兵庫医科大学 一般選抜 出題傾向 小論文
傾向と対策の概要
兵庫医科大学の小論文試験は、アカデミックで専門性の高い論説文を読解し、その内容理解度、簡潔な表現力、そして提示されたテーマに対する深い考察力を試す形式が定着しています。
試験時間は多くの年度で60分と明記されており、この限られた時間内で、長文読解、短文要約や専門用語の定義、そして400字から600字程度の論述問題の全てを高い精度でこなすことが求められます。
出題テーマは、現代社会の構造的な問題(貧困、人口減少、労働統計)や、科学・哲学・教育といった広範な分野から選ばれ、受験生が多角的な視点を持っているかが問われます。
試験形式の安定性と構成
2018年度以降、小論文の基本的な試験形式は極めて安定しています。
課題文形式の継続
毎年、特定のテーマに関する長文の論説文(課題文)を提示し、それに関する複数の設問に解答させる形式が一貫して採用されています。
設問の構成
設問は通常、以下の2部構成です。
- 文章理解・知識確認: 課題文中の空欄補充、特定の語句(外来語や専門用語)の定義説明(50字以内が多い)、特定の段落や概念の要約・違いの説明(10字〜100字以内)。厳格な字数制限が特徴です。
- 思考力・論述力: 課題文のテーマに関連付けた、受験生自身の考察や具体的な対策、あるいは個人的な考えを問う長文論述問題(最終設問)。
試験形式の大きな変化
2018年度から最新年度にかけて、試験の構造や出題傾向に本質的な大きな変化は見られていません。安定した形式の中で、以下の点に微細な変動が見られます。
最終論述の要求字数
最終設問で求められる字数は年度によって変動していますが、いずれもまとまった量を要求しています。
- 400字以内が多い(2018, 2020, 2021, 2024, 2025)
- 600字以内が求められた年度もある(2019)
- 500字以内が求められた年度もある(2022)
設問総数
設問の総数は年度によって4問から7問と幅がありますが、全体として求められる解答時間は60分で固定されています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは、医学・医療分野に限定されず、現代社会の構造、科学的思考のあり方、哲学的な概念など、人文科学、社会科学、自然科学の境界領域にわたる広範な論説文が採用されています。
| 年度 | 主要な出題テーマ | 関連分野 |
|---|---|---|
| 2018 | 新しい貧困、社会的排除、グローバリゼーション、格差 | 社会学、経済学 |
| 2019 | 時間とエネルギー、機械化、体験と知識、教育における「生きる力」 | 哲学、教育学 |
| 2020 | 利己的行動と利他的行動、進化論(群淘汰 vs. 個体淘汰/遺伝子淘汰) | 生物学、倫理学 |
| 2021 | 科学的発見、IQと努力、進取の精神、理想的な科学者像 | 科学哲学、心理学 |
| 2022 | 少子化、人口減少、消滅可能性都市、合計特殊出生率、データ分析 | 人口学、社会学、統計学 |
| 2024 | 有効求人倍率、労働統計の信頼性、ハローワークの役割 | 経済学、統計学、行政学 |
| 2025 | 1日の始まりの定義、時間と暦法、社会の時間体系(鉄道、マスコミ) | 哲学、文化、時間測定 |
顕著な傾向: データや統計の批判的分析を求めるテーマが繰り返し出題されています(2022年度の豊島区の人口データ分析、2024年度の有効求人倍率の信頼性)。また、リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』など、特定の分野で著名な著作からの引用が多いのも特徴です。
特徴的な傾向
専門用語の定義の正確な要求
「社会的排除(social exclusion)」や「アンダークラス」、「自然減」、「群淘汰」と「個体淘汰」など、課題文中で核となる専門用語や対立する概念を、制限字数内で正確に説明させる問題が必ず出題されます。
本文の論理構造の徹底的な把握
設問の多くは、単なる知識ではなく、「なぜそのように言えるのか」(理由)や、「本文中の言葉を用いて具体例を列挙」(具体化)など、著者の論理展開を深く理解しているかを問うものです。
短文要約能力の重視
10字、20字、50字、100字といった厳格な字数制限が設定されており、本文中の重要箇所を的確に抜き出したり(例: 28文字で抜き出す問題)、簡潔に再構成したりする高い要約力が求められます。
科学者・社会人としての資質の評価
最終論述では、「あなたの考える対策」や「あなたの考え」を求めることで、提示された複雑な社会構造や科学的な課題に対して、倫理観、進取の精神、または論理的な解決策を提示する能力が評価されます。
対策
安定した難度の高い形式に対応するためには、以下の対策が有効です。
重要対策ポイント
- 時間配分の徹底と短文要約の訓練: 60分という時間の中で、長文読解、短文記述、そして400字以上の論述をこなすためには、設問1~3(短文記述)に時間をかけすぎない訓練が必須です。過去問を利用し、10字、50字、100字といった字数制限に対し、必要十分な情報を過不足なく記述する練習を繰り返すことが重要です。
- 広範なテーマに関する背景知識の習得: 貧困、人口動態、労働問題、進化論、科学哲学など、医学部入試で頻出する社会科学や生命倫理のテーマについて、日頃から論説文を読み、専門用語(例:社会的排除、ワークフェア、自然減、群淘汰)の定義と文脈上の意味を理解しておく必要があります。
- 論理的な論述構成力の強化: 最終設問(400字~600字)では、課題文の内容を正確に踏まえた上で、自己の考察や具体的な対策を論理的に展開する必要があります。意見を主張する際は、「現状の把握(課題文の理解)→ 問題点の指摘(考察)→ 解決策の提示(自分の考え)」といった説得力のある構造を意識して練習しましょう。
例えるならば、兵庫医科大学の小論文試験は、複雑な地形図(課題文)を渡され、必要な情報を最短距離で抜き出し(短文要約)、最終的にその地形図全体を踏まえた未来の街づくり計画(論述)を、決められた用紙サイズ(字数制限)の中で実現させるタスクのようなものです。高い精度と迅速な情報処理能力が求められます。