関西医科大学 一般選抜 出題傾向 生物
傾向と対策の概要
関西医科大学の生物の入試は、全体的に標準的からやや発展的な難易度で推移しています。特に知識問題ではかなり細かい内容まで問われるため、曖昧な知識では失点がかさむ傾向にあります。
試験時間(1科目あたり約60分)に対して要求される問題のレベルは低くなく、計算問題や高度な考察問題が多く含まれるため、解答に時間を要します。2021年度は比較的取り組みやすい難易度への易化が見られましたが、2024年度、2025年度は実験考察や複雑な計算問題が増え、難度が再び上昇しています。 論述問題の出題は少ないですが、2022年以降は基本的な内容の論述問題が再び見られています。
試験形式の安定性と構成
試験形式は、小問集合とテーマ別大問で構成されていますが、大問数に変化が見られます。
| 年度 | 大問数 | 構成の特徴 |
|---|---|---|
| 2018/2019 | 5題 | I: 小問集合、II~V: テーマ別(小問集合は10問) |
| 2020年以降 | 4題構成 | 大問構成が4題に集約されました。 |
注意点:「正しいもの、または誤りのものをすべて選ぶ」形式の設問が多いのが大きな特徴です。この形式では、正解に至るには正確な知識と判断力が不可欠であり、特に全問において過不足なく選択する必要があるため、得点しづらい傾向があります。
試験形式の大きな変化
最も大きな変化は、2020年度に大問数が5題から4題に減少した点です。これにより、1題あたりの分量が増加し、特に大問Ⅲのように問題の文章量・設問数が多い、高度な思考力を要する出題が見られるようになりました。 また、論述問題は2020年、2021年には出題されませんでしたが、2022年度に3年ぶりに基本的な内容で再開しました。
出題分野や出題テーマの傾向
出題は生物の幅広い分野にわたりますが、特に遺伝情報、代謝/エネルギー、発生/調節、および医学部入試に特徴的な人体生理(特に循環器、免疫、内分泌)の分野が頻出しています。
遺伝・分子生物学
- PCR法と制限酵素地図。
- 遺伝情報の発現(転写、翻訳、スプライシング)や遺伝子の再構成。
- DNAの構造や複製(メセルソンとスタール、半保存的複製)。
- 原核生物の遺伝子発現(ラクトースオペロンなど)。
- 集団遺伝(ハーディ・ワインベルグの法則の適用)。
細胞・代謝・エネルギー
- 呼吸(解糖系、クエン酸回路、酸化的リン酸化)に関する詳細な知識や計算問題。グルコース1分子あたりのATP合成数などの定量的な理解が問われます。
- 細胞分画法と細胞小器官の機能。
- 酵母の特殊な代謝(乳酸発酵、アルコール発酵、呼吸の融合)。
発生・調節・生理
- 動物発生(ABCモデル、ショウジョウバエ、ウニ、カエル)の基本原理。特に形成体や誘導の概念。
- 心臓の拍動、自律神経による調節(レーウィの実験など)。左心室の容積と内圧の関係を示すグラフ問題。
- 免疫(体液性免疫、細胞性免疫、自然免疫/獲得免疫の特徴)や抗体の構造。遺伝子再構成の知識も問われます。
- 内分泌・恒常性(血糖値調節、腎臓の濃縮率など)。
- 植物ホルモン(光周性、重力屈性、環境応答)や花芽形成に関する考察問題。
生態・環境
- 生態系の物質生産(現存量、純生産量、効率の計算)がテーマとして大問で出題されました(2020)。
特徴的な傾向
- 計算問題の比重が高い:PCR増幅分子数、代謝効率、細胞計数、集団遺伝、生理学(心拍出量)、化学(プライマー濃度)など、数値を用いた計算や定量的考察を要求する問題が頻繁に出題されています。2025年度には複雑な指数計算や単位換算も出題されました。
- 実験考察とデータ読解の重視:単なる知識の確認だけでなく、実験データ(特にグラフや電気泳動パターン)を読み解き、論理的に考察させる問題が多いです。特に2024年度はカイコガのホルモン実験や膵臓の発生メカニズムなど、初見に近いテーマに対する深い考察力が求められました。
- 知識の細かさと広範性:小問集合(I)では、しばしば教科書や資料集の隅に記載されているような詳細な知識や、細胞小器官の英語表記(2023)など、幅広い知識の正確な定着度を試す傾向があります。
- 正誤問題の解答条件の厳しさ:「正しいものをすべて選ぶ」「誤っているものをすべて選ぶ」形式は、一つでも見落とすと失点につながるため、知識の確信度が試されます。
対策
関西医科大学の入試を突破するためには、「きっちりと教科書の隅々まで覚える・理解する」という意識での学習が必須です。
知識の完全定着と深化
教科書や資料集を徹底的に読み込み、詳細な知識(例:ホルモンの具体的な作用、特定の細胞小器官の機能、各バイオームの特徴)まで正確に定着させることが、特に小問集合での失点を避ける鍵となります。
定量的処理能力の強化
計算問題の演習を日頃から重ね、煩雑な計算や単位換算、指数の扱いに慣れておく必要があります。特に、PCR法、エネルギー代謝、集団遺伝などの頻出テーマにおける計算は確実に得点できるように準備します。
実験考察・応用力の養成
知識を前提として、実験データやグラフ(例:光合成曲線、心周期グラフ)を論理的に分析し、結論を導き出す訓練が必要です。初見のテーマであっても、リード文の情報と既習の知識を結びつけて考察する力を養うことが重要です。
時間配分の徹底訓練
試験時間が短い(約60分)ため、短時間で的確に問題文を読み取り、解答する訓練が必要です。比較的易しい知識問題や計算問題を迅速に処理し、考察に時間を要する大問に時間を残す戦略が有効です。
正誤問題への対応
「すべて選ぶ」形式に慣れるため、問題演習では「なぜこの選択肢が間違いなのか」を根拠とともに明確に判断する習慣をつけましょう。
この入試傾向は、医学部入試に特徴的な基礎知識の正確性と、その知識を定量的な考察や実験データの解釈に「運用できる」水準に高めておくことの重要性を示しています。これは、医学的な現象を科学的に理解し、正確に処理する能力を測るものと言えます。