日本大学 一般選抜 出題傾向 化学 2018年度~最新入試の傾向と対策のまとめ
傾向と対策の概要
日本大学医学部N方式の化学試験は、試験時間60分に対し、大問形式で25問から30問程度の多肢選択式問題(主に選択肢6~9個)が出題される形式が、2018年度から最新年度まで一貫して維持されています。
この形式は、解答速度と正確性の両方を要求します。出題内容は理論化学、無機化学、有機化学、高分子化合物と広範囲にわたり、特に計算問題の比重が非常に高いことが最大の特徴です。計算問題は、物質量やモル濃度から、平衡定数、溶解度積、電気化学、滴定計算、高分子の重合度まで多岐にわたります。
また、有機化学および高分子分野では、構造決定や合成経路、生化学的な性質に関する詳細な知識が問われており、単なる暗記に留まらない深い理解が必要です。
試験形式の安定性と構成
分析期間(2018~2025年度)における試験形式の特徴は以下の通りです。
安定性と出題数
- 安定性:試験時間(60分)と出題形式(大問形式の多肢選択式)は、分析した期間を通じて極めて安定しています。
- 出題数:設問総数は年度により25問から30問程度で推移していますが、近年は28問前後(例:2020、2021、2023、2024、2025年度は28問)に落ち着いています。
分野構成
以下の分野が概ね大問IからVII(またはV, VI)に分けて出題されています。
| 理論化学・基礎 | 物質の構成と化学結合、分離精製、周期表 |
|---|---|
| 理論化学・計算 | 物質の状態、酸・塩基、反応の量的関係、化学平衡 |
| 無機・電気化学 | 酸化還元反応、電気化学(電池・電気分解)、無機物質 |
| 有機・高分子 | 有機化合物、天然有機化合物、高分子化合物 |
試験形式の大きな変化
分析期間(2018年度~2025年度)において、試験形式(時間、問題形式)に大きな変更は見られません。これは、受験生が過去問を通じて出題傾向と時間配分を把握しやすいという点で重要な情報です。
出題分野や出題テーマの傾向
出題はバランスが取れていますが、特に以下のテーマが頻出または深く問われています。
計算問題の集中
- 気体の法則:ボイル・シャルルの法則、混合気体の分圧計算が頻繁に出題されます。特に、気体の状態方程式を用いた分子量計算(2022年度)や、水の飽和蒸気圧と混合気体の計算(2025年度)は応用的な内容です。
- 酸と塩基、滴定:弱酸のpH計算(2021, 2024年度)や、中和滴定/逆滴定の量的関係(2019, 2022年度)が確実に出題されています。緩衝液に関する知識も問われています。
- 電気化学と酸化還元:電池の起電力の比較(イオン化傾向)や、電解精錬/鉛蓄電池の質量変化に関する量的計算(2019, 2021, 2022年度)が重要です。酸化還元滴定(2024年度)も出題されています。
有機化学:合成と反応、構造異性体
- 芳香族化合物:フェノールの工業的製法であるクメン法やサリチル酸誘導体の合成(アセチルサリチル酸、サリチル酸メチル)に関する出題が頻繁に見られます。ジアゾ化やカップリング反応も問われています。
- カルボニル化合物:アルデヒドやケトンの合成(例:酢酸カルシウム乾留、ワッカー法)や、ヨードホルム反応、銀鏡反応といった性質の比較が重要です。
- 構造異性体と立体異性体:エステル(C5H10O2)の異性体数(9種類、2018年度)や、不斉炭素原子を持つ化合物の構造決定(2020, 2022年度)など、数え上げや立体異性体の考慮が求められます。
生化学・高分子
- アミノ酸とペプチド:グリシンやアラニンを含むトリペプチドの構造決定、電気泳動による移動方向(pHとイオン状態の関係)、およびビウレット反応、キサントプロテイン反応といった検出反応が重要です。
- 高分子の構造と計算:ポリエチレンテレフタラート(PET)やナイロン66の原料・製法、および重合度や分子量からのエステル結合数や物質量計算が確実に出題されています。
特徴的な傾向
- 知識問題の細分化:結晶構造の配位数(体心立方格子で8個、2018年度)や、単位格子の充填率(面心立方格子と六方最密構造が74%、2025年度)など、理論化学の基礎的な知識についても詳細な数値や定義が問われます。
- 定性・定量の融合:無機物質の沈殿反応や錯イオン生成反応の知識(定性)と、それに伴う溶解度積の計算(定量)が組み合わさって出題される傾向があります。
- 実験操作の確実な理解:蒸留時の冷却水の流し方(下から上、2019年度)や、ろ過・昇華法・抽出といった分離操作、滴定に使用する器具の名称と役割(2024年度)など、実験手順に関する知識が問われます。
- 同位体・放射線関連の出題:質量数に基づく中性子数の計算や、同位体の天然存在比(2023年度)、半減期計算など、核化学の基礎も押さえる必要があります。
対策
計算問題の徹底演習とスピードアップ
- 60分で25~30問を解くためには、1問あたり2分程度しかかけられません。特に、滴定、気体、平衡、電気化学の定量的な問題を素早く処理する訓練が必要です。
- 与えられた原子量や定数(アボガドロ定数、モル体積など)を迅速に活用し、計算途中の四捨五入を避け、有効数字を意識した計算を心がけましょう。
有機・高分子の知識の深化
- 有機化学は、合成経路(例:クメン法、サリチル酸合成)と、官能基ごとの特性反応(例:ヨードホルム反応、銀鏡反応、フェーリング液反応)を構造と結びつけて理解する必要があります。
- 生化学分野では、アミノ酸の電気泳動(pHによる移動方向)や、ペプチドの検出反応(ビウレット、キサントプロテイン、ニンヒドリン)の条件と結果を正確に覚えることが必須です。
理論化学の応用力の強化
- ルシャトリエの原理、反応速度、熱化学方程式のヘスの法則など、基本原理を応用した問題に慣れましょう。
- 浸透圧、沸点上昇、凝固点降下といった溶液の性質は、電解質の価数を考慮した計算(例:NaCl と CaCl2 の比較)が求められるため、単純な公式適用だけでなく、溶液中の粒子数を正確に把握することが重要です。
まとめ:
この試験で成功を収めるためには、広範な知識を漏れなく習得し、特に計算問題の処理速度を上げる訓練が不可欠です。例えるならば、この試験は、多くの正確なツール(知識と計算技術)を制限時間内に駆使して、複雑なパズル(多岐にわたる化学的問題)を組み立てる作業に似ています。一つ一つの基礎知識を確実なツールに変えることが、合格への鍵となります。