東海大学 一般選抜 出題傾向 化学
傾向と対策の概要
東海大学医学部医学科の化学の入試は、試験時間70分に対して、理論・無機・有機・高分子の全分野から満遍なく出題され、特に詳細な計算を要求する問題や、医学・環境に関連した応用的なテーマが頻出しています。
形式は、主にマーク式の選択問題ですが、化学反応式や構造式、語句の記述も求められ、知識の正確な定着と、それを応用する高度な演算能力が要求されます。対策としては、基本原理の深い理解と、複数の分野を横断した計算問題の練習、そして高分子や環境化学など応用分野の細部までカバーすることが重要となります。
試験形式の安定性と構成
安定性
試験形式は、2018年度から最新の2025年度まで、試験時間「70分」で安定しています。
構成
年度により大問の数は若干異なりますが、概ね5題から6題の構成となっており、出題範囲は偏りが少なく、理論化学、無機化学、有機化学、高分子化学がバランス良く出題されています。
- 2019年度:6題構成
- 2021年度、2022年度、2023年度、2024年度、2025年度:5題構成
各設問はマーク式が中心ですが、化学反応式、構造式、人名や法則名などの記述解答も毎年組み込まれています。
試験形式の大きな変化
大枠の形式(時間、大問数)には大きな変化は見られません。ただし、出題テーマの選定において、理論化学の応用計算を深く掘り下げる傾向が見られます。
特に、複数の原理(状態方程式、平衡定数、溶解度積など)を複合的に用いる計算問題が、年々、テーマを変えながら継続して出題されており、単なる知識の確認に留まらない、複雑な事象を定量的に扱う能力を測る意図が読み取れます。
出題分野や出題テーマの傾向
全分野からの出題が見られますが、特に頻出するテーマは以下の通りです。
理論化学の傾向
- 化学平衡・反応速度:炭酸カルシウムの分解平衡(2019)、C + CO2 ⇄ 2CO 平衡(2020)、水性ガスシフト反応の平衡計算(2022, 2023)など、固体を伴う平衡や分圧平衡定数 Kp の計算が頻繁に出題されています。
- 熱化学:オストワルト法(2018)、プロパンの燃焼熱(2019)、水の相変化に伴う吸熱量計算(2021)、ヘスの法則を用いた反応熱の導出(2022, 2023)など、生成熱や燃焼熱、Q = aQ1 + bQ2 + cQ3 + D といった形で熱量の関係式を問う問題(2018)も出されています。
- 溶液と溶解平衡:凝固点降下(2020)、酸塩基平衡と pH 計算(次亜塩素酸ナトリウム水溶液の pH、2019)、硫化物の沈殿平衡(2023, 2025)、溶解度積を用いた沈殿生成の pH 計算(2021)など、定量的な分析が多いです。
- 結晶構造:イオン結晶(NaCl型、ペロブスカイト型)(2025)、体心立方格子(2018)、Si(2019, 2022)、六方最密充填(Mg)(2020)、面心立方格子(Al)(2024)など、単位格子あたりの原子数や密度計算が毎年のように出題されています。
無機化学の傾向
工業的製法(オストワルト法、接触法、ハーバー・ボッシュ法など)や、元素の性質(第3周期元素、金属の反応性)が問われます。
- ケイ素の化学:SiO2 の性質やシリカゲル(2019)。
- 硫黄化合物:硫化水素の発生法と沈殿平衡(2023, 2025)が重要テーマとして設定されています。
- アルミニウム:両性水酸化物としての反応性や精錬プロセス(2024)が出題されています。
有機化学・高分子化学の傾向
- 構造決定と異性体:C4H10O のアルコール異性体の構造決定(2023)や、C3H8O と C3H6O の構造異性体の数(2021)など、異性体の網羅的な把握と官能基の反応が鍵となります。
- 油脂・糖質:二糖類(2018)、酒石酸の立体異性体(2021)、グルコースの構造(2021)、油脂のヨウ素価(二重結合の数)を用いた組成比の推定計算(2022)が出題されています。
- 高分子化合物の特性:
- 機能性高分子:イオン交換樹脂(2019, 2023)、吸水性高分子(2020, 2023)など、特定の用途と構造・性質の関係が問われています。
- 分子量測定と重合度:浸透圧を用いた平均分子量・重合度計算(2019, 2023)が繰り返し出題されています。
- 合成繊維:PET、ナイロン、アクリル繊維、アラミド、ビニロンなど、合成法(付加重合、縮合重合、開環重合)と用途に関する知識が必須です(2024)。
特徴的な傾向
- 環境・医療への関連性:溶存酸素濃度測定(2020)、COD 測定(2018)、人工骨・人工歯根の材料(2024)、生分解性樹脂(2022)など、医療や環境科学に関連するテーマが散見されます。
- 高度な計算力と多段階の論理:多くの問題が、単なる公式適用ではなく、反応の前後での物質量の変化や、平衡の移動、溶液の混合による濃度変化など、多段階の論理展開と正確な計算を要求します。
- 例:溶存酸素測定における Na2S2O3 と O2 の物質量比の決定(2020)。
- 例:電気分解における並列回路の電子量の分配と pH 計算(2022)。
- 例:ゴムの加硫による重量増加から硫黄原子の数(重合度)を推定する問題(2025)。
- 結合と構造に関する詳細な知識:分子間力と極性の関係(2020)、結合のイオン性の計算(2020)、結合角の大小関係(2022)など、原子・分子レベルの物理化学的性質に関する深い理解が求められます。
対策
1. 理論・計算分野の徹底強化
気体の状態方程式、化学平衡(Kc と Kp)、溶解度積、酸塩基平衡(pH、加水分解定数)、熱化学計算(ヘスの法則、生成熱の定義)といった理論化学のコア分野は、単なる暗記ではなく、計算過程の論理を完全に理解し、正確かつ迅速に計算できるように訓練する必要があります。特に、単位換算や有効数字の扱いにも注意が必要です。
2. 応用テーマへの慣れ
COD や溶存酸素濃度、コロイドの凝析、硫化物の沈殿分離といった、環境分析や定性分析の具体的な手法に関する知識を整理し、関連する計算問題に慣れておく必要があります。
3. 有機・高分子化学の網羅的学習
構造決定問題(特にアルコール、エーテル、カルボニル化合物などの異性体)は、ヨードホルム反応、酸化反応、脱水反応といった基本反応を組み合わせたものが頻出します。また、高分子化学では、合成繊維の構造式、重合の種類(付加・縮合・開環)、そしてイオン交換樹脂や吸水性高分子などの機能性高分子の作用原理と構造まで、細部まで知識を固める必要があります。
4. 過去問演習によるスピード養成
70分という限られた時間で、これだけ多様で計算量の多い問題を処理するためには、時間配分を意識した過去問演習が不可欠です。計算問題の速度と精度を上げることが、合格に直結します。
例え話による理解の強化
東海大学医学科の化学の入試は、特定の道具(特定の分野の知識)だけを使いこなせば良い「専門職人」の試験ではなく、「化学世界の総合エンジニア」を測る試験に似ています。
例えば、ダム(結晶構造)の強度を計算しつつ、その周りの水質(溶解平衡や pH)を測定し、さらに環境変化(ルシャトリエの原理)が水温(熱化学)にどう影響するかをすべて同時に、かつ正確に計算することが求められます。知識の定着はもちろんのこと、複数の知識を連携させ、複雑な計算を淀みなく実行する「統合力」が成功の鍵となります。