金沢医科大学 一般選抜 出題傾向 英語
傾向と対策の概要
金沢医科大学の英語試験は、60分という制限時間の中で、比較的長い複数の英文を読解し、多岐にわたる設問に対応する能力が求められます。出題テーマは、医学・健康・科学技術といった専門性の高い分野から、心理学、社会学、環境問題といった社会科学系の議論を扱うものまで幅広く、高度な語彙力、速読力、そして論理的な思考力が合否を分ける主要な要素となります。
試験形式の安定性と構成
試験形式は、2018年度から最新年度(2025年度)まで、前期・後期ともに一貫して「60分」であり、この点での大きな変化は見られません。
主要な構成要素は以下の通りです。
- 長文読解: 複数の英文(通常3~4題)が出題され、それぞれに付随する設問に解答します。
- 設問内容:
- 内容理解(主題、主張、特定の情報の一致/不一致など)。
- 語彙(類義語、文脈上の意味)。
- 文法・語法・空所補充(文章の論理的接続、適切な表現の選択など)。
- 指示語・代名詞の特定。
- アクセント・発音。
試験形式の大きな変化
試験形式の根幹(時間、長文中心)に大きな変更はありませんが、近年は以下のような特徴的な出題が継続しています。
- 図表・グラフの活用: 英文中で提示された図や表、グラフを参照し、そのデータに基づいた記述の正誤を判断したり、設問に答えたりする形式が見られます。例えば、2022年度前期では、産業別の雇用状況に関するデータ、2024年度前期では鉱山・発電所に関する世論調査結果、2025年度後期ではソーシャルメディアの利用状況を示すグラフが出題されています。
- 段落構成・論理展開の理解: 段落の並び替え(例:2024年度後期)や、特定の文を挿入するのに最適な位置を特定する問題、各段落の要旨を対応させる問題など、文章全体の論理的構造を問う設問が定期的に出題されています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは、医学・健康に関する話題を軸に、広範な学術分野にまたがっています。
1. 医学・健康・身体・加齢に関するテーマ(コアテーマ)
医療や身体の仕組み、健康増進、加齢に関するテーマは頻出です。
- 健康と生活習慣: 栄養素と身体の健康、電子たばこの安全性、慢性疾患と食事/栄養、ストレス対処戦略。
- 心理・心身相関: 心が内臓に及ぼす影響、年齢と健康、平均寿命の伸び。
- 医療技術・制度: デジタル機器が医療にもたらす変革(オンライン診察、ウェアラブルデバイスなど)、普遍的な医療システム。
2. 心理学・社会科学に関するテーマ
人間の認知、行動、社会的な相互作用に関するテーマが、論理的考察の対象として好まれます。
- 認知・心理: 認知的負荷/ワーキングメモリー、幼児の心の理論、独り言によるパフォーマンス向上、記憶と脳科学(神経可塑性)。
- 行動・発達: 個性の発達/若者の精神的健康と親の役割、同調行動(アッシュの実験)、習慣の形成と行動。
- 論理・統計: 相関関係と因果関係の区別(統計学的な思考)、リサーチと科学的リサーチの違い。
- 社会と文化: 寿命の性差、社会学/社会学的想像力、文化的特徴が企業の業績に与える影響、ソーシャルメディアの利用法/プライバシー。
3. 科学技術・環境・経済に関するテーマ
現代社会の課題や技術革新に関するテーマも多く見られます。
- 技術・情報: 移転学習とAI、携帯電話の依存、現代版備忘録/セカンドブレイン。
- 環境・社会問題: 砂嵐、環境決定論と人間社会の相互作用、クリーンエネルギーの現状と展望、廃棄物の少ない生活、鉱山・発電所の支持に関する世論調査。
- 仕事・経済: 日本企業の戦略(ターゲットコスト)、在宅勤務の功罪、産業と雇用の変化、年齢と健康がお金の有用性に与える影響。
特徴的な傾向
- 医学・心理学の融合: 身体的な健康(長寿、慢性疾患)だけでなく、認知(ワーキングメモリー)、学習(感受期)、行動変容(習慣)といった心理学的かつ医学研究に関連するテーマが頻繁に選ばれています。
- 実生活と学問の結びつき: 単なる理論の紹介に留まらず、具体的な実験(例:アッシュの同調実験、ベルの地下鉄でのバイオリン演奏)や日常的な事象(例:携帯電話の依存、在宅勤務、野心的なメッセージ)を題材に、論理的・科学的な考察を求める傾向があります。
- 議論の精緻さの要求: 「相関関係は因果関係を含意しない」という概念や、「嘘と欺瞞の違い」の曖昧さなど、抽象的な概念の定義や、誤解されやすい論点を深く掘り下げた文章が多く、読解の際には筆者の緻密な主張を追う必要があります。
対策
金沢医科大学の英語で高得点を取るためには、以下の対策が有効です。
1. 専門分野の英語に慣れる
- 背景知識の確保: 過去の出題テーマ(特に心理学、社会学、生命科学、医療経済)に関連する学術的な英文記事や洋書(科学ジャーナル、医学雑誌の一般向け記事など)を積極的に読み、専門用語や議論の展開に慣れてください。
- 読解スピードの向上: 60分で多量の英文を処理するため、速読力を鍛える必要があります。意味のかたまり(チャンク)で読み進め、返り読みを避ける訓練が有効です。
2. 論理構造と設問形式への対応
- 論理接続詞・指示語の徹底理解: 長文読解では、文章全体の論理的展開(譲歩、対比、因果関係)を正確に把握することが極めて重要です。設問の多くが文章の論理的関係性を問うため、接続詞や指示語(them, their, it など)が何を指しているかを文脈から瞬時に特定する練習を重ねてください。
- 図表・グラフの読み取り訓練: 英文と図表の情報をリンクさせ、設問に答える形式に慣れてください。これは、論理的思考力と情報処理能力を同時に問うものです。
3. 語彙・文法事項の総点検
- 高度な語彙の習得: 専門的かつアカデミックな文章で用いられる、難度の高い語彙(例:cultivate, tremendous, encompass)を確実に習得してください。類義語を選ぶ問題も多いため、単語の意味の幅やニュアンスを理解しておくことが重要です。
- アクセント・発音対策: アクセントや発音に関する知識が問われるため、過去問を通じて頻出する法則や例外的な単語を確認しておきましょう。
この試験は、単なる英語力だけでなく、多角的な視点から物事を分析し、論理的に理解しようとする姿勢を評価していると言えるでしょう。これは、医師として必要な学習意欲と知的探求心に対応する訓練であると捉えられます。
(類推)この試験で求められる能力は、例えるならば、複雑な機械の設計図を読み解くエンジニアの仕事に似ています。設計図(長文)は専門用語(語彙)で書かれており、限られた時間(60分)内に、図表(グラフ)や注釈(設問)と照らし合わせながら、その部品一つ一つ(段落の主張)が全体の中でどのような役割(論理構造)を果たしているのかを正確に把握し、最終的な目標(主題や主張)を達成しなければなりません。