自治医科大学 一般選抜 出題傾向 化学
傾向と対策の概要
自治医科大学の化学は、2018年度以降、出題数25題(全問マークシート方式)で一貫しています。 出題分野は、例年理論化学と有機化学に明確な重点が置かれており、無機化学の出題比率は低い傾向が続いています。 問題の難易度は概ね基礎から標準レベルですが、計算力を要する問題が多く含まれるため、これらの計算を迅速かつ正確に処理する能力が合否を分けます。また、有機化学分野の一部では思考力や深い知識を問う問題が出題されています。
試験形式の安定性と構成
出題形式の安定性: 2018年度から2025年度の最新入試に至るまで、出題数は25題で安定しており、解答形式は全問マークシート法が採用されています。試験時間は他の科目と合わせて2科目で80分です。
分野構成: 年度により変動はありますが、理論化学と有機化学が全体の8割以上を占めることが多く、理論と有機に重点が置かれています。
例として、2020年度は理論12題、無機1題、有機12題、2022年度は理論13題、無機2題、有機10題、2023年度は理論13題、無機2題、有機10題と、理論分野の出題数が多い傾向が見られます。
試験形式の大きな変化
提供されたソースの範囲(2018年度~2025年度)においては、問題数や解答方式に関する大きな形式的な変化は見られません。
しかし、無機分野の出題数が極端に少ないという傾向は継続しており、特に2020年度は1題のみ、2022年度、2023年度は2題のみと、無機分野の比重が非常に低い状態が続いています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題は基礎〜標準レベルが中心ですが、計算問題や思考力を要する問題が特徴です。
理論化学分野の傾向 (理論分野 8~13題)
- 計算問題の多さ: 毎年、計算力が試される問題が多く出題されており、これを解くのに時間を要します。
- 溶液と平衡: 凝固点降下/沸点上昇(2022, 2025年度など)、浸透圧(2018, 2021, 2023年度など)、気体の状態方程式/蒸気圧(2023年度など)、化学平衡の量的関係(2022, 2024年度など)が頻出です。
- 電気化学: 電気分解(2019, 2022, 2023, 2025年度など) や 燃料電池(2019, 2021年度など)、鉛蓄電池(2018年度) など、電気量や物質量の計算を伴う問題が目立ちます。
有機化学分野の傾向 (有機分野 9~13題)
- 生体高分子の重視: アミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸に関する出題が多く、医学部入試としての特徴が強く出ています。 特にアミノ酸の構造異性体や電気泳動、ペプチドの構造決定(2021年度)、タンパク質の検出反応(ビウレット反応、キサントプロテイン反応)、核酸の構造(2020, 2024年度)が問われています。
- 構造決定と計算: 油脂のけん化価やヨウ素価を用いた構造決定(2018, 2020, 2024年度など)、糖類の構造(還元性、グリコシド結合)、構造異性体を数える問題など、知識と計算/思考を組み合わせた問題が重要です。
- 芳香族化合物: 分離操作(酸性・塩基性・中性の違いを利用) や誘導体の性質(サリチル酸、アセチルサリチル酸など)、および各種反応が問われています。
無機化学分野の傾向 (無機分野 1~5題)
- 知識中心: 出題数は少ないものの、正誤問題が中心で、知識の正確さが求められます。
- 工業的製法: アンモニアソーダ法、硝酸の工業的製法(オストワルト法)、硫酸の工業的製法(接触法)など、工業化学のテーマは計算問題や正誤問題として頻出しています。
- 金属イオンの系統分離: 鉄、銅、銀、鉛、アルミニウムなどの主要な金属イオンの分離手順や沈殿物の性質に関する問題(2018, 2021, 2025年度など)が出題されています。
特徴的な傾向
- 計算量と時間の制約: 25題という問題数に対して試験時間が限られているため、計算速度と正確性が非常に重要です。特に理論分野では、計算過程が複雑で時間を要する問題(例:混合気体の溶解度、溶質のモル分率決定、電気分解の量的関係)が多数含まれます。
- 深い知識を問う正誤問題: 無機化学や有機化学の知識を問う正誤問題の中には、教科書レベルを超えた細かい知識や、判断に迷う内容(例:フラーレンの電気伝導性, エチレングリコールの甘味や毒性)が含まれることがあります。
- 生物学と関連性の高いテーマ: 医療系大学としての特性から、生体高分子(タンパク質、核酸、糖)に関する問題の質・量ともに高く、生命科学につながる深い理解が求められます。
対策
理論化学:計算力と基本原理の徹底
- 計算の訓練: 溶液の性質、気体の法則、電気化学、化学平衡に関する問題を繰り返し解き、複数のステップを含む計算をミスなく迅速に行える練習を積むべきです。
- 公式の応用: 浸透圧や凝固点降下などの公式を単に覚えるだけでなく、問題設定に応じて応用(例:浸透圧測定器の重りによる圧力計算, 鉛蓄電池の充電による濃度変化の計算)できる力を養います。
有機化学:構造と生体高分子の深い理解
- 構造異性体と反応経路: 有機化合物の反応経路や、異性体のパターン(特に鏡像異性体を含む異性体数)を自力で算出する練習が必要です。
- 生体高分子の集中学習: アミノ酸、ペプチド、糖(特に還元性を示さない二糖の構造)、核酸について、構造と性質、検出反応を徹底的に学習することが効果的です。
- 油脂の計算: けん化価やヨウ素価を用いた脂肪酸の割合や二重結合数の決定は頻出テーマであるため、重点的に対策します。
無機化学:効率的な知識整理
- 最重要テーマの確実な暗記: 出題数は少ないですが、工業的製法と金属イオンの系統分離は毎年出題される可能性があるため、これらは確実に知識として定着させます。
- 正誤問題への対応: 知識を問う問題は即答できるものが多いため、時間をかけずに確実に得点し、難しい計算問題に時間を回せるようにすることが重要です。
結論として、合格のためには、基礎的な知識を土台としつつも、理論化学の複雑な計算力と、有機化学、特に生体高分子における思考力を要する問題への対応力が鍵となります。