岩手医科大学 一般選抜 出題傾向 生物
傾向と対策の概要
岩手医科大学医学部の生物は、高校生物の基礎知識を前提としつつ、提示された実験データや現象を深く考察し、論理的に推論する能力を重点的に問う形式が定着しています。特に、定量的な分析や計算を伴う問題が頻出しており、難易度の高い実験考察と並行して正確な計算処理能力が要求されます。
試験形式の安定性と構成
岩手医科大学医学部の生物は、大問の構成と解答形式が安定しています。
- 大問数:2018年度から2025年度まで、一貫して5題構成(第1問から第5問)です。
- 出題形式:すべての設問がマーク式(解答番号形式)の選択肢問題です。
- 試験時間:生物と化学または物理の2科目で実施されます。
- 問題の特徴:各大問には詳細な設定や実験データが記された長いリード文が含まれ、それに基づいて深く踏み込んだ知識や考察を求める設問が配置されています。
試験形式の大きな変化
試験時間の延長:2018年度の試験時間は2科目で90分でしたが、2019年度以降、2科目で120分に延長されました。この時間延長は、読解量が多く、考察に時間を要する本学の出題傾向に対応するためと考えられます。
出題分野や出題テーマの傾向
高校生物の全範囲からバランスよく出題されていますが、特に以下の分野が頻出しており、現代生物学的なトピックが多く取り入れられています。
| 分野 | 頻出テーマ(例と出典) | 注目される傾向 |
|---|---|---|
| 生理学 | 血糖調節(グルコース輸送体)、血液循環と体温調節(対向流)、神経伝導(静止電位・活動電位)、酸素運搬(酸素解離曲線、$DPG$)、腎臓の機能(濃縮率、クリアランス)。 | 定量的な計算や、詳細な分子メカニズム(イオンチャネルの動態、ホルモンの作用機序)を問う。 |
| 細胞・分子生物学 | $DNA$の複製(半保存的複製、メセルソン・スタール)、遺伝暗号と突然変異、$PCR$法と逆転写酵素、遺伝子の発現調節(オペロン、転写因子)、細胞周期($DNA$量、$G1, S, G2$期の長さの計算)、$T2$ファージの実験。 | 実験に基づいた分子レベルの検証や、遺伝子発現調節のロジックが重視される。 |
| 発生学 | 誘導のメカニズム(角膜、神経、運動ニューロン)、ホヤ・ウニの初期発生(細胞質分配、形成体)、ショウジョウバエの体軸決定(母性遺伝)、プログラム細胞死。 | 発生における誘導や分化決定の実験的な理解が求められる。 |
| 動物行動・進化 | ミツバチのダンスと遺伝(連鎖と分離の法則、定量分析)、分子進化(分子時計)、$N$細胞の化学走性。 | 遺伝学的な計算や、行動学的な現象の分析が求められる。 |
| 免疫学 | 抗体(構造、$H/L$鎖、多様性計算)、移植片拒絶反応と免疫記憶、沈降線(抗原抗体複合体)。 | 免疫応答のメカニズムの詳細、$MHC$や遺伝子再編成などの分子機構を含む。 |
特徴的な傾向
1. 深い実験考察とリード文の綿密な読解要求
提示されるリード文は、実験の目的、手法、結果(図表)が詳細に記載されており、これらを完全に理解した上で推論を導き出す必要があります。
- ショウジョウバエの母性遺伝に関する突然変異体を使った発生実験の分析
- ニューロンにおける$Ca^{2+}$の流入・流出と神経伝達物質放出の関係を調べる実験(試薬$K$と$L$を用いた実験)の分析
2. 必須の定量的・数学的処理能力
単純な知識ではなく、与えられた情報から数値を導出する能力が毎年問われます。
- 細胞周期の長さの計算:$M$期の細胞における標識細胞の割合の変化を示すグラフから、$G1$期、$S$期、$G2$期、$M$期の時間を正確に算出する問題。
- 腎機能の計算:濃縮率を用いた原尿生成速度、再吸収速度の計算(クリアランスの概念)。
- 生理学的な計算:赤血球の生成・破壊数の安定的な計算、呼吸商の計算(発酵と呼吸の混合時)、酸素ヘモグロビン解離曲線を用いた酸素供給効率の計算。
- 遺伝子の計算:遺伝子マーカー間の組換え価から染色体上の位置を推論する問題、$H$鎖と$L$鎖の遺伝子断片数から抗体の多様性を計算する問題。
3. 分子生物学・現代生物学の応用
教科書レベルを超えた発展的なテーマが扱われます。例として、ノーベル賞関連の話題(2016年のオートファジー)や、遺伝子組換え技術(プロモーター検索用ベクター)、$RNA$ゲノムウイルス診断のための$RT-PCR$、$SNP$などのゲノム多様性が含まれます。
対策
- 全範囲にわたる基礎知識の定着と深化:生理学、遺伝、発生、細胞(代謝、分子生物学)の各分野を網羅的に学習してください。特に、教科書の図表や実験データの生物学的意味を説明できるように訓練が必要です。
- 実験考察問題への集中訓練:過去問演習を通じて、実験の仮説、対照実験、結果、結論の構造を把握する練習を徹底してください。
- 計算問題の反復練習:腎機能、細胞周期、呼吸商、遺伝子頻度、酸素解離については、手順と公式を完全にマスターし、時間内に正確に解けるように繰り返し練習してください。
- 分子生物学・現代生物学の理解:$DNA$複製、遺伝子発現調節、遺伝子組換え技術、免疫の多様性獲得メカニズムなど、分子レベルの複雑なプロセスを図説等で補強しましょう。
- 時間配分のシミュレーション:2科目120分という制限の中で、迅速な読解と判断が必要です。過去問を利用し、各大問にかける時間を厳しく管理する訓練を積んでください。
【比喩で理解する岩手医科大学の生物】
本学の入試は、「探偵が難解な事件を解決する過程」に似ています。膨大な証拠(リード文)を、正確な科学的知識(基礎)と論理的な思考(考察)で分析し、精密な測定器具(計算能力)を使って数値を検証しなければ、正解にはたどり着けません。実践的な応用力が不可欠です。