日本大学 一般選抜 出題傾向 物理
傾向と対策の概要
日本大学医学部の物理試験(2018年度〜2025年度)は、高校物理の全範囲(力学、熱力学、波動、電磁気、原子物理)から偏りなく幅広く出題されているのが大きな特徴です。
問題形式は、基礎的な知識の確認だけでなく、物理法則の適用、複雑な設定での立式、および詳細な計算や代数的な操作を要求するものが多く見られます。特に、複数の物理現象や段階的な状態変化を含む複合的な問題設定への対応力が求められています。
試験形式の安定性と構成
試験形式は、調査期間を通じて非常に安定しています。
- 試験時間: 継続して60分で実施されています。
- 大問構成: 大問は例年、IからVまでの5題で構成されています。
- 設問数と形式: 各大問は通常5つの小問に分かれており(合計25問程度)、すべての設問が択一式のマークシート方式となっています。
- 解答プロセス: 解答群から最も適切なものを一つ選ぶ形式であり、途中経過や導出過程が明確に示されていなくても、最終的な計算結果が正確に求められている必要があります。
試験形式の大きな変化
2018年度から最新の2025年度までの抜粋された資料に基づくと、試験形式や構成における大きな変化は認められません。出題分野の構成も安定しており、各分野からバランスよく出題されています。
出題分野や出題テーマの傾向
全分野から満遍なく出題されますが、特に以下のテーマが頻出しています。
| 分野 | 頻出テーマの傾向(例) | 該当年度(例) |
|---|---|---|
| 力学 | 運動量保存則、エネルギー保存則、単振動(衝突を伴うものを含む)、慣性力、摩擦力を伴う複合的な運動。斜面上の衝突や台上の運動など、多体問題の設定が多い。 | 2018〜2025 |
| 熱力学 | 理想気体の状態変化(定積、定圧、等温変化)、熱力学第一法則、内部エネルギーの計算、熱効率の導出。気体の混合、自動膨張など、複数の状態変化を含むサイクル問題も頻出。 | 2018, 2020, 2022〜2025 |
| 波動 | ドップラー効果(音波)、ヤングの干渉実験、薄膜やニュートンリングを含む光の干渉、弦の定常波と共振。干渉条件や光路差を正確に求める問題が中心。 | 2018〜2025 |
| 電磁気 | コンデンサー回路(充電・放電、誘電体挿入、ジュール熱)。電磁誘導(ローレンツ力、誘導起電力、RL回路の過渡現象)。クーロンの法則と電位・電場。回路計算では重ね合わせの原理も出題。 | 2018〜2025 |
| 原子物理 | 光電効果、ボーア模型(量子条件、振動数条件)、X線(最短波長)、コンプトン効果、核反応(核融合、核分裂)。基本原理に基づく計算や導出が必須。 | 2018〜2025 |
特徴的な傾向
法則の統合と応用
単に一つの法則を問うだけでなく、運動量保存則、力学的エネルギー保存則、慣性力、熱力学第一法則など、複数の基本法則を組み合わせて解かせる問題が目立ちます。特に、力学では、可動な台上の運動や斜面衝突など、観測系の設定や力の分解が複雑になる問題が出やすい傾向にあります。
理論の導出と代数処理能力
原子物理分野や一部の波動分野では、ボーアの量子条件やド・ブロイ波長などの基本原理から、軌道半径やエネルギー準位を代数的に導出する過程を問う設問が含まれます。コンプトン効果の波長の伸びを求める際など、問題文で近似式が示唆されることもあります。
現代物理の重要性
原子物理(光電効果、ボーア模型、核反応)は毎年欠かさず出題されており、その配点も大きいと予想されます。基本知識だけでなく、導出の論理を理解しているかが問われます。
対策
上記の傾向を踏まえ、合格に向けた対策としては、以下の点に注力することが求められます。
1. 全分野の網羅と基礎固め
すべての分野から満遍なく出題されるため、特定の分野を捨てることはできません。特に力学、熱力学、電磁気、原子物理の基本法則とその適用条件を徹底的にマスターする必要があります。
2. 応用・複合問題への慣れ
複数の物体や法則が関わる問題、あるいは状態が段階的に変化する問題(例: 熱サイクル、コンデンサーの充放電と誘電体挿入)の演習を重点的に行い、現象を正確に分析し、適切な法則を適用する練習が必要です。
3. 計算力の強化
解答は数値または文字式での選択式ですが、その導出には正確な計算力と代数操作能力が不可欠です。短時間で複雑な文字式を整理し、誤りのない結論を導き出す訓練が必須となります。
4. 現代物理の原理理解
原子物理分野は単なる公式暗記ではなく、ボーアの量子条件やエネルギー保存則といった根拠となる物理法則から、必要な式(例えば、軌道半径やエネルギー準位)を導出できるように準備しておくことが、得点源に繋がります。
この試験は、5つの異なる国の言語(物理の5分野)を習得し、さらにそれぞれの国で複雑な交渉(複合問題)を、正確な計算機(代数処理能力)を使って短時間でこなすことを要求する「国際貿易試験」のようなものです。基礎的な文法(基本法則)が完璧であることに加え、現場での応用力とスピードが決定的な要素となります。