昭和医科大学 一般選抜 出題傾向 物理
Ⅰ期
傾向と対策の概要
昭和医科大学医学部の物理は、過去の出題を分析すると、大問4題構成を維持しつつ、出題されるテーマの難易度に幅があるのが特徴です。多くの問題は教科書や標準的な問題集で扱われる典型的な問題ですが、一部に微分積分を伴う導出問題や、物理現象の原理を説明させる論述問題、複雑な数値計算が含まれるため、確実な得点と時間配分の管理が重要となります。
物理、力学、電磁気、熱力学、波動、原子物理の全分野から幅広く出題されており、特定の分野に偏りすぎないバランスの取れた学習が求められます。
試験形式の安定性と構成
- 形式の安定性: 2018年度から最新年度まで、試験形式は極めて安定しており、大問4題で構成されています。
- 時間: 2科目で140分という制限時間も一定です。
- テーマ構成: 大問はさらにA、Bなどの小問に分かれることが多く、全体として5~7つの異なるテーマが出題される傾向があります。
試験形式の大きな変化
大問数や制限時間といった形式自体に大きな変化は見られません。しかし、出題内容において、論述問題や知識問題の比重が増加している点が注目されます。
- 論述/説明問題の定着: 60字から200字程度の文字数制限を伴う記述式の説明問題が散見されます(例: 電球の抵抗値変化の理由、ミリカン油滴実験における抵抗、月の潮汐力による重さの変化の説明、宇宙空間での質量測定方法、水飲み鳥の原理)。
- 内容の多様化: 従来の傾向にとらわれず、幅広い分野から出題される傾向があります。
- グラフ作成: ドップラー効果や速度変化など、解答用紙のグラフに時間変化を図示させる問題が出題されています。
出題分野や出題テーマの傾向
| 分野 | 主な出題テーマ (2018-2025) | 頻度/特徴 |
|---|---|---|
| 力学 | 円錐振り子/円運動、空気抵抗下での運動(微分必要)、斜面上の運動とデータ分析、滑車と物体の運動、放物運動、万有引力・ケプラーの法則(楕円軌道、潮汐力)、単振動(2体問題含む) | 高頻度。複雑な設定や、微分積分を利用した導出が必要な難易度の高い問題も含まれる。 |
| 電磁気 | ダイオード/整流回路、電球を含む直流回路、コンデンサーの充電/RC回路(微分方程式/類似性の理解が必要)、自己/相互誘導、回転導体棒の誘導起電力、RLC交流回路(共振含む)、電場・磁場中の電子の運動(トムソン型) | 高頻度。回路や現象の原理理解を問う問題、交流回路の典型的な問題が出やすい。 |
| 熱力学 | 理想気体の状態変化(サイクル、熱効率)、気体の混合と断熱変化、気体分子運動論(圧力の導出)、知識・論述問題(水飲み鳥、ヨーヨー風船) | 安定して出題。グラフの読み取りや、熱力学第一法則に基づいた計算が中心。分子運動論は完答を目指すべき基本問題。 |
| 波動 | 薄膜による光の干渉(垂直/斜め入射、くさび形)、レンズ/凹面鏡による像、光ファイバー/全反射、ドップラー効果(斜め方向、反射体、円運動) | ほぼ毎年出題。光学と音波の知識が広く問われる。干渉では位相変化の条件理解が必須。 |
| 原子物理 | 放射性崩壊/半減期(積分による導出)、X線の発生と特性、電子線のブラッグ反射/ド・ブロイ波長、核融合反応 | 定着分野。基礎知識に加え、計算問題や式の導出が求められる。 |
特徴的な傾向
- 微分積分を要する問題の出題: 半減期の式を積分を用いて導出させる問題、空気抵抗がある場合の運動方程式、コンデンサーの充電における時定数の導出など、微分方程式の解法を知っていることが有利な難易度の高い問題が出題されます。
- 知識・論述による高得点争い: 物理現象や回路の原理について、限られた字数で説明を求められる論述形式が複数出題されます。比較的易しい問題と難易度の高い問題が混在し、論述問題は高得点争いのポイントとなります。
- 複雑な計算と数値処理: 万有引力や波動のテーマで、複雑な数値計算(例: 円運動の周期計算、天体の密度計算)や、対数を用いた計算が要求されることがあります。
対策
- 基本問題の確実な習得と完答: 出題される問題の多くは標準的であるため、基本〜標準レベルの問題(回路の基本問題、気体分子運動論、薄膜による干渉など)はすべて完答できるように基礎を固めてください。
- 微分積分を用いた導出練習: 空気抵抗、放射性崩壊、コンデンサーの充電といった、物理量の時間変化を扱う問題については、導出過程を理解し実際に計算する練習が必要です。
- 論述・知識問題への準備: 教科書に記載されている現象の原理(熱力学の特殊な変化、ダイオードの動作原理など)を、制限字数内で簡潔かつ正確に説明できる記述力を養ってください。
- 分野を横断した総合対策: 力学、電磁気、熱力学に加え、波動(特に干渉やドップラー効果)や原子物理についても標準的な知識と計算手法を身につけ、全分野を広くカバーしてください。
- 時間配分と計算力の強化: 140分で2科目を解く必要があるため、煩雑な数値計算を正確かつ迅速に行う訓練や、難易度の高い問題に時間をかけすぎない判断力が重要です。
学習のヒント: 昭和医科大学医学部の物理の対策は、「多機能なツールボックス」の準備に例えられます。標準的な作業(標準問題)を迅速に行いつつ、特殊な道具(微分積分や特定現象の深い知識)を使わなければならない難問や、論述問題にも対応できる準備が合格への鍵となります。
Ⅱ期
傾向と対策の概要
Ⅱ期入試は、力学、電磁気学、波動、熱力学、原子物理の物理学全分野から幅広く出題されています。特に、基礎的な原理の理解に加え、複雑な設定(相対運動、分離、干渉など)における正確な計算力と、物理現象に関する記述力が求められる点が特徴的です。また、原子物理や医療応用に関するテーマが継続的に出題されており、この分野の対策が合否を分ける重要な鍵となります。
試験形式の安定性と構成
- 構成: 物理全体で複数の大問(通常3〜4題)から構成され、各テーマが独立した問いに分かれています。
- 出題バランス: 通常「物理(その1)」と「物理(その2)」に分かれており、各分野からバランスよく出題されています(例: 力学、波動、原子物理など)。
試験形式の大きな変化
物理の出題内容や形式自体に継続的な大きな構造的変化は見られませんが、以下の特記事項があります。
- 問題文の訂正の発生: 過去の入試(2019, 2020年度)において、問題文の訂正が行われた記録があります。
- 小論文の導入: 2021年度には理科とは別に小論文が出題されており、入試全体の構成要素として変化が見られます。
出題分野や出題テーマの傾向
力学と電磁気学は毎年出題されており、波動と原子物理も高頻度で登場します。
| 分野 | 主なテーマ(出題例) |
|---|---|
| 力学 | 2次元衝突、運動量・エネルギー保存、剛体のつりあい・てこ、慣性力・振り子・ばね振り子、円運動とエネルギー、相対運動・重心・連成系 |
| 電磁気学 | 電磁誘導(終端速度)、LC回路・減衰振動、電池の内部抵抗・回路測定、コンデンサー(直列・並列、誘電体) |
| 波動 | 光の干渉(ヤングの実験、ニュートンリング、回折格子)、音の干渉(クインケ管、共鳴)、横波の伝播・定常波、波の屈折(記述問題) |
| 熱力学 | 気体分子運動論(圧力、内部エネルギー、二乗平均速度) |
| 原子物理 | 原子核崩壊、放射線の性質(α, β, γ線)と医療応用(PET)、光電効果、コンプトン散乱 |
特徴的な傾向
- 高度な現代物理の出題: 原子物理の出題が単なる知識に留まらず、計算や原理の理解を深く問う傾向があります(例: コンプトン散乱における保存則適用と波長変化の導出)。
- 医学部らしい記述問題: 放射線の性質と医療への応用(PET)や、月食の色の理由、波面の変化の理由など、科学的な背景を記述させる問題が散見されます。
- 複雑な応用力学の設定: 複数の物体が関わる複雑な連成系や、条件の変化(衝突、分離、摩擦)を伴う応用問題が頻出しています。
- 基礎からの厳密な導出: 物理法則を式で記述させたり、近似を使わず関係式を記述させたりするなど、原理原則を厳密に理解しているかを問われます。
対策
- 現代物理と医療関連トピックの重点対策: 原子物理(特に核反応、放射線、量子論)は毎年出題される重要な分野です。計算と原理説明の両面から対策を徹底する必要があります。
- 力学・電磁気学の応用力強化: 力学では慣性系・非慣性系、連成運動、摩擦や分離の条件を含む問題を、電磁気学では電磁誘導やコンデンサーの誘電体挿入などを重点的に練習してください。
- 記述問題の練習: 物理的な現象や法則を論理的に説明する記述練習が必須です。指定された字数内で正確に記述できるように準備してください。
- 過去問を用いた時間配分と訂正への対応: 時間配分の訓練に加え、試験中に問題文の訂正がある可能性も考慮し、慌てずに対応できる精神的な準備をしておくと良いでしょう。
イメージ: Ⅱ期入試の傾向は「外科医の手術訓練」に似ています。物理の基本原理を完全に理解していることは前提として、高度な最新技術(現代物理・応用)を使える知識と、予期せぬ事態(複雑な設定や訂正)に対応するための正確で迅速な判断力が試されます。