兵庫医科大学 一般選抜 出題傾向 数学
傾向と対策の概要
兵庫医科大学の医学部数学入試は、形式の安定性と内容の難易度の高さが特徴です。試験では、数学III(特に微分積分、複素数平面)からの出題が非常に多く、高度な知識を基にした論理的思考力、証明力、および煩雑な計算を正確に処理する能力が問われます。
大問1は小問集合で幅広い分野をカバーし、大問2・3は特定のテーマを深く掘り下げる誘導形式の応用問題が出題される傾向にあります。解答には途中式や考え方の詳細な記述が必須です。
試験形式の安定性と構成
入試形式は、2018年度から2025年度(予定)まで一貫して90分で実施されており、大問は3問構成で安定しています。
大問の一般的な構成
- 大問1(小問集合):様々な分野の独立した問題が4問または5問出題されます。基本的な計算技能や、幅広い知識の応用力が問われます。
- 大問2、大問3(総合問題):特定のテーマ(例:複素数平面、微分積分、数列、絶対値関数、図形)に関する、複数の小問からなる誘導形式の連動した問題が出題されます。
多くの設問で、途中式や考え方などの詳細な記述が求められています。
試験形式の大きな変化
大枠(90分、大問3問)の形式は安定していますが、大問1の小問数に微増傾向が見られます。
| 年度 | 大問1の構成 |
|---|---|
| 2018年度 | 4問構成 |
| 2021~2025年度 | 5問構成 |
出題形式の多様化に注意:
2023年度大問1(5)では、統計的なデータ(平均所得)に関する文章を読み、論理的な説明を要求する問題が出題されました。これは従来の数学的な解答形式とは異なり、今後の出題傾向を予測する上で注目すべき点です。
2023年度大問1(5)では、統計的なデータ(平均所得)に関する文章を読み、論理的な説明を要求する問題が出題されました。これは従来の数学的な解答形式とは異なり、今後の出題傾向を予測する上で注目すべき点です。
出題分野や出題テーマの傾向
数学IIIの圧倒的な重視
微分積分、複素数平面、極限など、数学IIIの分野が非常に重要視されています。
1. 微分積分と応用
- 増減、極値、凹凸:関数 f(x) = e-x sin x の極値や面積(2018 Q2)、対数関数を含む関数 f(x) = log(x + √(x2+a)) の増減・凹凸(2019 Q3)、ネイピア数 e の定義に関連する不等式の証明(2020 Q3)、回転体の体積や曲線の長さ・面積(ハイポサイクロイド、アステロイド)(2022 Q3)、および対数関数を含む関数の増減(2024 Q3)が頻出です。
- 定積分:部分積分や置換積分を用いる複雑な計算(2018 Q2, 2021 Q1, 2023 Q1)や、積分区間に変数を含む定積分の微分(2024 Q3)が問われています。
2. 複素数平面
- 幾何学的証明と回転:正三角形の証明、重心の一致(2020 Q2, 2023 Q2)や、点と直線の回転・対称移動(2023 Q2, 2025 Q3)に関する問題が頻繁に出題されています。
- 軌跡と最大値/最小値:複素数 z が単位円上を動くときの |w+1| の最大値(2024 Q1)や、外心を複素数で表す問題(2025 Q3)が出題されています。
3. 数列と漸化式
- 分数型漸化式:(2an + 4) / (an + 5) の形をした漸化式とその一般項の導出(2019 Q1)、借入金の返済モデルとしての漸化式とその応用(2021 Q2)が出題されています。
- 無限級数:階乗を含む分数の和 ∑ (k-1)! / (k+p)! を部分分数分解(連鎖消去)で求め、その極限を問う問題(2023 Q3)が特徴的です。
その他重要分野
- 確率/場合の数:反復試行の確率(2018 Q3)、じゃんけんの確率(2019 Q1)、区分のある/ない玉と箱の組合せ(2020 Q1, 2025 Q1)、誕生月が同じになる確率(2024 Q1)、条件付き確率(2022 Q1)が出題されています。
- 幾何学/ベクトル:中線定理の一般化(スチュワートの定理)の証明とその応用(2021 Q3)、メネラウスの定理を利用する問題(2022 Q1)、五芒星の幾何的な性質と相似/合同の証明(2019 Q2)、原点から直線ABに最も近い点(2024 Q1)など、図形への深い理解を問う問題が続出しています。
特徴的な傾向
- 絶対値を含む関数の徹底的な解析:
絶対値の和で定義される関数(例:f(x) = |x-1| + |x-2| + |x-t|)の最小値や不等式の証明、三角不等式 |a| + |b| ≥ |a-b| を利用した証明などが求められます。 - 論理的な証明と記述の要求:
多くの大問で「証明せよ」という指示が見られます。数学的帰納法を用いた無限和の公式の証明や、幾何学的な定理の証明が重要です。 - 応用性の高いテーマの出題:
借入金の返済シミュレーション、格子点の個数、食塩水の濃度変化など、モデル化を要する問題が出題されます。
対策
1. 数学IIIの計算力と応用力の徹底
数IIIが合否を分ける中心的な分野です。
- 微分・積分:複雑な関数(指数、対数、三角関数の複合)の増減、極値、凹凸の正確な解析練習が必要です。部分積分や置換積分を2回以上行う計算、無限等比級数を利用した面積や体積の計算に慣れておくべきです。
- 複素数平面:回転、対称移動、軌跡、そして幾何的な性質の証明(正三角形など)を複素数で表現し、処理する練習を重点的に行います。外心や重心といった図心の座標を複素数で表現する方法も習得が必要です。
2. 記述力と論理的証明の訓練
- 論理記述:途中式や考え方を記述するスペースが与えられているため、採点者に意図が正確に伝わるよう、論理の飛躍がない解答を作成する練習をします。
- 数学的帰納法:漸化式や無限和の公式を証明する際に必須です。定型的なステップ(n = 1、仮定、n = m + 1 の証明)を確実に行う練習をします。
3. 幅広い分野の網羅と応用問題への慣れ
- 小問対策:大問1の小問集合は多岐にわたるため、数Aの整数問題(不定方程式、ユークリッドの互除法)、確率・場合の数、数IIの三角関数(合成や2倍角の公式)、ベクトル・空間図形の基本事項を再確認します。
- 応用問題:絶対値を含む関数や、実生活に関連する漸化式(金融、濃度)といった、一見非定型に見える問題に対して、定義に戻って場合分けや数式化を行う練習が有効です。
総括:
兵庫医科大の数学は、まるで「難解なパズルを、正確な手順書(論理的な記述)に従って、限られた時間内で完成させる作業」に似ています。高度な知識(パズルのピース)を持つだけでなく、それらを論理的に組み立てるプロセスこそが、この試験で成功するための鍵となります。