態図:塩化アンモニウム(NH4Cl)と水からなる混合物の相図に関する問題が出題され、受験生にとって見慣れない形式でした。

出題分野や出題テーマの傾向

理論化学・無機化学

  • 計算の煩雑さ:中和熱や溶解熱に関する問題では、溶解に伴う温度の低下や、水溶液の沸点上昇、凝固点降下など、細部に注意を要する煩雑な計算が頻出します(2019年)。
  • 電気化学とイオン化傾向:電池の起電力や電気分解、金属イオンの沈殿生成やイオン化傾向の順序決定が頻出しています(2018年、2020年)。
  • 特殊な平衡計算:
    • SO3濃度と密度:2021年度では、発煙硫酸の定義に基づき、三酸化硫黄量と硫酸の濃度や密度の関係をグラフから読み取り計算する問題が出題されました。
    • 重水(D2O):2022年度では、重水中の電離平衡や、重酢酸の塩の加水分解平衡を扱う問題が出題されました。
  • 気体/熱化学:気体の法則(ボイル・シャルルの法則など)と熱化学(燃焼熱)を組み合わせた問題で、計算がやや煩雑になる傾向があります(2020年、2023年)。

有機化学・生化学

  • 芳香族化合物の反応と構造決定:ニトロベンゼン、アニリン、フェノール、安息香酸といった芳香族化合物の多段階合成や反応の知識が必須です(2018年、2021年)。2024年度でも、C8H10Ozの芳香族化合物の構造決定が出題されています。
  • 異性体の網羅的理解:C5H12O(アルコールとエーテル)の異性体など、分子式から考えられる異性体構造をすべて書けるようにしておくことが求められます(2019年)。
  • 生体高分子:
    • ペプチドの構造決定:2022年度では、5つのアミノ酸からなるペプチドXの構造を決定する問題が出題。アミノ酸の分子量が小数第2位まで与えられ、計算が煩雑でした。
    • 糖の加水分解:2023年度では、マルトースの加水分解と、生成したグルコースの定量(フェーリング反応)を組み合わせた問題が出題されました。

特徴的な傾向

  • 広範で正確な知識を問う大問1(正誤問題):
    毎年必ず出題され、一つも正しい文がない場合(⑥)も解答に含まれます。問われる知識は、結晶構造の充填率、原子・イオン半径、電気分解の用語(不動態と不導体)、高分子の重合形式、食品成分、溶解度の定義など、非常に細かく正確な理解が要求されます。
  • 思考力と実験操作の理解:
    塩素の発生装置において、圧力低下時に容器Aの液体が流れ込むのを防ぐための「望ましくない現象」の防止策の考察(2019年)など、実験操作や装置の原理を問う目新しい問題が出されます。
  • 最新の話題や応用知識:
    2024年度の芳香族構造決定問題では、最終生成物とされるプラスチックの識別マーク(リサイクルマーク)を選択させる設問が含まれていました。

対策

  • 徹底した計算力の強化:合否を分ける最も重要な要素は計算の速さと正確さです。熱化学、化学平衡、滴定計算、濃度変換など、計算量が多くなりがちな分野を重点的に練習し、ミスなく処理する訓練が必要です。
  • 時間配分の確立:過去問演習を通じて、大問1の正誤問題を素早く処理し、計算問題や構造決定にどれだけの時間を割くか、戦略的な時間配分を確立することが必須です。計算が面倒な問題は後回しにする判断力も求められます。
  • 知識の網羅と定義の確認:正誤問題で出題される化学用語の定義、基本的な法則、例外的な知識(例:共有結合結晶の中で電気を導く黒鉛、不動態と不導体の違い)を曖昧さなく習得することが必要です。
  • 有機構造決定のパターン化:芳香族化合物やアルコール、エーテルの構造決定については、頻出する分子式の異性体構造をすべて書き出せるように練習し、実験情報から迅速に構造を特定できるようにしておくべきです。
  • 未知の設定への対応力:2025年度の相図や2024年度の分配平衡のように、初見のテーマが出題された場合でも、問題文の説明やグラフを丁寧に読み込み、基礎的な原理を応用して段階的に解き進める冷静さが必要です。

時間との戦いであるTMUの化学を攻略するためには、知識の正確性が「速さ」に直結することを意識し、日頃から基礎的な原理に基づく考察力を磨くことが重要です。これは、複雑な医学の診断や研究において、与えられた情報を正確かつ迅速に処理する能力が求められることと似ています。TMUの化学の試験は、基礎知識を土台に、計算という名の精密なオペレーションを、時間制限下で正確に行う力を試していると言えるでしょう。