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東京慈恵会医科大学 一般選抜 出題傾向 物理

傾向と対策の概要

東京慈恵会医科大学の物理は、例年、受験生にとって見慣れない現象や医学・生物学に関するテーマを題材にしたユニークな問題が出題されるという特徴があります。

2018年度から2022年度までは、高度な生体モデルを題材としつつも、計算が煩雑であることや、高度な物理学の知識(原子・量子、相対論など)を問われることが主なハードルでした。しかし、2023年度以降、大きな変化が見られます。大問の数が減少し、それに伴い問題の分量や複雑な計算も軽減されました。代わりに、物理現象の深い理解に基づき、理由や考察を明確に記述させる問題の比重が顕著に高まっています。

試験形式の安定性と構成

  • 時間: 2科目で120分が与えられています。
  • 構成 (2018年~2022年): 大問3題構成が一般的でした。
  • 構成 (2023年~): 大問が3題から2題に減少し、この形式が2024年度、2025年度と続いています。

試験形式の大きな変化

2023年度に大きな変更がありました。

  • 大問数の削減と分量の変化: 大問が3題から2題に減り、全体的な分量が少なくなりました。
  • 計算量の軽減: 例年指摘されていた煩雑な数値計算が減少し、問題設定も比較的解きやすくなったと評価されています。
  • 記述・考察問題の増加: 理由を記述したり、導出過程や考察を書かせたりする問題が増加し、深い思考力を問う傾向が強まりました。
  • 生体モデルの減少: 2022年までは頻出だった生体モデルや見慣れない現象に関する問題が、2023年、2024年度は出題されていませんでした。ただし、2025年度も「見慣れない設定の問題」が出題されています。

出題分野や出題テーマの傾向

長期的には、物理の幅広い分野から出題されていますが、特に以下のテーマが目立ちます。

医学・生物学関連の応用

2022年度までは、循環器系(血流抵抗の等価回路、左心室の仕事/P-Vループ)、生体材料(骨のヤング率と弾性エネルギー)、生体分子モーター(ATP合成酵素)といった、専門的でユニークなテーマが頻出でした。流体中の複雑な運動(水滴の落下、気泡の上昇など、質量や体積が変化する運動)も2018、2019年度に同タイプで出題されています。

原子・量子物理学

この分野は2016年度以降、毎年出題されている中心テーマの一つです。具体的には、陽電子断層撮影(PET)に関連した陽電子と電子の対消滅や放射能の強さ、X線の発生と限界振動数、中性子減速材の理論、光子の運動量とエネルギー保存則、そして相対性理論(質量とエネルギーの等価性 $E=mc^2$)を扱う問題が2023年度と2025年度に登場しています。

電磁気学

コンデンサーの充放電とLC電気振動(2019)は典型的な問題として出題され、完答が求められます。交流回路(LCR回路)を循環器系の等価回路として扱う問題(2020)や、雷の発生を平行平板コンデンサーとしてモデル化する問題(2021) など、応用的な設定が多いです。2024年度には電場と磁場の相対性を問う高度な問題が出題されました。

熱力学

気体の定積変化、定圧変化、断熱変化(2025)、そして熱機関のサイクル(2020: 左心室のP-Vループ、2025: 第2種永久機関の考察)など、医学や工学的な視点を取り入れた出題が見られます。

特徴的な傾向

年度 評価・特徴的な要素
2018 誘導が丁寧で難易度はやや易化。超音波血流計(ドップラー効果と粒子モデルの比較)、水滴の落下運動(質量変化)など、応用テーマが目立つ。
2019 多くの受験生にとって見慣れない問題が多く、ハードルが高い。LC回路は定型だが、原子・量子(PET/X線)では計算が煩雑。
2020 難易度は2019年と比べてやや易化。循環器系の等価回路や左心室のP-Vループなど、医学応用テーマが中心。
2021 例年通り生体モデル含む。複雑な計算が必要な問題が後半に集中。記述問題(光と目の構造、次元解析)も出題。
2022 2021年と比べても難化。特に「生体分子モーター」はトップクラスの難問。骨のヤング率など生体モデルが充実。計算量が非常に多い。
2023 形式に大きな変更あり(大問3→2)。計算量が減り、解きやすくなった。相対性理論(質量とエネルギーの等価性)が出題。
2024 2023年に続き大問2題構成。記述問題がさらに増加し、深い考察が求められた。角運動量保存則をケプラーの法則と量子力学に結びつける高度なテーマ。
2025 2024年に続き見慣れない設定(断熱変化と第2種永久機関、ガンマ線放出と慣性力)が出題。記述・考察問題が引き続き重視される。特に問5・問6は、科学的興味と考察力を測る高度な内容。

対策

物理学の深い理解と記述力の養成

近年の傾向として、考察力、論理的な思考力、そしてそれを他者に明確に伝える記述力が最重要となっています。単に答えを出すだけでなく、「記述内容の深さや解釈の豊かさに加え、それを筋道立てて他者に伝える姿勢」を意識し、日頃から解答の理由や導出過程を自らの言葉で説明する訓練が必要です。

医科大特有の応用問題への習熟

過去問を通して、流体力学的な複雑な運動や、医学・生物学的なテーマを物理モデルに落とし込む独特の出題形式に慣れることが必須です。特に、2022年以前の出題テーマ(生体モデル)は、再出題の可能性もあるため、疎かにすべきではありません。

原子・量子分野の徹底対策

毎年出題されるため、X線、光子の運動量、ドップラー効果、そして相対性理論の基礎と近似計算($E=mc^2$など)まで含めて、十分な準備が必要です。

計算力の強化と時間管理

2023年以降、計算の煩雑さは軽減されましたが、依然として正確な計算力は不可欠です。試験全体を通して、複雑な計算や考察を要する問題(特に大問の後半)を後回しにし、前半の基本〜標準レベルの問題を確実に得点する時間配分戦略が求められます。

比喩的な表現による理解の補助:
慈恵医大の物理試験は、例えるなら、ただ目の前の料理(基本問題)を食べるだけでなく、その料理に使われている珍しい食材(生体モデルや量子物理)の生産地や調理過程(深い考察や原理)を説明させる、高級レストランのシェフ試験のようなものです。特に2023年以降は、料理の量自体は減りましたが、「なぜその食材を選び、なぜその手順で調理したのか」を論理的に語れる能力がより重要になっています。