金沢医科大学 一般選抜 出題傾向 物理
傾向と対策の概要
金沢医科大の物理は、2020年度以降、試験時間の大幅な短縮(120分から90分へ)が見られる中、出題形式の安定性を保ちつつ、難易度の高い計算問題や多段階の応用問題を課す傾向があります。特に、力学と電磁気学が頻出であり、一つの大問の中で複数の物理法則や現象を結びつけて考察させる問題構成が特徴的です。
対策としては、制限時間内に複雑な計算を正確に処理する能力と、教科書の基礎的な知識を超えて、現象をモデル化し、連続する過程を追う深い理解が求められます。
試験形式の安定性と構成
本学の物理試験は、他の科目と合わせて「2科目」として実施されています。
- 出題形式は、大問3~5題(初期)または大問2~4題(近年)の構成を取ることが多いです。
- 各設問で空欄補充形式により、数値、数式、語句、またはグラフを選択/マークさせる形式が安定しています。
- 解答においては、分数形の場合は既約分数、根号を含む場合は根号の中の自然数を最小にするといった厳密な指示が毎年継続して見られます。
試験形式の大きな変化
試験時間の短縮
2018年度および2019年度は、試験時間(2科目)が120分でしたが、2020年度以降、試験時間は90分に短縮されました。
この30分の時間短縮(25%減)は、受験生にとって時間的な制約が大幅に増したことを意味します。この変更にもかかわらず、出題される問題の深さや計算量は依然として高く保たれており、解答スピードがより重要になりました。
出題分野や出題テーマの傾向
出題分野は、物理の主要分野から幅広く出題されますが、特に以下の分野の出題頻度が高いです。
力学(Mechanics)
最頻出分野であり、毎年大問として出題されます。特に、衝突(弾性衝突)と運動量保存、単振動(ばねや振り子)、仕事とエネルギー保存則、慣性系や相対速度を伴う運動を組み合わせた問題が目立ちます。
- 2022年度:衝突、円運動、放物運動を繋げた複合問題。
- 2025年度:斜面を持つ台上の小球の運動(運動量保存と力学的エネルギー保存)という、複雑な設定の問題。
電磁気学(Electromagnetism)
応用的なテーマが多く出題されています。
- 2023年度:直流回路とコンデンサー(キルヒホッフの法則、電気量保存則、電位の計算)。
- その他:磁場中の荷電粒子の運動(サイクロトロンの原理)や、ホール効果に関する詳細な計算問題(抵抗率、電流、ローレンツ力、数密度)。
熱力学(Thermodynamics)
気体の状態変化(サイクル)における熱力学第一法則の適用や、比熱・融解熱を含むカロリー測定(熱量保存則)が頻繁に見られます。
- 2021年度:ストッパー付きシリンダー内の気体の状態変化と熱効率の導出。
波動(Waves)
干渉(水面波の干渉、節と腹の座標)や、うなり現象(単振り子の中点の振動)など、波の性質を詳細に問う問題が出題されます。
- 2025年度:光のドップラー効果を天文学的な文脈(連星の運動)に応用する問題。
特徴的な傾向
物理現象の多段階的な追跡
一つの問題の中で、自由落下、衝突、単振動、鉛直投げ上げ、円運動といった複数の物理現象が連続して発生する複雑なプロセスを、順を追って解答させることが特徴的です。これは、初期のミスが後の計算に影響する連鎖的な出題形式を意味します。
理論物理学的な背景を持つ出題
一般教養的な知識を問うQ1(2018年度)やQ4(2019年度)に見られるように、クォークの構成や放射線の単位など、現代物理や医学に関連するテーマを導入部として用いる傾向があります。
近似計算や有効数字の扱い
2022年度の単振動の周期の計算や、2025年度のドップラー効果の近似式(A)の使用など、問題文中で与えられた条件や近似を厳密に適用する能力が求められます。また、有効数字の指定(例: 2025年度の有効数字2桁)も細かく行われます。
対策
上記の傾向を踏まえ、合格に向けた対策は以下の点が重要となります。
- 時間管理と計算練習の徹底:
試験時間が90分と短いため、複雑な数値計算や文字式での導出を迅速かつ正確に行う訓練が不可欠です。途中式を省略せず、特に分数や平方根を含む表現の整理に慣れる必要があります。 - 力学と電磁気学の複合問題対策:
力学(単振動、衝突、運動量、エネルギー)と電磁気学(ホール効果、コンデンサー回路、磁場中の運動)は特に重点的に学習し、複数の物理法則を同時に適用する問題に慣れるべきです。 - 現象のモデル化と連鎖的な思考:
一つの現象が終了した後の状態が次の現象の初期条件となる、多段階の問題(例:衝突後の速さを初期値とする単振動)に対して、物理的な過程を正確にモデル化し、それを途中で途切れさせることなく最後まで追う練習が必要です。 - 原子物理・現代物理への準備:
クォーク、放射線の測定、連星系のドップラー効果など、他の分野に比べて出題頻度は低いものの、出題された際には基礎知識と計算能力を要するため、教科書や参考書で広く目を通しておくことが推奨されます。
物理の問題解決は、まるで探偵が複雑な事件を追うプロセスに似ています。
金沢医科大の入試では、一つの「事件」(大問)の中で、自由落下、衝突、振動、そして次の運動といった複数の「手がかり」(現象)が絡み合っています。対策とは、各手がかりを正確に分析し(基本法則の理解)、その繋がりを見抜き(法則の適用)、制限時間内に一気に謎を解き明かす(計算と論理展開)能力を磨くことに他なりません。時間短縮により、この「捜査スピード」の向上が求められています。