自治医科大学 一般選抜 出題傾向 物理
傾向と対策の概要
自治医科大学の物理は、全分野から幅広く、かつ満遍なく出題され続けています。試験は2科目80分(物理はおおよそ40分)という厳しい時間制限の中で25題を解答する必要があるため、解答の正確性とスピードが決定的に重要となります。
傾向として、基本的な公式で解ける典型問題や、教科書レベルの知識問題が一定数含まれていますが、年度によっては計算が複雑で時間のかかる問題や、現象の深い理解を要する問題(大問形式)も含まれます。
対策の鍵は、知識問題や易しい問題を見極めて瞬時に得点すること、そして時間のかかる問題(特に力学や電磁気学の応用問題)を解くか捨てるかを判断する力を養うことです。
試験形式の安定性と構成
形式の安定性
2018年度から2025年度の最新入試まで、物理の試験形式は大問数25題で一貫しており、試験時間は化学と合わせて80分という制約も変わっていません。
構成
かつては独立した小問が多かったものの、近年は複数の設問(3問から5問程度)が一つの設定に基づいた大問としてまとめられる傾向が定着しています。
- 2019年度:Q21~25(鉛直ばね振り子の単振動)
- 2020年度:Q21~25(理想気体の$p-V$グラフによる熱機関)
- 2021年度:Q20~22とQ23~25(静電気力と回転体の運動)
- 2024年度:Q21~25(斜面上の衝突と跳ね返り)
- 2025年度:Q20~25(あらい水平面上の単振動)
試験形式の大きな変化
大きな形式の変更はありませんが、以下の2点が特徴として挙げられます。
- 大問形式の定着:2019年度以降、後半に単一テーマに関するまとまった大問が配置される傾向が強化されました。
- 知識問題の出題形式の多様化(2020, 2022年度):2020年度(Q17〜20)や2022年度(Q10, Q14)では、「正しいものを全て選び、それらの先頭に付している数(1, 2, 4, 8)の和を求めよ」という、複数選択肢を組み合わせる特殊な知識確認形式が採用されました。
出題分野や出題テーマの傾向
出題は力学、電磁気学、熱力学、波動、原子の全分野を網羅しています。
| 分野 | 頻出テーマと特徴的な出題例 |
|---|---|
| 力学 | 単振動が非常に重要です(鉛直ばね振り子、浮力による単振動、あらい面上の単振動)。運動量・エネルギー保存則の基本問題。重心の計算(2018年度の3質点、2022年度の球殻の空洞)や、慣性力を考慮する問題(2019年度の斜面上の運動)も見られます。 |
| 電磁気学 | 直流回路・交流回路が最も安定して出題されます。コンデンサーを含む回路や誘電体の挿入、RLC直列共振回路の条件や電力(2021, 2024 大問)は頻出です。荷電粒子の磁場・電場中の運動(円運動、らせん運動)、および自己誘導(2022年度の直流回路における現象理解)も繰り返し出題されています。 |
| 熱力学 | 理想気体の状態変化(等温、定積、定圧、断熱)に関する知識やグラフ($p-V$図)の理解(2018, 2020 大問)が必須です。熱効率の計算(2019, 2020, 2022)や、比熱・熱容量の問題(2019, 2025)も安定して出題されます。 |
| 波動 | ドップラー効果(音源・観測者が動く場合や反射音)が頻出(2018, 2019, 2023)。干渉(ヤングの実験、薄膜、回折格子)、弦や気柱の定常波・共鳴(2019, 2021, 2025)も問われます。レンズによる結像(2019, 2023 複合レンズ)や全反射(2018, 2025)も重要です。 |
| 原子 | X線(連続X線、特性X線、最短波長)と原子核の崩壊($\alpha$, $\beta$, $\gamma$線の性質、半減期)が頻出です。光電効果と仕事関数、および結合エネルギー(2019年の鉄56)も知識として問われます。 |
特徴的な傾向(難易度・計算量)
知識の定着度を問う問題が多い
毎年、教科書で確認できるレベルの知識問題(例:X線の性質、$\alpha$, $\beta$, $\gamma$線の性質、上昇気流の断熱変化、縦波と横波の性質)が多く出題されます。これらは短時間で高得点を取るための最重要ポイントです。
時間消費型の計算問題の存在
全体の難易度は極端に高くないものの、「試験時間内に解くのは難しい」とされる、計算が複雑な問題が数問含まれます。
- 2018年度:正方形の管内の液体の力のモーメントのつりあい(Q25)は、立式と計算に時間がかかりました。
- 2021年度:水中での圧力変化を考慮した気体の状態変化(Q19)や、回転する輪に取り付けた小球のつりあい(Q23-25)など、現象の理解が深くないと手がつけにくい問題がありました。
- 2022年度:12本の抵抗による立方体回路の電流(Q2)や、球形の空洞を持つ球の重心(Q21)など、ひらめきや複雑な幾何学的理解が必要な問題が出題されました。
- 2023年度:浮力による円柱の単振動(Q17, 18)や、2つの凸レンズによる虚像の条件設定(Q12)など、設定が複雑な問題が目立ちました。
- 2024年度:RLC直列交流回路の大問(Q3-5)や、斜面での跳ね返り後の運動(Q21-25)は、時間配分が難しいと評されています。
- 2025年度:RLC回路の電気振動(Q1-3)では、電圧を求める際に三角関数を用いる必要があり、対応が求められました。
対策
1. 徹底的な基礎知識の定着と即答能力の確保
知識問題(特に原子、波動、熱力学の基本原理)の配点が高く、これらを瞬時に解答できるかが時間確保の生命線です。教科書内容を再度確認し、計算が不要な問題は絶対に落とさない準備が必要です。
2. 典型問題の正確な反復練習
力学(運動量保存、エネルギー保存)、電磁気学(直流回路、コンデンサー)、熱力学(状態方程式、熱力学第一法則)の典型的な計算問題は、設定が多少変わっても迅速かつ正確に処理できるよう訓練を重ねる必要があります。
3. 複合的なテーマへの準備
- 単振動:垂直ばね振り子、浮力、摩擦が絡む単振動は頻出かつ大問化されやすいため、運動方程式の立て方、周期、速さの最大値の計算を習熟してください。
- 電気回路:RLC回路(特に共振条件や電力)の公式は暗記し、その応用も理解しておくべきです。また、内部抵抗を持つ電池の扱いや、自己誘導の現象をグラフや式で説明できるようにすることが求められます。
4. 時間配分の戦略
試験時間が極めて短いため、過去問を通じて「捨てるべき問題」を見極める練習が必須です。見た瞬間に計算が複雑そうだと判断できる問題(例:複雑な重心、多段階の衝突計算など)は後回しにし、易しい問題から確実に解き進める戦略が有効です。