兵庫医科大学 一般選抜 出題傾向 英語
傾向と対策の概要
兵庫医科大学の英語入試は、極めて高度な学術的・専門的テーマを扱い、受験生に深い読解力、正確な記述力、そして論理的思考力を要求し続けています。出題テーマは、医学、健康、心理学、最新の科学的知見、そして社会倫理的な課題(AI、環境問題、貧困など)にわたります。
主要な設問形式は長文読解、英文和訳、和文英訳、整序英作文であり、特に一般選抜B(旧一般入試B)では、読解内容に基づいた自由英作文が継続して課されており、英語での論述能力が合否を大きく左右する特徴があります。
試験形式の安定性と構成
試験時間
- 一般選抜A(一般入試A): 2018年度以降、一貫して90分です。
- 一般選抜B(旧一般入試B): 2019年度は60分でしたが、2020年度以降は90分に統一されています。試験の実施は一次試験ではなく、二次試験時です。
主要な設問形式の構成(A/B共通)
以下の形式がほぼ毎年出題されており、安定しています。
- 英文和訳(長文の一部または独立した段落): 専門的な内容や抽象的なテーマ(例:「目的意識」、「治療(curing)と癒し(healing)の区別」、「死への準備」)を含む文章の正確な和訳が求められます。
- 長文読解: 文脈に基づく文法・語彙の空所補充や、内容理解を問う問題が出題されます。
- 整序英作文(並べ替え): やや長めの語句群を適切な順序に並べ替えて意味の通る英文を完成させる形式で、複雑な構文や熟語の知識が問われます。
- 和文英訳: 日本語の抽象的な概念や具体的な状況説明を、自然な英語で表現する力が試されます。
試験形式の大きな変化
最も顕著な変化は、一般選抜B(旧一般入試B)における論述形式の定着です。
自由英作文の継続的な出題
一般選抜Bでは、長文の内容を理解した上で、そのテーマに関連する社会的な課題(例:貧困による慢性ストレスの軽減策、クロノタイプに合わせた柔軟な勤務形態の導入、先延ばし習慣へのアドバイス、パンデミック下でのレジリエンス育成戦略、文化的に有能なロボットの使用の是非)について、具体的な例を2つ以上挙げて論理的に英語で記述する問題が恒常的に出題されています。
この論述問題は、解答欄のサイズから見て、一定のまとまった文章量(幅約18.8cm×13行〜19行など)を必要とし、単なる英語の表現力だけでなく、論理構成力や批判的思考力を評価する目的がうかがえます。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは、医学部入試に特有の高度な専門性と、現代社会の課題を反映しており、多様性に富んでいます。
特に、医学、健康、心理学、最新テクノロジーが複合的に絡み合うテーマが中心です。
| 年度 | 主要なテーマの例 | 分野 |
|---|---|---|
| 2018 | 使い捨て製品の過剰使用と健康被害、人類の進化と生存戦略、盆栽 | 環境/公衆衛生、進化論/生物学、文化 |
| 2019A | 家族間の悪い知らせの伝達、心身症(神経科医の視点)、くしゃみの生理学 | 医療倫理/心理学、生理学 |
| 2019B | 貧困と慢性的なストレス、食事療法と2型糖尿病予防、親業のストレス | 社会/心理学、健康/栄養学、教育 |
| 2020A | 治療(curing)と治癒(healing)の区別、アルツハイマー病研究、院内感染対策(握手禁止区域)、ドローンによる医療品配送 | 医療倫理、脳科学、公衆衛生、先端技術 |
| 2020B | ゲーム障害のWHO分類、運動不足と現代病、睡眠クロノタイプと柔軟な勤務形態 | 精神衛生、予防医学/生理学、労務環境 |
| 2021A | 死に備えること、都市の緑化と大気汚染対策、筋電義手(iLimb)の機能と課題 | 終末期医療/心理学、環境科学、先端医療技術 |
| 2021B | 先延ばし(Procrastination)の心理学、心臓発作の治療(D2B時間)、ジョン・ハンターの自然治癒論 | 心理学/感情調整、救急医療、医学史 |
| 2022A | 若年層の物忘れと認知症の関連性、食事の時間と代謝クロック、ストレスと長寿(サケの例) | 脳科学/心理学、栄養学/生理学、ストレス科学 |
| 2022B | 見知らぬ人への信頼(パブロフ的学習メカニズム)、連続血糖測定器(CGM)とデジタルヘルス、コガシラネズミイルカの絶滅危機 | 心理学/認知科学、デジタルヘルス、環境/生物学 |
| 2023A | 小児神経芽腫とリハビリテーション、代謝異常(PCOS)と栄養、冬眠動物の脳研究とアルツハイマー病治療 | 小児医療/PT、内分泌学、応用生物学/脳科学 |
| 2024A | 生きる目的(Sense of Purpose)と健康/長寿、ジェスチャーと言語学習、自然(植物)の存在とメンタルヘルス | 心理学/健康、認知科学、環境/心理学 |
| 2024B | 気候変動が子どもに与える健康影響、デジタル時代のマルチタスク、高齢者介護における文化的に有能なロボットの活用 | 公衆衛生/環境、社会/認知科学、先端技術/介護 |
| 2025A | AIによる雇用の未来、切断術の歴史(最古の手術例)、人工光汚染と生態系への影響 | AI/社会経済、医学史/外科、環境科学 |
特徴的な傾向
- ノンフィクション書籍からの頻繁な引用: 多くの長文読解が出版されて間もない、または評価の高い専門的なノンフィクション書籍や学術記事からの抜粋で構成されています。出典としては、Why Zebras Don't Get Ulcers、Zero Waste Home、Why We Sleep、The Genius of Birds などが見られ、現代の議論を理解するための背景知識が強く求められています。
- 専門用語と概念の和訳の精度要求: 英文和訳や読解では、医学や心理学の専門用語(例:neuroblastoma, polycystic ovary syndrome (PCOS), chronotype, D2B time, tau proteins, glucocorticoids)や、概念の微妙なニュアンス(例:curing vs healing, sense of purpose)を日本語として正確かつ自然に表現する能力が問われます。
- 記述問題の重視: 和訳・英訳、そして一般選抜Bの自由英作文を含め、解答の多くが英語または日本語での記述を要求しており、マークシート形式に偏らない高い記述力が要求されます。
対策
この入試に対応するためには、以下に重点を置いた対策が必要です。
医療・科学系英文の多読と速読能力の向上
対策: 過去の出題テーマに共通する脳科学、公衆衛生、予防医学、環境問題に関する専門性の高い英文記事(Scientific American, TIME, Natureなどの科学セクション)を読み込み、専門用語を体系的に習得します。長文が長いため、90分間で複数の長文を処理する速読能力を身につける必要があります。
日英双方における記述力の徹底強化
英文和訳: 構文分析を徹底し、直訳調を避け、自然な日本語で意味を正確に伝える練習を行います。特に、医学・科学分野特有の論理構造(譲歩、比較、因果関係)を明確にするトレーニングが必要です。
和文英訳: 抽象的な日本語を英語の自然なイディオムやコロケーションを用いて表現する訓練を積みます(例:「盆栽」、「発作が来た」)。
整序英作文と文法・語彙の総合的な対策
対策: 整序英作文は、複雑な文法ルール(例:分詞構文、関係詞、倒置)の応用力を問うため、文法知識を定着させた上で、時間を計りながら多量の問題をこなす必要があります。長文読解中の前置詞、句動詞、時制の知識を問う空所補充問題も継続して出題されているため、抜かりなく確認します。
自由英作文(General B受験者)の集中的な論述訓練
対策: 読解テーマに対する自分の意見を、明確な序論・本論・結論の構造で記述する練習をします。具体的な例証を2つ以上盛り込む指示に必ず従い、論理的な一貫性と英語表現の正確性を高める訓練が必須です。