近畿大学 一般選抜 出題傾向 英語
前期日程
傾向と対策の概要
近畿大学医学部の英語入試は、高度な学術的な内容の読解力、幅広い語彙・イディオムの知識、および精密な英文構成能力を総合的に評価する傾向が継続しています。特に、生命科学、認知科学、先端技術(AI、宇宙開発)、および医療倫理といった医学部志望者に求められる専門性と教養を試すテーマが頻出しています。
設問形式は多岐にわたり、短い時間(60分)で多種類の問題(語彙、和訳、整序、長文読解)を正確に処理する能力が求められます。
試験形式の安定性と構成
試験時間(60分)は一貫して安定しています。試験の全体構成は、初期の年度(2018年〜2020年)ではI〜Vのローマ数字で区分されていましたが、近年(2021年以降)はA〜Hのアルファベット区分で、複数のセクションに分かれる形式が定着しています。
主要な構成要素は以下の通りです。
| 区分 | 2018年〜2020年頃 | 2021年以降 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 短答問題 | I (語彙・文法), II (和文英訳), III (整序英作) | A (語彙), B (類語・イディオム), C (文脈語彙) | 基礎的な知識と表現力のチェック |
| 長文読解 | IV, V (長文読解) | D, E, F, G, H (長文読解/設問) | 専門的なテーマの読解と深い理解力のチェック |
特に和文英訳(II)は、2018年度や2019年度では文法や意味から最も適切な英訳を選ぶ形式で出題されており、整序英作(III)は高度なイディオム知識を問う傾向があります。
試験形式の大きな変化
セクションの表記方法の変化が最も大きな形式上の変化です。2020年度までのI、II、III、IV、Vというローマ数字のセクション表記が、2021年度以降、A、B、C、…というアルファベット表記に切り替わりました。
内容的には、和文英訳(II)の独立した大問としての比重が下がり、その要素が短答式のイディオム・コロケーション問題(セクションB, C)や長文読解(E, G, Hの設問)に統合されることで、より効率的に多様な能力を測る形式へと移行したと考えられます。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは、最新の科学的知見、医学・生物学の専門知識、および科学に関連する社会倫理的課題に重点を置いています。
先端科学・技術
- AIと認知能力、AI革命が人間に与える影響。
- ディープフェイク技術の功罪と応用(教育・医療)。
- 宇宙開発(SpaceX、木造人工衛星、宇宙太陽光発電)。
- 脳波の解読技術(ブレインマシンインターフェース)。
医学・生物学
- 認知的不協和理論。
- 幹細胞を用いた嗅覚回復実験。
- 極度な早産の長期的な影響と新生児医療の進展。
- ヒトゲノムの新しい遺伝子(ミニプロテイン)の同定。
- 進化生物学(拡張された進化総合説 EES)。
社会科学・環境科学
- 相関関係と因果関係の区別(科学的誤謬)。
- 気候変動が動物種や感染症拡大に与える影響。
- 10代の脳の発達とリスク行動に関する神経科学的解釈。
- ChatGPTの教育現場での使用と課題。
長文読解の文章は、NatureやScience誌、専門的な書籍などから引用されたアカデミックで硬質な英文が中心であり、論理展開を深く理解することが求められます。
特徴的な傾向
高度な語彙力とイディオム知識
選択肢の単語や、和文英訳のニュアンスに合うイディオムが非常に難解です。例:「倹約的な」(frugal)、「粉砕する」(pulverize)、「損害を与える」(take a toll on)、「〜に屈する、亡くなる」(succumbed to)、「〜を犠牲にして」(at the expense of) など、アカデミックかつ実用的な語彙の習得が不可欠です。
整序英作では、特定のイディオム(例:get your act together「襟を正す」、take with a grain of salt「話半分に聞く」、on no account「決して〜ない」)の知識が直接問われます。
英文解釈の正確性
長文読解では、単なる内容一致ではなく、筆者の主張の論理的な根拠や、特定の表現のレトリック上の意図(例:「愚者」の持つ肯定的な意味合い、NASA職員に関する含意)を問う設問が特徴的です。
医学的背景の知識が有利に働くテーマ選定
出題テーマが生命科学や医療技術に密接に関わるため(例:ALS、界面活性剤、幹細胞、遺伝子)、これらの分野の背景知識があれば、読解速度と理解度が向上します。
対策
専門分野の英語に触れる訓練
医学・科学分野の英文(例:Nature, Science, Scientific American)を日常的に読み、学術論文の構成や論理展開に慣れることが必須です。特に最新のトピック(AI、気候変動、遺伝学など)に関する知識を英語で仕入れることで、読解のスピードと深度を確保できます。
高難度語彙・イディオムの系統的学習
難関大医学部レベルの学術語彙集を用いて、短答問題や長文読解の難解な語彙(セクションA, B, C)を克服します。整序英作や和文英訳対策として、慣用表現や句動詞を正確な使い方(前置詞の選択など)とともに覚える必要があります。
時間配分の徹底
60分という限られた時間で、多様な短答問題と、複数の長文読解を処理しなければなりません。短答問題(A, B, C)を迅速に解き、長文読解に集中するための時間を確保する戦略的な時間管理が求められます。
この試験は、受験生が将来的に国際的な科学コミュニティで活躍するための高度な情報収集力と論理的思考力を持っているかを測る試金石となっています。外科医が複雑な手術室で多くの専門機器とチームを動かし、予期せぬ事態に遭遇しつつも冷静に目標を達成する能力に似ており、知識の量だけでなく、それを正確に運用する実戦的な能力が最も重要となります。
後期日程(2018年度~2024年度)
傾向と対策の概要
近畿大学医学部の英語入試(後期)は、アカデミックで専門性の高い英文の読解力を中心に、極めて高度な語彙力、イディオム知識、そして正確な文法・表現力を総合的に試す構成が継続しています。試験は短答式(語彙・文法・整序)と長文読解で構成されており、特に長文テーマは生命科学、環境問題、先端技術、医療史など、医学部志願者にふさわしい教養と知識を要求するものが選定されています。
試験形式の安定性と構成
試験時間(資料には明記されていませんが、構成から見て制限時間が厳しいことが示唆されます)と出題領域は安定しています。
| 年代区分 | セクション表記 | 出題領域の傾向 |
|---|---|---|
| 2018年度~2020年度 | ローマ数字 (I, II, III, IV, V) | I, II (語彙・文法、和文英訳選択)、III (整序英作)、IV, V (長文読解) |
| 2021年度~2024年度 | アルファベット (A, B, C, D, E, F, G, H) | A, B, C (語彙・イディオム、類語選択)、D~H (複数の長文読解) |
短答問題(A, B, Cなど)では、単純な語彙力だけでなく、文脈に合ったコロケーションやイディオムの知識が問われています。長文読解セクションは複数の大問(D/E、F/G、Hなど)で構成され、詳細な内容理解が求められます。
試験形式の大きな変化
セクション表記方法の変更が最も明確な形式上の変化です。2020年度までのI~Vというローマ数字の区分から、2021年度以降はA~Hというアルファベットの区分に切り替わっています。
内容的な変化としては、2020年度以前に見られた、日本語の文章に対して最も適切な英訳を選ぶ形式(特にII)が、近年では純粋な語彙・イディオム選択や同義語選択(A, B, C)へとより特化・細分化されている傾向が見られます。これにより、知識問題の比重がより明確になり、多角的な基礎知識の精度が問われるようになりました。
出題分野や出題テーマの傾向
出題テーマは一貫して高度な学術的・専門的な内容であり、多岐にわたりますが、特に生命科学、環境、医療、先端技術に関するテーマが頻出しています。
生命科学・医学・歴史
- 北里柴三郎の功績(破傷風、ジフテリアの予防法、腺ペスト原因菌の発見、血清療法)。
- Long COVIDの症状の持続性。
- ストレスと白髪化の関係(色素産生細胞、交感神経系、ノルエピネフリン)。
- 犬の老化に関する研究(DNAメチル化、エピジェネティック時計)。
環境・エネルギー・先端技術
- 海洋汚染と生態系(カキ礁の役割と危機的状況)。
- 日本の再生可能エネルギー政策(福島県の太陽光発電・風力発電計画と景観問題)。
- 新しい淡水化技術(波力発電ブイを用いた逆浸透膜システム)。
- 汚水処理(日本のトリチウム含む汚水排出を巡る国際的な議論)。
認知科学・進化
- カラス科の鳥(カラスやカササギ)の認知能力(パターン認識、人工物利用)。
- 地球の移動する磁極と北極光。
特徴的な傾向
難解な語彙・イディオムの徹底的な出題
日常会話レベルを超えた学術的な高難度語彙(例:depleted「減少した」、resilience「回復力」、ascertain「確認する」、susceptible「感染しやすい」)が短答問題や長文中の空所補充で問われます。
イディオム知識も非常に高度であり、整序英作では慣用表現(例:down in the dumps「意気消沈して」、one-size-fits-all「画一的な」) や、類語選択では表現(例:hit the spot「申し分ない」、leave no stone unturned「あらゆる手段を尽くす」、wide of the mark「的を外れた」)が直接問われます。
正確な論理展開と文法構造の理解要求
2020年度の和文英訳選択問題では、「〜よりふさわしい時期はありません」という日本語のニュアンスを比較級を用いて正確に表現できているか、あるいは「深呼吸」をtake a deep breathと正しく言えるか など、極めて精密な文法・表現知識が要求されました。
科学的背景知識の重要性
長文読解のテーマが生命科学や医療技術に偏っているため、関連する背景知識を持っていると、内容理解の助けとなり、難解な専門用語(例:DNAメチル化、メラノサイト幹細胞、逆浸透膜)の意味を把握しやすくなります。
対策
最難関レベルの語彙・イディオムの徹底学習
医学部入試で頻出する専門性の高い語彙や、整序英作で問われるような複雑なイディオム、句動詞を体系的に学習し、即座に意味と用法を答えられるように訓練する必要があります。
医学・科学系の硬質な英文の多読
生命科学、環境問題、最新技術に関するアカデミックな英文(例:海外の科学誌の記事や専門的なニュース)を定期的に読み込み、専門的なテーマの論理展開と、詳細な情報を正確に把握する能力を鍛えるべきです。
正確な文法・表現の確認と運用
単なる文法知識だけでなく、日本文のニュアンスを正確に英語で表現するための、細部の表現(前置詞、コロケーション、適切な比較表現など)にこだわった学習が必要です。
実戦的な時間配分の確立
短時間で多くの難問を処理する必要があるため、短答式の語彙・イディオム問題を迅速かつ正確に処理し、読解問題に十分な時間を割くための時間配分を、過去問演習を通じて確立することが重要です。
この試験は、単に英語力だけでなく、将来医療従事者として求められる幅広い教養と、アカデミックな情報源から知識を正確に抽出する能力を測るものと言えます。複雑な科学文書を読むことは、顕微鏡で非常に細かな構造を観察し、その微細な違いが全体に及ぼす影響を正確に理解する作業に似ています。緻密さと集中力が成功の鍵となります。