北里大学 一般選抜 出題傾向 物理
傾向と対策の概要
北里大学医学部の物理入試は、提供された2018年度から2025年度までの期間において、試験形式の安定性と出題内容の広範さ、計算の複雑性が大きな特徴です。
力学、電磁気学、熱力学、波動の主要な4分野からバランス良く出題され、特に複数の分野を融合した問題や、複雑な条件設定に基づく詳細な計算を要求する問題が多く見られます。解答は全てマーク式の空所補充形式ですが、最終的な答えは複雑な変数や定数を含む代数式となる場合が多く、高い計算処理能力と正確性が求められます。
合格のためには、基礎知識の習得に加え、応用的な問題設定に対して、エネルギー保存則や運動量保存則、熱力学第一法則といった基本法則を正確に適用し、最後まで代数計算をやり切る演習が必要です。
試験形式の安定性と構成
本学の物理試験形式は、2018年度から2025年度にかけて極めて安定しています。
- 時間と科目: 物理は他の1科目(資料から判断すると化学または生物)と合わせて100分で実施されます。
- 大問構成: 大問は例年I、II、IIIの3問構成です。
- 設問形式: 各大問は複数の小問(例年4問〜7問程度)に分かれており、各小問には1つまたは複数の空所補充(マーク式)が設けられています。
試験形式の大きな変化
2018年度から2025年度の資料において、大問数や解答形式といった試験形式に大きな変更は見られません。一貫して、物理の全範囲からバランス良く出題する空所補充形式が採用されています。
出題分野や出題テーマの傾向
主要4分野は毎年欠かさず出題されており、特定の分野に偏りはありません。
力学(Mechanics)
- 剛体の静力学: 棒や板のつりあい、重心の計算、摩擦力を伴うモーメントのつりあいに関する問題が頻出です(2018, 2019, 2021, 2022, 2023, 2025)。特に、重心位置の計算(2018, 2021, 2024)や、複数の物体が関わる力のつりあい(2025)が問われています。
- 運動量・エネルギー保存と衝突: 弾性衝突や非弾性衝突、およびその前後の運動量や力学的エネルギーの解析が頻繁に出題されます(2019, 2020, 2021, 2022, 2024)。
- 円運動・単振動: 円錐面上の円運動(2018)や、ばねを用いた単振動が慣性力や衝突と組み合わされるパターン(2019, 2020, 2022, 2025)が多く見られます。
- 放物運動と相対運動: 水平投射や衝突を伴う放物運動(2021, 2023, 2024)や、台上の物体との相対運動(2018, 2019, 2021)など、複雑な運動解析が要求されます。
電磁気学(Electromagnetism)
- 直流回路とコンデンサー: 定常状態でのコンデンサーの電荷・エネルギー計算、抵抗回路の解析(2018, 2021, 2022, 2024)や、ホイートストンブリッジ回路(2022)、複雑な立体抵抗体(2024)が出題されています。
- 交流回路と電気振動: LCRを含む交流回路の解析や、LC回路における電気振動(2019, 2021)が見られます。
- 電磁誘導とローレンツ力: 磁場内を運動する導体棒に生じる誘導起電力やローレンツ力に関する問題が多く、斜面上の運動(2023)や、一定速運動(2021)、磁場内のコイル通過(2018)など、力学と複合した問題が多いです。
- 静電気学: 金属球の電場・電位、特に接地の問題(2020)や、荷電粒子の運動(2025)が出題されています。
熱力学(Thermodynamics)
- 理想気体の状態変化と仕事: ピストンが関わる状態変化(定圧、断熱など)における圧力、体積、温度、仕事、内部エネルギーの変化を求める問題が核となります(2018, 2019, 2021, 2022, 2023)。
- 複合条件: ばねや重力、大気圧といった機械的な要因が加わるピストン問題が定番です(2018, 2019, 2023)。また、気体の混合(2021, 2024, 2025)や、熱量保存則(2023)も出題されています。
- ポアソンの法則(断熱変化): PVγ = 一定 を利用する問題設定(2020, 2023)が見られます。
波動(Waves)
- 干渉と光路長: 薄膜干渉(2018, 2022)や、全反射を利用した光路長の計算(2020)など、光の波動性と幾何光学を組み合わせた問題が見られます。
- 音波とドップラー効果: ドップラー効果やうなり(2021, 2024, 2025)、管の固有振動(2023)といった音の波動に関する問題も定着しています。
特徴的な傾向
- 複数の物理現象の融合: 力学と熱力学(ピストンとばね)、力学と波動(衝突と単振動)、電磁気学と力学(磁場内運動)のように、異なる分野の法則を同時に適用させる問題が非常に多いです。
- 複雑な計算と代数的な解答形式: 空所補充の選択肢は具体的な数値ではなく、与えられた変数(m, L, k, μ', g など)を用いた代数式や、複雑な分数、平方根を含む式となっています。解答に至るまでの途中の計算過程が長く、計算ミスが許されない構造です。
- 詳細な運動の追跡: 力学では、慣性力を考慮した台車上の単振動(2025)や、床との衝突による運動エネルギーの損失を伴う放物運動(2021)など、運動の開始から終了までを段階的に追跡し、計算させる問題が目立ちます。
対策
北里大学医学部の物理で高得点を得るためには、以下の対策が有効です。
- 徹底的な代数計算の練習: 最終的な解答が代数式になる問題に慣れ、基本法則からの立式→変数を使った代入・整理→最終的な代数式を導出するまでのプロセスを高速かつ正確に行う練習が必要です。特に、熱力学(状態変化)や力学(相対運動、衝突)でこの能力が要求されます。
- 融合問題の優先的な演習: ピストン・ばね・ガス、衝突・ばね振り子、電磁誘導・力学の複合など、複数の分野を統合した問題を重点的に学習し、どの物理法則をどのタイミングで適用するかを訓練することが重要です。
- 非慣性系・慣性力の理解: 加速する台車上の運動(2025)や、円運動の分析(2018, 2020)において、慣性力や遠心力を適切に扱う訓練が必要です。
- 時間配分の最適化: 2科目100分という制約の中で、計算量の多い物理を解ききるには、迅速な判断と正確な計算が不可欠です。過去問を通じて、計算に時間をかけすぎないよう、時間配分を意識した演習を積むべきです。
例:計算の複雑性の比喩
北里医学部の物理で要求される計算能力は、まるで複数の歯車が複雑に噛み合う精密機械のようです。基礎的な物理法則という土台(フレーム)の上に、与えられた変数(m, L, g などの部品)を使い、途中経過を飛ばさずに正確に組み上げ(代数計算)、最終的に要求された形式(複雑な代数式)で出力しなければ、正しい解という名の部品が完成しません。一つの工程でもミスをしたり、途中で省略しようとすると、全体の機構が崩壊してしまうため、緻密さと粘り強さが求められます。