帝京大学 一般選抜 出題傾向 国語
傾向と対策の概要
帝京大学医学部の国語の試験は、大問が評論(現代文)を中心とした必須問題と、評論、随筆、古文、漢文から選択する4題(または3題)の選択問題で構成され、2科目合計120分という形式が継続しています。
出題される評論は、哲学、文化人類学、社会学、言語学など、高度に専門的かつ抽象度の高いテーマを扱い、受験生には深い読解力と論理的思考力が求められます。特に、漢字の読み書きや、厳密な字数指定のある要点記述(30字以内など)が頻繁に出題され、知識と表現力の両方が試されます。
合格のためには、専門的な文章を迅速かつ正確に読み解く力、古典文法の確かな知識、そして論理的な要約力が不可欠となります。
試験形式の安定性と構成
試験形式は全体を通して非常に安定しています。
時間と科目構成
| 試験時間 | 2科目(国語および他の科目との組み合わせ)、合計120分 |
|---|---|
| 必須問題 | 大問1題(全員解答必須)。長文の現代文(評論)で構成されることが通例。 |
| 選択問題 | 大問4題中2題を選択。 内容は現代文評論、随筆、古文(物語文学や説話集)、漢文(思想書や歴史書の一節)から選択。 |
出題形式の詳細
- 漢字: 傍線部のカタカナ部分を漢字に改める問題が毎年の必須問題および選択問題で出題されます。
- 空欄補充: 文脈に合致する語句や接続詞を選択肢から選ぶ問題。
- 内容合致: 本文の内容と合致するものを複数(または一つ)選択する問題。
- 記述/抜き出し: 傍線部の内容の説明や、字数指定(例:30字以内)のある要約記述が頻出します。
試験形式の大きな変化
問題形式そのものに大きな構造的な変更は見られません。
しかし、近年では、必須問題と選択問題の区別が名称上は薄れ(例:2022年度以降、問題番号が通しで振られている場合がある)、現代文が必須問題とは別に複数題出題されるなど、評論の比重がさらに高まる傾向が見られます。
また、選択問題における古文・漢文は引き続き出題されていますが、古文・漢文を苦手とする受験生への配慮として、選択肢に現代文評論や随筆が充実しており、選択問題の柔軟性は維持されています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは一貫して抽象的な概念や社会構造、人間観を扱います。
現代文(評論・随筆)の主なテーマ
- 文化・思想の比較: 西洋(キリスト教、近代合理主義)と東洋(神道、儒教、日本的な自然観)の比較対照。
- 例:「神道には哲学はない。体系的な倫理も、抽象的な教理もない」という神道の特異性と価値。
- 例:キリスト教的自然観が近代合理主義の支柱となった背景。
- 例:唯物論と唯心論が激越に対決しなかった日本人の思惟方法。
- 例:ニーチェと東アジア哲学における「尊厳」概念の比較。
- 身体・認識・空間: 人間の身体感覚と空間認識、想像力と論理的思考、現実の多層性など。
- 例:空間感覚は身体構造によって価値的に識知され、構造的に理解されていること。
- 例:現代芸術における「手」の働き(肉体労働)の欠如とイメージの放出。
- 例:精神遅滞の子どもが持つ、感覚の直接的な体験世界。
- 社会・言語・コミュニケーション: 言語の役割、自己と他人、社会における規範や権力構造。
- 例:自己の純化の試みの失敗と、自己の成立における他人の関与。
- 例:ことば以外の媒体も含む「通達可能性」がコミュニケーションの基盤となること。
- 例:権力の二面性(国境を引く権力と「群れ」の生存に関心を持つ権力)。
- 例:組織における男女差別とジェンダー規範。
- 科学・技術・死生観: 近代科学技術の発展、死のリアリティ、認知症とケア。
- 例:近代科学技術による「現実の多層性」の忘却と「極めて単層的な世界」への移行。
- 例:終末論的な思考習慣と未来の他者への配慮。
古文・漢文
| 古文 | 『沙石集』、『源氏物語』、『徒然草』、『更級日記』、『宇治拾遺物語』 など、説話集や物語文学からの出題が中心。 |
|---|---|
| 漢文 | 『師説』 や『史記』 など、思想的・歴史的な文章からの出題が多い。 |
特徴的な傾向
- 専門的な評論の採用と多角的視点の要求: 現代文のテーマは医学部の入試として、哲学や倫理学、心理学など、人間存在や社会の根源に関わる学術的な文章を好んで選びます。また、一つの概念(例:「尊厳」、「普遍性」、「風景」)を、西洋と東アジア、あるいは近代と現代など、複数の視点から多角的に分析する力を要求されます。
- 厳密な記述解答の要求: 字数指定のある記述問題(例:30字以内)では、本文の論旨を正確かつ簡潔にまとめあげる高い要約力が問われます。論理の「要点」を掴み、指定された文字数で過不足なく表現する訓練が不可欠です。
- 語彙力と知識の総合テスト: カタカナ表記された専門用語(例:払拭、啓示、象徴性)や慣用的な表現(例:意表、沽券)の漢字への変換、または文脈上の意味を問う問題が豊富です。
- 「客観性」への注力: 内容合致問題や記述問題では、あくまで本文で述べられている事柄に基づいて解答する姿勢が求められます。本文外の一般知識や推測を排し、論理的な裏付けを厳密に行う必要があります。
対策
1. 現代文(評論)対策
- 専門用語・概念理解の強化: 哲学(特に西洋と東洋の思想対比)、社会学、文化人類学など、出題傾向の高い分野の抽象概念(例:普遍性、想像力、エンクロージャ、父性・母性社会)を積極的に学習し、その定義と論理的関係性を明確に把握する。
- 読解スピードと精度: 120分で2科目(国語+他科目)をこなすには、長文評論を速く正確に読む訓練が必須です。特に、筆者の主張、それに対する具体例や逆説(パラドックス)の関係性を明確に区別して読み進める力を養います。
- 記述・要約訓練: 厳密な字数指定に対応できるよう、30字程度の要約を日常的に行う必要があります。要点を絞り込み、冗長な表現を避ける練習を徹底します。
2. 知識・語彙対策
- 難解な漢字の読み書き: 評論で頻出する熟語や、文脈特有の読み方をする漢字を重点的に暗記します(例:鼓動、喚起、庇護)。
- 空欄補充の論理: 接続詞(しかし、したがって、つまり、むしろ)や指示語の示す内容を正確に把握し、前後の論理関係に基づき適切な語句を選択する練習を重ねます。
3. 古文・漢文対策(選択者向け)
- 古文文法と単語: 助動詞、助詞、敬語の正確な知識を習得し、入試頻出の古文単語(例:「いみじ」「あさまし」「ゆかし」など)を確実にする。
- 漢文句法と訓読: 頻出の句法(再読文字、疑問形、反語形、使役、受身など)を習得し、正確な訓読・現代語訳ができるように訓練します。特に「所以(ゆえん)」などの重要な訓読語句は要確認です。
この入試の対策は、まるで精密な機械を扱う外科医の訓練に似ています。高度な知識(専門概念、古典文法)を基盤としつつ、制限時間内に、一言一句を見逃さずに正確に読解する集中力、そして要求された字数で論理の核心を突き止める表現の精緻さが求められているからです。