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川崎医科大学 一般選抜 出題傾向 化学

傾向と対策の概要

川崎医科大学の化学は、基礎から応用まで広範囲な知識を要求し、特に理論化学における複雑で正確な計算処理に重点が置かれています。解答形式は一貫してマーク式と数値記入式(右詰め)が採用されており、迅速かつ正確な処理能力が合否を分けます。

出題テーマには、医科大学特有の生命科学や医療分野に関連する有機化合物や高分子、生体分子(アミノ酸、酵素、ホルモン)が頻出する傾向が見られます。

試験形式の安定性と構成

安定性

2018年度から2025年度まで、試験形式は極めて安定しています。

  • 科目・時間: 化学は他の1科目と合わせて120分で実施されます。
  • 解答形式: すべての問題が、選択肢の番号・符号をマークする形式、もしくは計算結果の数値を右詰めでマークする形式(数値記入式)で解答されます。この数値記入式は、解答枠の桁数より少ない場合は空欄を $\Theta$ で埋めるという細則まで一貫しています。
  • 提供される定数: 原子量、アボガドロ定数、ファラデー定数、気体定数、水のイオン積($K_w$)、特定の対数値($\log_{10}2, \log_{10}3, \log_{10}7$)が毎年提供されています。

構成

試験は通常、大問3題で構成されています。

  • 大問1: 物質の構造、性質、物質量、溶液の性質、酸塩基平衡、酸化還元反応など、高校化学の基礎知識や原理を問う小問集合が中心です。
  • 大問2: 理論化学が中心であり、気体、熱化学、溶液の性質(浸透圧、凝固点降下)、化学平衡、電気化学など、計算を要する問題が多く含まれます。
  • 大問3: 有機化学、高分子化学、生体分子の分野に特化した問題が出題されます。

試験形式の大きな変化

前述の通り、試験形式(大問数、解答形式、試験時間)に大きな構造上の変化は見られませんでした。ただし、内容面では、2020年度の試験において、2019年5月20日に発効した物質量(モル)の定義改定に関する知識を問う出題があり、最新の科学知識への対応が求められる一面が示されました。

出題分野や出題テーマの傾向

全範囲からバランスよく出題されますが、特に以下の分野とテーマが頻出しています。

理論化学・計算問題

計算処理の複雑さと要求される精度が高いのが特徴です。

  • 溶液の性質: 浸透圧 ($\Pi$) は、電解質($\mathrm{NaCl}$ など)と非電解質(グルコースなど)の粒子数の違いを考慮する問題(ファントホッフの法則)が頻出します。凝固点降下や沸点上昇の計算、特に会合度を考慮した計算も出題されています。
  • 化学平衡・酸塩基: 弱酸/弱塩基の電離平衡($K_a, K_b$ の式利用)や $\mathrm{pH}$ 計算は必須です。混合塩溶液の液性(酸性塩、正塩の加水分解)を問う問題や、混合水溶液の滴定曲線($\mathrm{NaOH}$ と $\mathrm{Na_2CO_3}$ の混合液)における2段階の中和反応と指示薬の選択が頻出します。
  • 電気化学: 鉛蓄電池や酸化銀電池の放電に伴う質量変化の計算や、電気分解(アルミニウム製錬、析出量計算)の原理が問われています。
  • 熱化学: 生成熱、燃焼熱をヘスの法則を用いて求める問題や、格子エネルギー(ボルン・ハーバーサイクル)の知識が問われています。

無機化学

  • 定性分析: 両性元素($\mathrm{Zn}^{2+}, \mathrm{Al}^{3+}$)や、錯イオンを形成するイオン ($\mathrm{Ag}^{+}, \mathrm{Cu}^{2+}$) の $\mathrm{NaOH}$ 水溶液やアンモニア水に対する挙動が頻出します。
  • 物質の性質: ハロゲンの性質(酸化力、酸の強弱)や、金属のイオン化傾向と反応性、合金の組成など、広範囲の知識が問われます。

有機化学・高分子化学

  • 構造決定・反応: エステルの加水分解と生成物(アルコール、カルボン酸)の性質(還元性、ヨードホルム反応)から元の構造を特定する問題。アルコールの酸化や、アセチレンの反応も重要です。
  • 芳香族化合物: 置換反応(ニトロ化、還元)、酸塩基の性質を利用した混合物の分離操作(フェノール、安息香酸、アニリン、ニトロベンゼン)が頻出します。
  • 生体分子・高分子:
    • アミノ酸とタンパク質: アミノ酸の構造($\alpha$-アミノ酸の定義、鏡像異性体の有無)、等電点の計算、水溶液中の存在比、タンパク質の二次構造($\alpha$-ヘリックス、$\beta$-シート)における水素結合の役割が問われます。
    • 酵素と代謝: 酵素の基質特異性、最適 $\mathrm{pH}$、熱による変性、ホルモン(アドレナリン、セロトニン)の合成経路など、医学に関連するテーマが重要です。
    • 高分子計算: ナイロン66の分子量とアミド結合の数の計算、陽イオン交換樹脂の交換容量計算など、計算を伴う問題も出題されます。
    • 界面活性剤: 陰イオン、陽イオン界面活性剤の構造と両親媒性、ミセルの形成(会合コロイド)に関する知識。

特徴的な傾向

  • 高度な計算力と数値精度: 弱酸の平衡、溶液の浸透圧(電離度や会合度)、熱化学、電気化学など、複数のステップを踏む複雑な計算問題が多く、正確な数値処理能力が求められます。また、解答形式が数値記入式(右詰め)であるため、計算ミスや記入ミスがそのまま失点につながります。
  • 医学・生物学との融合テーマ: アミノ酸、酵素、ホルモン、医薬品(アセチルサリチル酸)、生体内の緩衝作用など、化学を医学的な文脈で理解しているかを確認する問題が非常に多いです。
  • 定性分析と分離操作の重視: 無機化学では金属イオンの定性分析、有機化学では芳香族化合物の酸塩基性を利用した分離・抽出プロセスの詳細な知識が毎年問われています。
  • 基礎事項の確認(大問1): 大問1では、原子の基本構造、周期表、物質の分類(元素/単体、純物質/混合物)、実験器具の正しい使用法など、基礎の定着度を測る問題が安定して出題されています。
注意:数値記入式では、解答枠の桁数より少ない場合は空欄を $\Theta$ で埋めるなどの独自のルールが存在します。計算ミスだけでなく、記入ミスも致命的となるため、過去問を用いた十分な練習が必要です。

対策

テーマ 具体的な対策 根拠となる傾向
計算問題の習熟 溶液(浸透圧、凝固点降下)、熱化学、電気化学、化学平衡の計算問題を数多くこなし、スピードと精度を上げる。特に会合度や複雑な滴定計算など、難易度の高い応用問題にも慣れる。 計算問題の比重が最も高い。
医科大固有テーマの強化 アミノ酸、タンパク質、酵素、ホルモンに関する構造(側鎖の性質、等電点、不斉炭素)、反応、生体内での役割、代謝経路を重点的に学習する。 医学関連テーマの出題が定着している。
有機化学(構造決定・分離) エステル化、加水分解、酸化反応(アルコール、アルケン)、ヨードホルム反応、銀鏡反応など、重要試薬による反応と構造の変化を完全に把握する。酸性度・塩基性度を利用した芳香族化合物の分離操作を完全に理解し、図示できるようにする。 構造決定と分離操作が頻出する。
無機化学(定性分析) $\mathrm{Ag}^{+}, \mathrm{Cu}^{2+}, \mathrm{Zn}^{2+}, \mathrm{Al}^{3+}$ など、主要な金属イオンについて、$\mathrm{NaOH}$ 水溶液とアンモニア水を少量/過剰に加えた際の沈殿生成・溶解反応をパターンとして覚える。 定性分析の出題が多い。
解答形式への慣れ 過去問を用いて、数値記入式の右詰めルール(特に $\Theta$ の使い方)に慣れる。計算結果を有効数字や指定された桁数で正確に記入する訓練を行う。 独特の解答形式が採用されており、正確な記入が必須。