東京医科大学 一般選抜 出題傾向 物理 (2024年まで)
傾向と対策の概要
東京医科大学の物理は、力学、電磁気、波動、熱力学、原子の物理の全分野から毎年網羅的に出題される点が最大の特徴です。試験形式は全問マークシート方式で安定していますが、特に計算量と数値計算の正確さが合否を分ける傾向が非常に強いです。
近年、2023年度以降は難易度がやや上昇傾向にあり、解くのに時間がかかる問題や、三角関数を用いた複雑な計算、あるいは高い応用力が試される問題が増加しています。このため、基礎知識の定着に加えて、迅速で正確な処理能力と、問題の優先順位付けと時間配分が極めて重要となります。
試験形式の安定性と構成
- 試験時間と科目: 2科目合計で120分が割り当てられています。
- 出題形式: 全問がマークシート方式で解答を求められます。
- 大問数: 年によって変動がありましたが、2018年度の5題から2020・2021年度の9題をピークに、近年は6〜8題で推移しています(2022年度は7題、2023年度は8題、2024年度は6題、2025年度は5題の小問集合形式)。
- 計算上の注意点: 途中計算に用いる数値は、解答の有効数字の桁数より1桁多くすることが一貫して指示されています。
- 付録: 物理定数表や三角関数表が問題の最後に添付されています。
試験形式の大きな変化
物理の試験形式(マークシート、2科目120分)自体に大きな変更はありません。しかし、出題内容の難易度と計算負荷が増しているという実質的な変化が指摘されています。
- 2023年度:例年と比べて「やや難度が高くなり解くのに時間がかかる問題も増えている」との講評あり。
- 2024年度:「2023年度と同程度の難度であり、例年と比べるとやや難度が高くなっている」とされ、標準的な問題でも解き慣れていないと時間がかかる点が指摘されています。
- 2025年度:2024年度と比べて問題数は減ったものの、難度が高かったり時間がかかったりする問題が含まれており、全体として難度が上がっていると明確に述べられています。
特に、高いレベルの三角関数の処理や煩雑な計算を要する応用問題が、近年合否を分ける要素となっています。
出題分野や出題テーマの傾向
物理の主要分野(力学、電磁気、波動、熱力学、原子)は毎年必ず出題されています。
| 分野 | 頻出テーマ(2018〜2025年度) |
|---|---|
| 力学 | 衝突と運動量保存、ばね振り子/単振動、浮力と終端速度、鉛直面内の円運動、万有引力による静止衛星や楕円軌道、台と物体の相対運動(慣性力)。 |
| 電磁気 | 平行平板コンデンサー(誘電体挿入、抜き出し)、非線形素子(電球・ダイオード)を含む直流回路のグラフ解析、RLC交流回路(共振、消費電力、位相差)、点電荷による電場・電位、ホール効果、磁場内を運動するコイルの電磁誘導。 |
| 波動 | 光の屈折/全反射、ヤングの実験/回折格子、ドップラー効果(直線運動、円運動)、薄膜による光の干渉、ニュートンリング。 |
| 熱力学 | P-Vグラフを用いた熱サイクル(仕事量、熱効率)、断熱容器内の気体の混合、断熱変化(ポアソンの式)。 |
| 原子 | 光電効果(仕事関数、阻止電圧、グラフ解析)、放射性崩壊と半減期(対数処理を伴う)、X線の発生とブラッグの条件、ボーアの原子模型と線スペクトル。 |
特徴的な傾向
高度な数値計算能力の要求
- 計算過程では有効数字の桁数より1桁多く取るという指示が徹底されており、最終的な数値解答を高い精度で出す必要があります。
- 特に、2018年度の力学や電磁気の小問で示されたように、添付の三角関数表を用いて比例配分による近似計算を行い、角度を求める手法が求められる場合があります。
- 2024年度の台上の相対運動や2025年度の熱効率の最大値を求める問題のように、計算量が非常に多く、処理に時間がかかる問題が出題される傾向があります。
非線形素子(ダイオードや電球)を含む回路解析
- 電球やダイオードなど、オームの法則に従わない素子が登場する回路問題が頻出です。
- これらの問題では、キルヒホッフの法則から導かれる電圧と電流の関係式(直線)を、素子の特性を示す非線形なI-Vグラフに書き込み、その交点を読み取るというグラフ解析能力が必須とされます。
基礎概念の導出と応用
- 単に公式を当てはめるだけでなく、物理現象の原理から式を導出する能力が求められることがあります(例:ソレノイドの自己インダクタンスを誘導起電力発生の原理から導出など)。
- 熱力学では、定積変化や定圧変化のみならず、P-Vグラフ上の複雑なサイクルにおける熱効率を計算させる問題や、断熱変化のポアソンの式を前提とした問題が出題されています。
- 力学においても、万有引力による静止衛星から楕円軌道への変化(面積速度保存則とエネルギー保存則)、慣性力を用いた相対運動の解析など、誘導が少なく、解法に時間がかかる応用問題が難易度上昇の要因となっています。
対策
1. 基礎概念の網羅的な理解と定着
全分野から偏りなく出題されるため、苦手分野をなくし、基本法則と公式を完全にマスターすることが最優先です。特に、力学、電磁気、熱力学の基礎は、複雑な応用問題の土台となります。
2. 数値計算トレーニングの徹底
東京医科大学の入試では、正確さとスピードを両立させた数値計算能力が決定的に重要です。
- 有効数字のルール(1桁多く計算する): このルールに従った演習を繰り返し、煩雑な計算に慣れてください。
- 過去問で出題されている三角関数表を用いた近似計算の手順を習得し、正確に答えを導き出す練習が必要です。
3. グラフ解析と応用問題への慣れ
- 非線形回路: I-V特性グラフを見て、連立方程式を解く代わりに直線を引いて交点を読み取るというグラフ的解法を徹底的に練習してください。
- 熱力学と原子物理: P-Vグラフの熱サイクル、半減期における対数処理、光電効果のグラフ解析など、典型的な応用テーマについては、原理から導出できるように準備しておくことが重要です。
4. 時間配分の戦略的運用
難易度が上昇し、時間がかかる問題が増加しているため、試験本番では解くべき問題と捨てるべき問題の見極めが合否を分けます。
- まずは確実に得点できる問題から着手してください。
- 計算負荷の高い問題(例:慣性力の計算が絡む相対運動、複雑な三角関数の処理を伴う斜方投射)は時間と相談して取り組む戦略が必要です。
東京医科大学の物理は、高い処理能力が試される「計算の持久力テスト」のようなものです。知識の広範な基礎の上に、精密な計算技術と、時間内に完遂するための戦略的な判断力が求められます。