順天堂大学 一般選抜 出題傾向 物理
傾向と対策の概要
順天堂大学医学部の物理は、例年大問2題の出題形式が継続しています。難易度は概ね標準的とされています。
しかし、物理・化学の2科目で120分という試験時間設定(1科目あたり60分目安)に対して、問題数が多く、計算量も多いため、全問に余裕をもって取り組むのは難しいという点が共通の傾向です。出題形式や分野に大きな偏りはなく、基礎知識と論理的思考力の両方を問う総合的な物理の力をみる良問が出題されています。
試験形式の安定性と構成
- 安定性:2018年度以降、形式は極めて安定しており、大問2題構成が継続しています。
- 時間:2科目(物理・化学)で120分です。
- 構成要素:
- 大問I(または第1問):複数の小問からなるマークシート形式が主流です。
- 大問II(または第2問/第3問に相当する後半の記述):考え方と途中の式を解答用紙の所定の欄に記す記述式がほぼ毎年出題されています。
試験形式の大きな変化
出題分野や解答形式に偏りがなく、大きな形式変更は観察されていません。一貫して基礎知識と論理的思考力を試す標準的な問題が出題されています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題分野は幅広く、特定の分野に偏りはありませんが、力学、電磁気学、熱力学、波動(光学、原子物理を含む)がバランスよく出題されています。
| 分野 | 主な出題テーマ (2018-2025) | 該当年度の例 |
|---|---|---|
| 力学 | 剛体のつり合い(棒、台)、単振動(ばね、おもり、近似計算)、円運動/人工衛星/ケプラーの法則、運動量保存則/衝突、非慣性系 | 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024, 2025 |
| 電磁気学 | 誘導起電力(磁場中を動くコイル/導体棒)、交流回路(RLC、相互誘導)、荷電粒子の運動(電場・磁場中)、静電場(点電荷、電場、電位、誘電体) | 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024, 2025 |
| 熱力学 | 理想気体の状態変化(定積、定圧、断熱)、熱気球/浮力、気体分子運動論(ピストンとの衝突、圧力)、石けん膜の熱力学 (特異テーマ)、熱機関の効率 | 2018, 2019, 2020, 2021, 2022, 2023, 2024, 2025 |
| 波動 | 光の干渉(ニュートンリング、くさび形、誘電体)、音波/ドップラー効果/うなり、気柱の共鳴/定常波、回折格子 | 2018, 2019, 2021, 2022, 2023, 2024, 2025 |
| 原子物理 | 原子構造/エネルギー保存則、光電効果、物質波(ド・ブロイ波)、放射性崩壊(炭素年代測定)、核反応(質量欠損) | 2018, 2019, 2020, 2022, 2023, 2024 |
特徴的な傾向
- 難解な誘導問題:見た目が難しそうなテーマ(例:一様でない磁場中のコイルの落下、石けん膜の熱力学など)でも、問題文に丁寧な誘導(ヒントとなる途中式や考え方)が含まれていることが多いです。誘導の流れに乗ることが完答の鍵となります。
- 計算力の要求:近似計算(例:単振動の近似、断熱変化の近似)や、複雑な式の代入・整理をミスなく行う能力が求められます。特に後半の記述問題では、煩雑な計算処理が要求される傾向があります。
- 非標準的な題材:教科書では深く扱われない、あるいは設定が異なる問題が出題されます。例として、熱力学における石けん膜の内部エネルギー変化や、気体分子運動論における反発係数や分子の衝突を細かく扱う問題などが挙げられます。
- 電磁気学・波動の奥深いテーマ:RLC回路の交流解析(並列回路含む)、自己誘導と相互誘導を組み合わせた回路、ケプラーの法則や楕円軌道の詳細な解析など、物理法則を深く理解していないと対処できない問題が含まれます。
対策
- 基礎の徹底と迅速な処理:全ての問題は基礎知識や論理的思考力を見る標準的な問題であるため、基礎的な法則(力学の運動方程式、熱力学第一法則、電磁誘導など)の立式を徹底し、手際よく解き進める練習が必要です。
- 誘導を利用した応用力の養成:難しそうな問題でも、出題者が用意した誘導に乗り、確実にステップを踏んで解き進める訓練を積んでください。これは、未知の現象に対する応用力と冷静さの訓練にもなります。
- 記述式の練習と近似への習熟:大問IIで求められる記述形式では、結果だけでなく考え方と途中式を示す必要があります。また、近似式(二項定理の近似など)を正確に適用する練習や、煩雑な計算を最後までミスなくやり遂げる計算習慣を身につけることが不可欠です。
- 時間配分のシミュレーション:2科目120分という制約の中で、物理に割り当てる時間を決め、その時間内でどこまで得点できるか、過去問を通してシミュレーションすることが非常に重要です。捨て問の見極めも必要となります。
例え話
順天堂大学医学部の物理試験は、まるで「時間制限のある複雑な設計図作成」のようなものです。個々の部品(基礎知識)は標準的なものですが、部品を組み合わせて巨大で複雑な機械(難問)を完成させる際、設計図(問題文の誘導)に沿って、かつ精密な測定と計算(代数処理)を時間内に完了しなければなりません。一つでも計算ミスや工程の誤りがあると、全体の設計が崩れてしまいます。したがって、基本的なツール(公式)を完全に使いこなすだけでなく、複雑な構造全体を把握し、冷静に工程管理(時間配分)を行う能力が求められます。