慶應大学 一般選抜 出題傾向 物理
傾向と対策の概要
慶應義塾大学医学部の物理は、2018年度から2024年度まで、出題形式はほぼ例年通りに安定していますが、難易度は高い水準で推移しており、特に2020年度以降は難化傾向が見られます。
- 難易度: 2020年度〜2023年度にかけて、見慣れない設定や幅広い内容が出題され、非常に高いレベルが維持されています。
- 求められる能力: 確実な基本知識に加え、複雑な数値計算、詳細な論述・説明力、高度な問題設定を読み解く力が求められます。
- 特徴: 力学と電磁気を主軸に全分野から満遍なく出題。近年は眼球構造や放射線単位など、医学に関連する基礎知識が問われることもあります。
試験形式の安定性と構成
試験形式は、2018年度から2025年度にかけて大問3題構成(I、Ⅱ、Ⅲ)で安定しています。
| 大問 | 構成内容・特徴 |
|---|---|
| 大問I | 物理の全分野から出題される小問集合。力学、熱、気体、波動、原子分野など幅広い知識が問われる。 |
| 大問Ⅱ・Ⅲ | 比較的大きなテーマからの出題。主に力学、電磁気、波動の分野から出題される傾向が強い。 |
試験形式の大きな変化
大問構成自体に変化はありませんが、内容面で以下の変化が注目されます。
- 医学分野の直接出題の減少: 2016年度まで見られた医学特有の題材は、2018年度以降影を潜めています。
- 出題分野のバランス変動: 年度によってIが特定分野の大問形式になったり、融合問題が出題されたりと、比重が若干変動します。
- 論述・説明問題の増加: 2020年度以降、現象の原理を説明したり詳細な考察を求める問題が増加しており、記述力が重視されています。
出題分野や出題テーマの傾向
力学
単振動、万有引力、摩擦のある運動、衝突など、設定が複雑な問題が頻出します。
- 単振動・万有引力: 地球貫通列車や潮汐力(2022年度)といった発展的テーマ。
- 衝突と粒子運動: 2024年度のビーズ紐の運動など、見慣れない設定での出題。
- 斜方投射: 2025年度に出題。
電磁気
エネルギー収支や回路、磁場中の運動など、高度な計算量が求められる分野です。
- 回路とエネルギー: モーター発電機、電気自動車のエネルギー収支、LC回路(2024年度)。
- 電磁誘導: 2025年度の強磁性体の磁化特性を応用した磁場測定など、高度なテーマ。
波動・原子
原子分野は毎年のように大問Iで出題される重要分野です。
- 原子分野: 放射性崩壊、質量欠損、ボーアの量子論。2025年度は放射線の単位(ベクレル、グレイ)が出題。
- 光・音: フェルマーの原理や眼球構造(2023年度)、可聴音の周波数などの常識的知識。
熱力学
- 2025年度には、飽和水蒸気圧、断熱変化(ポアソンの法則)、大気の高度変化に伴う温度変化といった応用問題が出題されました。
特徴的な傾向
- 見慣れない設定の問題: 電気自動車、潮汐力、眼球構造など、現実の現象をモデル化した問題。
- 常識的な知識の要求: 可視光線の波長、音速、大気圧などの数値を把握していることが前提。
- 近似と数学的処理: 近似式 $(1+x)^n \approx 1+nx$ や微分・積分的思考、三角関数の和積公式などの多用。
対策
高得点を取るためには、単なる演習を超えた深い理解が必要です。
- 全分野の基礎固めと常識の習得: 基本法則の完全理解に加え、物理的な常識値(数値)を確実に暗記すること。
- 複雑な問題設定への慣れ: 過去問を通じ、初見の複雑な設定を正しくモデル化する読解力を養う。
- 計算力と時間管理: 膨大な計算を正確かつ迅速に処理するトレーニング。
- 論述・説明対策: 現象の本質を言葉で簡潔に記述できるよう、原理からの理解を深める。
比喩的なまとめ:
慶應医学部の物理は、基本知識という名の「土台」の上に、複雑な数値計算という「精密な道具」と、見慣れない応用問題を解くための「高度な設計図」を要求してきます。近年は教科書の現象を現実世界や医学に関連付けた「応用建築物」として出題する傾向が強いため、個々の建材(基本知識)だけでなく、設計図全体(問題の意図)を理解する力が合否を分けます。