近畿大学 一般選抜 小論文 出題傾向と対策
前期日程(近畿大学医学部 一般前期)
2018年度から最新年度(2025年度)までの小論文の出題傾向と対策について、過去問の情報を基にまとめます。
傾向と対策の概要
近畿大学医学部(一般前期)の小論文は、2018年度以降、形式的な安定性が極めて高いことが最大の特徴です。出題テーマは、医学の知識そのものよりも、医師としての倫理観、社会に対する視点、自己省察、および医学教育のあり方といった、受験生の「態度」や「考え方」を問う内容で一貫しています。
対策としては、400字という厳格な字数制限の中で、時事的なテーマや医療倫理に対して、論理的かつ具体的に自身の意見を構成する能力が求められます。
試験形式の安定性と構成
本学の小論文形式は、調査期間を通じて極めて安定しています。
- 字数制限: 2018年度から2025年度まで、一貫して横書きで400字以内にまとめることが求められています。
- 初期の構成指定: 2018年度から2022年度の出題では、「(20字×20行)」という行数指定が併記されていましたが、2023年度以降の資料ではこの行数指定は省略されています。しかし、字数制限(400字)は維持されています。
- 試験時間: 2021年度と2022年度の資料には、試験時間が「40分」であることが明記されていました。
試験形式の大きな変化
上記のとおり、試験形式(字数、横書き、小論文形式)に大きな構造的変化は見られません。わずかな変化としては、2023年度以降の設問資料において、字数制限の補足情報であった「(20字×20行)」という具体的な行数指示が記載されなくなった点があげられます。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは、倫理、社会性、医師の資質、そして自己反省の四つの領域に集約されます。
医療の社会性・政策・倫理
- 終活(人生の最終末の迎え方、医療費の社会的負担、改善方途)。
- 医療における「男女共同参画」。
- 大学病院の専門医療と地域医療の違いと、それに対する勉強法。
- 利他的な考え方が自分自身に及ぼす良い面と悪い面(具体例を挙げて)。
医師の資質と教育
- 医師の資質としての「知識」「技能」に並ぶ「態度」とはどのようなものか。
- 「様々な社会の変化に対応」するために医師として持つべき能力(医学部での学修に関連づけて)。
- 学部の教育目的である「人に愛され、信頼され、尊敬される」医師になるために何を学ぶべきか。
受験生自身の自己省察
- 良医への学修を始めるにあたっての「自らの課題や問題点」と、それを「克服するために実行しようと考えていること」。
特徴的な傾向
最も特徴的な傾向は、自己言及性と具体性を強く求める点です。
- 強い個別意見の要求: 多くの年度で「あなたの意見を述べなさい」、「思うところを記せ/述べなさい」、「あなたの考えを述べなさい」と、受験生自身の考え方を問う表現が使用されています。
- 具体的な自己評価: 2023年度の設問では、抽象的な医師像ではなく、「良医への学修を始めるにあたって、自らの課題や問題点は何であると考えているか」と、受験生自身の弱点と具体的な克服策を問うことで、より深い自己認識を求めています。
- 具体例の要求: 2025年度では、利他的な考え方について、具体的に例を挙げて意見を述べるよう指示されており、抽象論ではなく、実生活や医療現場に即した思考を要求しています。
対策
- 字数と時間の厳密な管理: 400字という制限は短く、論理展開を過不足なく収めるためには、意見の核を迅速に抽出する能力が必須です。40分程度の時間内で、構成、記述、見直しを完了させる練習が必要です。
- 医療倫理・社会性のテーマの深掘り: 「終活」、「共同参画」、「地域医療」など、出題実績のあるテーマについて、知識の整理だけでなく、「社会的負担」「改善方途」といった政策的な視点や、「利己と利他」のような哲学的な視点からも意見を構築できるように準備することが重要です。
- 自己反省と医師の資質の言語化: 医師の「態度」や「尊敬される医師になるための学修」など、抽象的な資質に関するテーマが出題されています。これに対し、自身のこれまでの経験や近畿大学医学部の教育理念を踏まえつつ、自分自身の言葉で具体的に説明し、論理立てて表現できるようにしておくことが決定的な対策となります。
例えるならば、近畿大学医学部の小論文は、「400字の精密なポートレート」を作成するようなものです。単に美しい絵(一般的な知識)を描くのではなく、「限られたスペース」(400字)の中で、受験生本人が持つ「医師としての資質、倫理観、そして将来的な行動計画」という内面的な特徴を、明確かつ鮮やかに表現することが求められています。
後期日程(近畿大学医学部 一般後期)
近畿大学医学部一般後期入試(2018年度から2024年度)の小論文の傾向と対策をまとめます。※2023年、2025年は過去問情報なし。
傾向と対策の概要
近畿大学医学部(後期)の小論文は、一貫して横書き400字以内という厳格な字数制限の中で、現代の医療が抱える社会的な課題や倫理的ジレンマに対する受験生の考察力と、医師(または医学生)としての具体的な対応能力を問う内容で構成されています。
出題テーマは、医療政策、感染症対策、先端医療倫理、ダイバーシティ理解など、高い時事性を持つことが特徴です。対策としては、社会の動向を医学と結びつけて理解し、400字で論理的かつ具体性のある解決策や意見を提示する能力が求められます。
試験形式の安定性と構成
本学の後期小論文の形式は、調査期間(2018年度〜2024年度)を通じて極めて安定しています。
- 字数制限: 2018年度から2024年度まで、すべての年度で横書きで400字以内にまとめることが明確に指示されています。
- 試験時間: 2020年度および2021年度の資料には、試験時間が「40分」である旨が記載されています。
- 形式: 設問文に対し、自身の考えや考察を論述する小論文形式です。
試験形式の大きな変化
提供された資料に基づくと、2018年度から2024年度にかけて、試験形式(字数、横書き指定、小論文という構造)に大きな変化は見られません。安定した形式が維持されています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは、現代医療における重要な社会問題や倫理的な課題を網羅しています。
医療政策・社会制度関連
- 「働き方改革」について、医師としてどのように考えるか(2018年度)。
- わが国の今後の医療保険制度の在り方について(2019年度)。
感染症・公衆衛生と社会対応
- 新型コロナ感染症が流行する事態に対し、医師となった場合にどのように行動したいか(2021年度)。
- 新型コロナウイルスワクチン接種の副反応が若者に及ぼす影響について、科学的・社会的な側面から考察する(2022年度)。
医療倫理・コミュニケーション
- 患者のがんが遺伝性であることが分かった場合、患者及びご家族にどのように説明するか(2020年度)。
- 患者及び家族の文化的背景、言語などのダイバーシティ(多様性)を理解し、適切に対応することの重要性と、医学生としての対応(2024年度)。
特徴的な傾向
最も特徴的なのは、時事性と多角的な視点を強く要求する点です。
- 時事問題の直球出題: 2018年の「働き方改革」や、2021年・2022年の「新型コロナ」関連の出題など、出題年度に近い時期の社会的な関心事をテーマとして取り上げています。
- 具体的な行動計画の要求: 抽象的な理想論ではなく、「どのように説明するか」や「どのように行動したいか」、「医学生としてどのように対応するか」など、特定の状況における具体的かつ倫理的な対応策を求める設問が多いです。
- 複合的な考察の重視: 2022年度のワクチンに関する設問のように、「科学的・社会的な側面から考察」するよう指示されており、医学的知見だけでなく、その問題が社会に与える影響や、倫理、政策といった多角的な視点から物事を捉える力が求められています。
対策
- 厳密な字数管理の徹底: 40分で400字という制限は、非常に短くタイトです。結論(主張)→根拠→具体的な対応策という論理構造を、字数を意識しながら過不足なく収める訓練を積むことが必須です。
- 医療の時事問題に対する意見形成: 新聞やニュースで取り上げられている医療政策(例:地域医療構想、高齢化対策)、感染症対策、先端医療(例:遺伝子解析、AI導入)などについて、「医師としてどうすべきか」という具体的な意見を事前に構築し、書き出す練習をしておく必要があります。
- 倫理的ジレンマへのロールプレイング: 遺伝性疾患の告知や、ダイバーシティへの対応のように、コミュニケーション能力や倫理的判断が問われるテーマに対して、どのような言葉を選び、どのような順序で説明するか、具体的なシナリオを想定した準備が有効です。
近畿大学医学部後期の小論文対策は、例えるならば「400字の緊急報告書作成訓練」です。与えられた社会課題という緊急事態に対し、40分という制限時間の中で、医師として倫理と科学、社会性を考慮に入れた具体的かつ簡潔な対応方針をまとめ上げる能力が試されていると言えます。