日本医科大学 一般選抜 出題傾向 英語
傾向と対策の概要
日本医科大の英語入試は、例年90分間の試験時間内に、非常に長い読解問題、語彙・文法・発音アクセントに関する総合問題、およびテーマ型自由英作文を解く形式が続いています。特に近年の傾向として、読解問題の文章量が1800語から2000語近くに及ぶ長文、または4ページ全体にわたる超長文(2025年度)が出題されることが常態化しており、高い読解速度と集中力が求められます。
試験の難易度は、専門知識を問うものではありませんが、論理的思考力や、複雑な内容を正確に把握し、その根拠を記述する能力が試される傾向にあります。時間配分が合否を分ける重要な要素となっています。
試験形式の安定性と構成
試験時間は2018年度から一貫して90分です。 大問構成は年によって4題または5題と変動していましたが、2021年度以降は読解問題、テーマ英作文、発音・アクセント・語彙・文法問題の3題構成に収斂しています。
| 年度 | 大問数 | 構成要素の例 (主要な出題形式) |
|---|---|---|
| 2018 | 5題 | P&A/単語, 読解(MC), 読解(記述), 語形変化/誤り指摘, 自由英作文 |
| 2019 | 4題 | P&A/文法/語彙, 読解(MC), 自由英作文, 読解(記述) |
| 2020 | 5題 | 読解(記述), テーマ英作文, 読解(文法), P&A/語彙, 読解(MC) |
| 2021 | 3題 | 読解(混合), P&A/語彙, テーマ英作文 |
| 2025 | 3題 | 読解(混合), テーマ英作文, P&A/語彙 |
読解問題では、記述式(日本語または英語での説明)とマークシート式が混在して出題されます。特に記述式の問題は、選択肢の正誤判定だけでなく、その根拠を文章の具体的な内容に照らして日本語で説明させる形式が多く見られます。
試験形式の大きな変化
- 発音・アクセント問題の独立/統合: 2018年度に発音・アクセントが大問として初めて出題されました。その後、P&Aと語彙・文法は統合され、大問Iまたは大問IIIのどちらかに配置される形式が定着しています。
- 長文化と記述量の増加: 自由英作文(テーマ英作文)は2016年度から出題されていますが、2018年度以降、解答欄の大きさから例年以上の記述量(100語〜180語程度)が要求される傾向があります。
- 文法的な誤り指摘問題の定着: 2020年度に文法的な誤り指摘問題が出題され、2022年度以降も継続しています。2022年度には「誤りがない場合」の選択肢が加わり、難易度が上がりました。
- 複数解答問題の増加(2025年度): 2025年度入試では、マークシート式の問題(全6問)のうち、4問が「当てはまるものをすべて選ぶ」形式となり、正解の個数に迷いやすい構成となっています。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは、医学部入試でありながら、心理学、社会学、倫理、科学哲学、認知科学といった、学際的でアカデミックな分野から選ばれています。
| 年度 | 主なテーマの例 | 関連する学問分野 |
|---|---|---|
| 2019 | 確証バイアス、ダチョウ効果(情報忌避) | 心理学、行動経済学 |
| 2020 | 認知的人工物(そろばん、電卓、数学)、人類進化論 | 認知科学、人類学 |
| 2021 | 臓器提供の同意形式(明示的同意、推定的同意など) | 医療倫理、公共政策 |
| 2022 | オンライン・リーディングと認知の変化 | 認知科学、メディア論 |
| 2023 | インポスター症候群と自信・能力の関係 | 心理学、リーダーシップ論 |
| 2024 | 社会的流行(コンテイジョン)を生み出す原則 | 社会心理学、マーケティング |
| 2025 | 長寿化社会における医療選択(「75歳以降はいらない」論) | 医療倫理、公衆衛生 |
全体として、現代社会が直面する倫理的・認知的な課題や、最新の科学的知見を扱う文章が多く、受験生がある程度の予備知識を持っていると有利になる可能性があります。
特徴的な傾向
- 読解における論理性の重視: 単なる内容把握に留まらず、筆者の主張の目的、特定の事例が何を裏付けているのか、あるいは筆者の見解が何に依拠しているのかといった論理構造を問う設問が頻出します。
- 根拠の記述の徹底: 選択問題であっても、その選択肢を選んだ具体的な理由や根拠を、本文の内容に照らして日本語で記述させる問題が特徴的です (例: 2019年度問4, 2021年度問3・問4, 2025年度問5)。これは、深い理解を要求する形式です。
- 語彙力の多角的評価: 単語の意味や発音だけでなく、複数の単語に共通する意味を持つものを選ばせる問題(2019年度)や、複数の記述に一致する単語をすべて選ばせる問題(2020年度IV問4〜8)、文脈に応じて動詞を適切な形に直して空所を埋める問題(2020年度I問1など)など、多角的な語彙・語法知識が問われます。
- アカデミック・ライティングの要求: 自由英作文では「学術的な形式で書きなさい (Write your essay in academic style)」という指示があり、論理的で明確な構成(序論・本論・結論)が求められます。
対策
- 時間配分の徹底: 90分間で長文読解(約2000語)と記述、そして英作文をこなす必要があります。発音・アクセントや語彙・文法問題に時間をかけすぎず、読解問題と英作文に十分な時間を確保する練習が必要です。
- 長文読解の効率化: パラグラフごとに要点を把握し、筆者の主張や論理展開を整理しながら読む訓練を積むことが必須です。特に学術的なテーマ(認知、倫理、政策など)については、背景知識を意識しながら読むと理解が深まります。
- 記述問題対策: 選択肢の正誤だけでなく、「なぜそう判断したのか」を本文の具体的な記述を引用・要約して説明する練習を繰り返してください。根拠を明確に示すことが重要です。
- 英作文対策: 100〜180語程度のアカデミックなエッセイを、序論、本論、結論の構成で書く訓練が必要です。本論では、本文のテーマに沿った具体的な事例や理由を明確に提示できるように準備しておきましょう。
- 語彙・文法対策: 辞書的な知識だけでなく、同義語・反意語や、動詞の語法、特に文法的な誤りを含む箇所を正確に指摘できる応用的な文法力が求められます。
例え話による補足
日本医科大の英語入試は、まるで「90分間のマラソンで、ただ速く走るだけでなく、途中で出題されるチェックポイント(記述問題の根拠)と、ゴール直前に課される論文提出(英作文)をこなす能力」を試されているようなものです。長文を速く正確に読み解き、複雑な問いに論理的に答える持久力と、アカデミックな表現で自己の見解を述べる構成力が不可欠となります。