兵庫医科大学 一般選抜 出題傾向 化学 2018年度~最新入試の傾向と対策のまとめ
傾向と対策の概要
兵庫医科大学の化学は、理論化学、無機化学、有機化学の全分野から偏りなく、非常に高度な応用問題が出題される傾向にあります。
医学部入試としての特徴として、生体、環境、医療技術に関連した応用テーマ(例:サリドマイドの構造決定、リチウムイオン電池、パーマネントウェーブの化学、藍染め、環状エステルを用いた複雑な構造決定)を題材とし、その化学的原理を深く理解しているかを問う傾向が強いです。
特に、複雑な計算過程を詳細に記述させる形式や、化学現象の理由や原理を論理的に説明させる記述問題が恒常的に出題されており、単なる知識の暗記では対応が困難です。
試験形式の安定性と構成
入試形式は、大枠において非常に安定しています。主な構成と形式は以下の通りです。
| 大問構成 | 2018年度から一貫して大問3題で構成されています。 |
|---|---|
| 解答形式 |
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| 時間配分 | 一般選抜Aでは2科目120分、一般選抜Bでは60分と設定されており、時間内に高度な問題を解き切るスピードが求められます。 |
試験形式の大きな変化
大問数や制限時間といった形式上の大きな変化は資料からは確認できません。しかし、出題されるテーマの専門性と定量的分析の複雑さは高まっています。
物理化学的応用テーマの導入
実在気体に関するファンデルワールスの状態方程式やZ値の分析、コロイド化学における臨界ミセル濃度 (CMC) の定量的取り扱い、複雑な多段階反応の反応速度定数と平衡定数の関係など、専門的知識の応用が問われるようになっています。
融合問題の複雑化
理論化学(浸透圧)と無機化学(溶解度積)を組み合わせた問題や、有機化学(複雑な多官能基分子)の加水分解・異性化を経る構造決定など、複数の分野を横断する知識と高度な計算能力が要求されています。
出題分野や出題テーマの傾向
1. 理論化学
- 平衡と定量分析:弱酸の電離平衡(pH、電離度)、中和滴定(混合物の定量)、化学平衡(Kp、ルシャトリエの原理、反応量計算)は最重要テーマです。
- 溶液と熱化学:浸透圧計算は、電解質・非電解質の違いや溶解度積と組み合わせて出題されています。熱化学では、結合エネルギーの計算や、反応熱を用いた温度変化の定量計算が見られます。
- 気体の性質:理想気体からのズレ(実在気体)や、状態図、グラフ(P-V-T図、Z-P図)の分析を通じて、気体分子の運動や相互作用に関する理解が試されます。
2. 無機化学
- 工業的製法:鉄の製錬、アンモニアソーダ法、ハーバー・ボッシュ法など、主要な工業プロセスの反応式と原理が問われます。
- 系統分析と反応:陽イオンの系統分離(Pb2+, Cu2+, Ag+ の沈殿・錯形成)、両性金属(Al, Zn, Pb)の反応が定番です。
- 実験操作と安全性:アンモニアの乾燥剤の選択理由(酸性物質やCaCl2との反応性)、気体捕集における逆流防止など、実験の基礎理論が問われます。
- 応用分野:リチウムイオン電池の電極反応と構造、さらし粉(ClO-)を用いた酸化還元滴定など、現代化学の応用例が題材となります。
3. 有機化学
- 構造決定:複雑な反応経路(酸化、加水分解、脱水、異性化)を経て、分子式や構造式を論理的に決定する問題が核となります。
- 生体・医薬関連:サリドマイドの環状イミド構造と加水分解、DNA塩基(アデニンとチミン)の水素結合構造、パーマネントウェーブの化学など、医学に関連する応用テーマが頻出です。
- 高分子・共重合:高分子の種類(熱硬化性/熱可塑性)と製法、リサイクル技術(密度による分離)、共重合体(SBR、ポリグリコール酸/乳酸)の組成決定計算が問われます。
- 立体化学:不斉炭素原子の識別、鏡像異性体の図示(例:三角柱構造の異性体)など、立体的な構造理解が要求されます。
特徴的な傾向
- 徹底した定量分析と計算過程要求:多くの問題で、答えを数値(有効数字指定あり)で出すだけでなく、導出に至るまでの計算過程を明記することが求められます。計算ミスや過程の省略は大きく減点される可能性があります。
- 理論的背景の説明重視:「なぜその操作を行うのか」という理由を化学的な言葉や反応式を用いて簡潔に説明させる問題が目立ちます(例:次亜塩素酸ナトリウムの分解理由、トタンが錆びにくい理由、乾燥剤の不適性の理由)。
- 図表・グラフからの考察:実在気体のZ-P関係、平衡曲線の分析、コロイドの表面張力曲線、沈殿量曲線など、図やグラフを読み解き、定量的な考察を加える問題が頻繁に出題されています。
- 基礎知識を土台とした応用力の評価:難易度の高いテーマ(例:環状エステルラクトンの加水分解、メチル化分析による多糖類の構造決定)であっても、解法の糸口は高校化学の基本原理(加水分解、中和、モル計算)にあります。基礎を応用できる力が合否を分けます。
対策
合格に向けた重点対策
- 計算過程の徹底訓練と有効数字の習熟:過去問や難易度の高い問題集を用いて、計算過程をノートに記述する習慣をつけ、指定された有効数字で正確に解答を出す練習を繰り返してください。
- 有機構造決定のパターン学習:芳香族化合物、エステル、アミド、環状化合物、不斉炭素原子を含む複雑な分子について、燃焼分析、滴定、加水分解、酸化反応などの情報から、分子式と構造式を決定する手順を完全にマスターする。
- 原理に基づく記述力の養成:化学用語や化学反応式を正確に使い、実験操作や現象の理由・原理を第三者に伝わるように簡潔に説明する訓練が必要です。特に無機化学の実験操作や化学平衡の移動理由などは重点的に対策すべきです。
- 医薬・応用テーマの対策:過去問で出題されたリチウムイオン電池、コロイド、サリドマイド、パーマ、染色などの応用テーマについては、その現象の背後にある化学的原理(酸化還元、錯形成、反応機構など)を深く理解しておくと有利です。
対策のイメージ
兵庫医科大学の化学で高得点を取るためには、登山家が地図(知識)とコンパス(原理)を駆使して、未踏の山頂(応用問題)を目指すような総合力が必要です。知識を正確に持ち、その知識を応用する論理的な思考力と、それを明確に表現する記述能力のすべてを高いレベルで準備する必要があります。