杏林大学 一般選抜 出題傾向 英語
傾向と対策の概要
杏林大学医学部の英語試験は、試験時間60分で、高度な語学力と論理的思考力を要求する構成が特徴です。全体として、文法・語彙・熟語の知識を問う基礎的な設問(I・II)と、読解力および論理構成力を問う応用的な設問(III・IV)の組み合わせで構成されています。
特に読解問題では、医療、倫理、科学、社会心理学といった専門的かつ学際的なテーマが頻出しており、単なる英語力だけでなく、高度なアカデミックな英文に慣れていることが重要です。試験形式には安定した部分がある一方で、2020年度頃から文法・構造問題の形式に大きな変化が見られ、論理的な文章構成力を問う傾向が強まっています。
試験形式の安定性と構成
試験形式は、2018年度から最新年度まで、以下の主要なセクションと制限時間において安定しています。
- 試験時間: 60分で一貫しています。
- 大問構成: 大きくI、II、III、IVの4部構成です。
- I (空所補充): 文法、語彙、熟語の知識を問う選択式問題です。
- II (会話文): 会話の空所補充や語句整序を通じて、口語表現や文法を問う問題です。
- IV (長文読解): 専門性の高い英文が2題出題され、内容理解、主題、推論などを問う設問で構成されます。
試験形式の大きな変化
最も顕著な変化は大問IIIの形式に見られます。この変化は、文法的な正確さだけでなく、文章の論理的な流れや構成を理解する能力を重視する傾向を示しています。
| 年度 | 出題形式・特徴 |
|---|---|
| 2018~2019年度 | 主に誤り訂正問題(下線部から誤った箇所を選ぶ形式)として出題。 |
| 2020年度以降 | 誤り訂正問題がなくなり、語句整序や文章(段落)整序、論理的配列を問う問題が中心。 |
出題分野や出題テーマの傾向
長文読解(大問IV)のテーマは、医学部入試に特有の高度な内容を扱っており、主に以下の分野に分類されます。
医療・生命科学・倫理
- 医師の資質と患者との関係: 患者の苦しみを認識し、伝える能力としての「共感(Empathy)」や「思いやり(Compassion)」の重要性。
- 臨床現場の心理: 医師のキャリア選択(天職 vs. ライフスタイル)や、医師の感情が診断エラーに与える影響(アンカリング・帰属バイアスなど)、男女医師間の治療結果の違いなど、倫理的・心理的側面に焦点を当てています。
- 身体と病気: 痛みの主観性や文化的な表現の違い、COVID-19ワクチンと心筋炎のリスクに関する科学的な議論など。
人文科学・社会心理学
- 人間の認知と行動: 科学的知識の成り立ちと観察の限界、人間の言語と動物のコミュニケーションの比較、心理現象(TOT状態:のどまで出かかっているのに思い出せない現象)の解明、マルチタスクの非効率性。
- 仕事と幸福: 人生における「意味(Meaning)」や「自己実現(Self-actualization)」が仕事の満足度や幸福に与える影響。
- 組織論・社会課題: チームにおける「心理的安全性」が創造性と革新性を促進するメカニズム、新興市場におけるビジネスの課題(サバイバルの罠)。
特徴的な傾向
- 医科大学ならではの専門テーマの深さ: 読解テーマが単なる科学的事実の紹介に留まらず、医師や医療従事者の役割、倫理的ジレンマ、人間の心理的側面に深く踏み込んでおり、受験生に多角的な思考を求めています。
- 高度な語彙・熟語知識の要求: 大問Iの空所補充では、indicate、turn down、beware of、on no account、call for など、文脈に応じた正確な単語・熟語の知識が求められます。
- 論理構造の把握の重視: 大問IIIの文章整序では、代名詞、接続詞、新情報・旧情報の流れを正確に追う、高いレベルの論理的読解力が必須となっています。
対策
限られた60分という時間内で、専門性の高い長文2題を含む全ての設問に正確に対応するためには、以下の対策が有効です。
医療系・科学系の英文読解の強化
医学関連の専門知識(特に倫理、心理学、社会科学との関連)を持つ英文に慣れ、専門用語や背景知識を蓄積することで、読解速度と精度を向上させます。
文法・語彙・熟語の徹底的な習得
大問IとIIで安定して得点するため、基本文法事項に加え、熟語、慣用表現、そして難易度の高いアカデミックな語彙を網羅的に学習します。特に倒置構文や仮定法など、文法的に複雑な構造にも慣れておく必要があります。
論理的思考力・文章構成力の訓練
大問IIIの文章整序問題に対応するため、接続詞や指示語に意識を集中し、文と文、段落と段落の論理的なつながりを判断する訓練を重ねます。英文がどのように論理的に展開されているかを意識して精読することが重要です。
時間配分のシミュレーション
例えによる理解の補強
杏林大学医学部の英語試験は、単に英語という道具を使えるかを測るだけでなく、「医師という職業に不可欠な、高度な専門性と、複雑な問題に対する論理的・倫理的な洞察力」を試す「総合的な医療適性検査」に似ています。
まるで、基本的なパーツ(文法・語彙)の組み立て方を知っているだけでなく、それらのパーツを使って、複雑な医療倫理という名の難解な機械(専門的な長文)を60分以内に診断し、修理できるか(正確な読解と解答)を問われているようなものです。