金沢医科大学 一般選抜 出題傾向 化学 2018年度~最新入試の傾向まとめ
傾向と対策の概要
金沢医科大学医学部の化学は、出題範囲が高校化学全般にわたり網羅的であること、そして計算問題の比重が非常に高いことが最大の傾向です。特に2020年度以降、試験時間が短縮され(2科目120分から90分へ)、時間的な制約が非常に厳しくなりました。したがって、正確かつ迅速な計算能力と、多岐にわたる分野の知識を統合して応用する能力が求められます。
試験形式の安定性と構成
| 試験時間 | 2018年度および2019年度は2科目で120分でしたが、2020年度以降は2科目で90分に短縮され、この形式で安定しています。 |
|---|---|
| 出題形式 | すべての年度において、大問形式((1)〜(8)や(1)〜(10)など)で構成され、設問に対して解答群から適切な選択肢を選ぶマークシート形式が採用されています。 |
| 数値解答 | 数値解答では、指定された桁数や解答枠(例:05.0, 17.18 19 mol)に従ってマークする必要があり、計算精度と有効数字の取り扱いが厳しく求められます。 |
試験形式の大きな変化
最も顕著な変化は、2020年度入試における試験時間の大幅な短縮です。化学一科目あたりの時間が削減されたにもかかわらず、出題内容の難易度や計算量は高い水準を維持しており、受験生には一層のスピードと効率性が要求されるようになりました。
出題分野や出題テーマの傾向
出題は理論、無機、有機、高分子の全分野から偏りなく出ていますが、特に以下の分野が頻出かつ難解なテーマとして扱われています。
物理化学・理論化学(計算重視)
- 滴定・溶液計算: 単純な中和滴定だけでなく、混合物(水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウム)の滴定計算や、気体中の成分(二酸化炭素)を定量するための逆滴定など、複雑な定量分析が頻繁に出題されます。
- 平衡: 弱酸の電離平衡(近似を使えない希薄濃度での電離度・pH計算など)や、気体平衡(ルシャトリエの原理、モル分率からの圧力変化予測など)が出題されています。
- 固体構造と物理定数: 金属結晶の単位格子あたりの原子数や密度、原子間距離の計算や、単分子膜法を用いたアボガドロ定数の測定計算など、物理定数を絡めた精密な計算が求められます。
有機化学
- 構造決定と異性体: 分子式から構造を決定させる問題が多く、幾何異性体(シス・トランス異性体)、光学異性体、および構造異性体の網羅的な知識が問われます。
- 反応と合成経路: クメン法やサリチル酸の合成経路など、工業的または古典的な合成経路を理解していることが前提とされます。
無機化学・工業化学
- 工業的製法: アルミニウムの溶融塩電解やアンモニアソーダ法(ソルベー法)など、工業化学のプロセスの知識と、それに伴う電気分解や物質量計算がセットで出題されています。
- イオン分析: 定性分析における沈殿の生成条件、色、再溶解(錯イオン生成や酸化還元)などの知識が問われます。
高分子化学・生命科学
- アミノ酸とペプチド: アミノ酸の構造決定、等電点、強酸性・強塩基性溶液中でのイオン状態、さらにはペプチドの一次構造決定や窒素含有率の計算など、深い知識が要求されます。
- 検出反応: ビウレット反応、ニンヒドリン反応、キサントプロテイン反応といった生体分子の呈色反応の検出対象が頻出です。
- 核酸・糖: DNA/RNAの構造と構成要素、塩基対の法則、および単糖・二糖類の還元性や異性体に関する問題も出題されています。
特徴的な傾向
- 複雑な定量的計算: 単に公式を適用するだけでなく、酸塩基平衡、気体平衡、電池反応、または合成収率といった複数のステップを含む定量的な問題が非常に多く、計算ミスが許されない構造になっています。
- 実験操作と原理の重視: 実験器具の適切な使い方(メスフラスコやホールピペットの加熱乾燥の是非など)や、滴定の終点判定、沈殿の分離といった実験の原理と注意点に関する設問が繰り返し見られます。
- 時事的な科学知識: 2019年度にはリチウムイオン電池の開発に関するノーベル化学賞受賞者(吉野彰氏)の知識が問われるなど、化学分野の最新のトピックや工業的な応用例への関心が示されています。
対策
- 計算力の徹底強化: 最優先で、化学の全分野にわたる計算問題を制限時間内に正確に解ききる訓練が必要です。特に、有効数字や指定された桁数のマークに対応できるよう、解答形式に慣れることが重要です。
- 原理の深い理解: なぜその反応が起こるのか(酸化力比較、酸の強さ比較)、実験操作の意味(標準溶液の調整、中和滴定の指示薬の変色域)など、基本原理を表面的な知識で終わらせず、深く掘り下げて理解することが必須です。
- 有機・高分子の徹底暗記と応用: 有機化学の合成反応(試薬と生成物)や、アミノ酸の側鎖、検出反応、タンパク質の電気泳動の原理など、暗記要素の多い分野も、正確に知識を定着させる必要があります。
- 時間配分のシミュレーション: 2科目90分という厳しい時間制限の中で、確実に点数を取れる問題を見極め、計算量の多い問題に時間をかけすぎないよう、過去問を通じて時間配分の感覚を養うことが不可欠です。
例:計算問題の厳しさの比喩
金沢医科大の化学の計算問題は、まるで精度の高い時計職人の作業に似ています。単に時間を合わせる(答えを出す)だけでなく、すべての歯車(計算過程)が正確に、そして迅速に連動し(多段階の計算をこなし)、指定された目盛り(桁数や有効数字)にぴったり合わせる能力が求められます。わずかな狂いが全体の結果を左右するのです。