自治医科大学 一般選抜 出題傾向 英語
1次試験
自治医科大学医学部の2018年度から最新(2025年度)までの英語入試の傾向と対策について、過去の入試講評や問題構成の情報を基にまとめます。
傾向と対策の概要
自治医科大学の英語入試は、試験時間60分に対し、大問3題、小問合計25問という形式が2018年度から2025年度まで一貫して維持されています。
この形式は、1問あたり約2分20秒(大問あたり約20分)という非常にタイトな時間配分を要求します。そのため、試験全体を通して時間をかけすぎることなく、効率よく設問を処理することが最も重要視されています。出題はすべて読解問題であり、英文の難易度や専門的なテーマに対する背景知識の有無にかかわらず、速読力、情報処理能力、論理的推論力が求められます。
試験形式の安定性と構成
- 安定性:2018年度から2025年度まで、大問3題、小問25問、試験時間60分という形式は非常に安定しています。
- 構成:
- 大問はすべて長文読解問題です。
- 小問の形式は、下線部の語彙(類義語)選択、空所補充、内容一致、下線部表現の具体的な意味内容の把握、そして語句整序(並べ替え)問題など、多岐にわたります。
- 英語の配点は25点であり、数学(25点)と同等、理科(2科目で50点)の半分という重要な位置づけです。
試験形式の大きな変化
2018年度から最新の2025年度に至るまで、試験形式(大問数、小問数、時間)に大きな構造的な変更は見られません。安定した出題形式の中で、毎年テーマを変えながら難易度の調整が行われています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは非常に幅広く、医学や科学に関連する話題はもちろん、社会学、文化、歴史、技術など、現代社会が抱える問題や学術的な議論を扱ったものが目立ちます。
1. 科学・医学・技術関連のテーマ
- 医療技術:AIの医療への応用、脳画像技術の発展、外科的施術における科学と技術、エピジェネティクス(胎児への母親の影響の誇張)、ミツバチの生態と養蜂の歴史、持続可能なクラウドと環境への影響、日本の解剖学研究の歴史。
- 生命科学:2021年度の「エピジェネティクス」のように、医療系受験生にとって苦手意識を持つ可能性がある生物学的な用語を扱うテーマも出題されています。
2. 社会科学・人文科学・文化関連のテーマ
- 社会問題/文化:金融商品の安全性と規制、ワールドカップと国民国家・国際化の矛盾、学習効果と情報処理の方法、オンラインでの故人追悼、才能と努力、世界地図とメルカトル図法(地理学・政治的影響)、社会言語学(アクセントと社会的地位)、移民政策と犯罪率(事実と偏見)、K-POPブーム(韓流)の考察。
- 歴史/文化史:20世紀初頭の外科史、日本の野球と国民的自尊心、オスマン帝国の衰退と新興国民国家の台頭、日本の解剖学史、活動写真弁士。
特徴的な傾向
- 論理的推論と読解力の要求:単なる事実の抜き出しではなく、「ある表現が示している内容」を文脈から判断する問題や、対立する概念(例:才能 vs. 努力、国民国家 vs. 国際化)を理解させる問題が多く、英文の構造全体を理解した上での深い推論力・思考力が求められます。
- 語句整序問題の定着:英語の語句整序(並べ替え)は、2018年度からほぼ毎年出題されており、文法力と読解力の両方を試す特徴的な形式として定着しています。
- 専門性の高いテーマの扱いの深さ:専門的なテーマ(例:エピジェネティクス、社会言語学)が出題される際、その専門用語自体を深く知らなくても、英文の記述に基づいて推論し、解答を導き出す能力が求められます。
対策
- 時間配分の徹底的な訓練:60分で3題を解ききるには、迅速な処理が必要です。過去問演習を通じて、各大問に20分以上かけないよう時間感覚を養うことが必須です。
- 文脈判断能力の強化:語彙問題や下線部問題では、単語の知識だけでなく、文脈に基づいて最も適切な意味を判断する能力が問われます。特に抽象的な概念や、本文中の比喩的表現(例:「鶏が先か卵が先か」の問題)の具体的な意味を捉える練習が必要です。
- 論理構造の把握:英文がなぜそのテーマを扱っているのか、筆者の主張や、提示されている二項対立的な概念(例:「科学」と「技術」)の対比に注意を払い、段落構成と文章全体の論理的つながりを理解することを心がけましょう。
- 語句整序への対策:語句整序問題は、文法規則を正確に適用する練習が必要です。選択肢の語句を見てすぐに文法的な枠組み(例:比較級構文、不定詞、分詞構文)を特定し、効率的に解く技術が求められます。
- 多様な背景知識の獲得:出題テーマが多岐にわたるため、日頃から科学、社会問題、歴史、文化など、幅広い分野の英文記事を読むことで、テーマへの苦手意識を減らし、読解力を高めることが望まれます。ただし、深部にこだわりすぎず、大意を把握する力(木を見て森を見る力)を優先することが肝要です。
この入試は、限られた時間内で、読解力、情報処理能力、思考力の全てを最大限に発揮することを要求する、非常に挑戦的な試験であると言えます。
2次試験
2022年度から最新入試(2025年度)までの自治医科大学(医)第2次試験・英語の傾向と対策を、出典情報に基づいて包括的にまとめます。
傾向と対策の概要
自治医科大学(医)の2次試験における英語は、試験時間30分という極めて短い制限時間の中で、長文読解、要約(日本語)、詳細な内容説明・意見論述(日本語)、そして自由英作文(英語)をこなすことが求められる、記述量の負担が大きい試験です。
英文の難易度自体は標準レベルとされていますが、短時間で指定された文字数・語数内に論理的な記述を完成させる能力が合否を分ける重要な要素となります。
試験形式の安定性と構成
試験形式は2022年度から2025年度にかけて高い安定性を示しています。
- 時間:常に30分間です。
- 出題構成:1つの英文長文読解問題と、それに対する大問3問で構成されています。
- 設問内容の形式:
- 問題1:本文の要旨を日本語で記述(200字以内)。
- 問題2:本文中の特定のテーマや対立する意見について説明し、それに対する自身の意見や経験を日本語で記述(200字以内)。
- 問題3:本文に関連するテーマについて、理由や具体例を含めて英語で自身の意見や提案を記述。
日本語記述問題(問題1, 2)は合計で400字以内、英作文問題(問題3)は制限語数に従う形が続いています。
試験形式の大きな変化
コアな形式は安定していますが、問題3(英作文)の制限語数に微細な変化が見られます。
- 2022年度:100語程度(1問)。
- 2023年度:40語程度 × 2箇所 = 合計80語程度。
- 2024年度:80語程度(1問)。
- 2025年度:80語程度(1問)。
2023年度以降、英作文の記述量は80語程度に収束・安定傾向にあります。ただし、2023年度は「支持/不支持」を理由と具体例で述べる二部構成であったのに対し、2024年度以降は「提案に対する反論とその対策」や「提案と理由」を述べる一部構成となっています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは、近年話題となっている社会性の高い現代的なテーマが選ばれる傾向があります。出典元は、Smithsonian Magazine や The Guardian など、海外の著名なニュース・科学系媒体の記事の抜粋であることが多いです。
| 年度 | 出題テーマ | 分野 |
|---|---|---|
| 2022年度 | ジャガーの再導入計画(米国南西部) | 環境保護、生態系 |
| 2023年度 | 青年期までの心身の健康とスポーツ参加の関連性(特に個人競技と団体競技の比較) | 健康、心理学、教育 |
| 2024年度 | 気候変動対策としての食肉消費の削減 | 環境問題、食料問題、社会政策 |
| 2025年度 | 日本の空き家(古民家)問題と外国人による利活用 | 社会問題、経済、観光 |
全体的に、環境、社会、健康といった、医学部の受験生として関心を持つべき現代的なトピックが中心となっています。
特徴的な傾向
- 意見論述の深さ:問題2では、本文中で対比されている複数の考え方(例:2024年度の肉食「完全排除」か「割合的削減」か)を説明した上で、自身の意見を理由とともに述べるという、多角的な分析と論述力が求められます。
- 日本国内の具体例との関連付け:2022年度の問題3では、海外の環境問題(ジャガー)を日本の同様な問題(ライチョウなど)に置き換えて議論させる形式が採られています。これは、単なる英文読解に留まらず、国内外の社会問題への関心の広さを問う傾向を示しています。
- 制約条件への厳密な対応:特に英作文(問題3)では、「本文中に示されている取り組みを除く」など、解答に含めるべき内容や除外すべき内容について細かい指示が与えられていることがあります (2025年度)。この指示への適合性が重要です。
対策
短い試験時間で高い記述力を求められるこの形式に対応するためには、以下の対策が有効です。
- 時間配分の徹底:30分という制約から、英文を精読するだけでなく、要約や意見をまとめる時間を逆算して確保する必要があります。
- パラグラフ要約の習慣化(問題1対策):日頃から英文を読む際に、パラグラフごとの概要を把握し、それを200字程度の論理的な日本語にまとめる練習を積むことが不可欠です。要約する際は、抽象的な部分と具体的な部分を選別し、論旨の骨格を明確に示すことが重要です。
- 論述形式の習得(問題2対策):対立する二つの見解を説明した上で、自身の意見を理由や経験(2023年度)、または具体的な根拠(2024年度) に基づき記述する訓練が必要です。日本語の記述も論理構成を意識し、字数制限内で説得力のある文章を作成する練習をします。
- 短文英作文の多作(問題3対策):80語程度の短い英作文を数多く書き、制限時間内に完成させる訓練が肝要です。特に、シンプルな構文を用い、論理を構成する練習(理由付けや具体例の挿入)を重ねます。また、特定の主張に対する「反論」や、本文にない「新しい提案」を求められた際に、迅速に対応できるように多様なテーマで準備しておくことが求められます。
この試験は、英文読解力に加え、知識を背景とした論理的思考力と、それを日本語および英語で迅速かつ正確にアウトプットする能力が問われる、総合的な記述試験であるといえます。
例えるならば、この試験は、わずか30分で仕上げる「要点抽出と意見表明のフレンチコース」のようなものです。食材(英文)の性質を瞬時に理解し(読解)、それを小型のプレート(200字の日本語)に洗練された形で盛り付け(要約と分析)、最後にメインディッシュ(80語の英作文)では、提供された材料(本文の議論)とは異なる、独創的かつ説得力のある一品(自分の提案)を迅速に提供する、スピードと完成度の両方が求められる挑戦です。