兵庫医科大学 一般選抜 出題傾向 生物
傾向と対策の概要
兵庫医科大学医学部の生物学入試は、安定した形式を保ちつつ、受験者に高校生物学の広範な基礎知識と、高度な実験データ分析力および表現力を強く要求します。
試験は、幅広い分野の基礎知識を問う大問1(小問集合)と、特定のテーマを深く掘り下げた複数の記述・論述形式の大問(大問2以降)で構成されます。
特に、分子生物学、動物生理学(腎機能・循環)、および遺伝学が頻出分野であり、これらのテーマにおいては、単なる知識の暗記では対応できない論理的考察や、厳密な字数制限内での正確な説明が合否を分けます。
試験形式の安定性と構成
生物学は一般選抜Aにおいて、他の1科目と合わせて120分の枠内で実施されています。主要な構成は以下の通りで、安定しています。
大問1:小問集合(知識確認)
選択肢形式の問題が多数出題されます(例:2018年度は15問、2020年度は20問、2024年度は18問)。 出題範囲は広く、細胞膜の厚さ、血液型判定、基本的な数値、用語の定義、生態系の具体例など、基礎の網羅性が問われます。
大問2以降:テーマ別の記述・論述・考察問題
- 論述形式、実験結果の分析、計算問題が多く含まれます。
- 字数制限付きの記述問題(例:40字以内、80字以内、100字以内)が頻繁に見られます。
試験形式の大きな変化
2018年度および2019年度の入試では、大問1から大問6までの合計6つの主要な出題セクションが見られました。しかし、2020年度以降、形式が大問1から大問5までの合計5つのセクションに再編され、この構成が2024年度、2025年度の最新入試まで継続しています。
この変化は構成数の調整に留まり、大問1(小問集合)と大問2以降(論述・考察)という出題形式の基本的な枠組みには大きな変更はありません。
出題分野や出題テーマの傾向
高校生物学の全範囲から出題されていますが、以下の分野が特に深く、応用的に問われる傾向にあります。
1. 動物生理学と恒常性 (医学関連テーマ)
- 腎機能: イヌリンクリアランスを用いた糸球体ろ過量 (GFR) や尿素の濃縮率の計算。腎血しょう流量 (RPF) の測定原理やPAHを用いた推定など、定量的な指標の理解が必須です。
- 血液と循環: ABO式血液型検査(オモテ試験・ウラ試験)と凝集・血液凝固の違い。ヒトの心臓循環(4心室)と魚類や両生類との比較、O2飽和度と血圧の関連。
- 内分泌と血糖調節: インスリンやグルカゴン、糖質コルチコイドなどによる血糖濃度の調節メカニズム。グルコース輸送体(GLUT2, GLUT4, SGLT)の機能の違いと局在が詳細に問われています。
2. 遺伝情報と分子生物学
- 遺伝子発現制御: lacオペロン や araオペロン の発現誘導および抑制のメカニズムに関する詳細な考察が頻出します。
- 遺伝子工学: PCR法における断片数計算、制限酵素を用いたベクターへの遺伝子組み込み、サンガー法(ジデオキシリボース)による塩基配列決定の原理が問われます。
- ゲノムと遺伝: 真核生物の転写調節(エンハンサー、転写因子、プロモーター)と実験的解析。ノックアウトマウス作製法(ES細胞、Cre-loxPシステム)の原理と実験結果の考察。
3. 生物多様性と進化
- 進化論: ダーウィン(自然選択説)、ラマルク(用不用説)、ド=フリース(突然変異説)、木村資生(中立説)など、複数の学説とその概念(遺伝的浮動、同義置換)の論理的説明が求められます。
- 遺伝学: ハーディ・ワインベルグの法則を用いた遺伝子頻度や遺伝子型頻度の計算、伴性遺伝(三毛猫の遺伝を含む)。
4. 代謝と植物生理
- 呼吸と発酵: 解糖系、クエン酸回路、電子伝達系の詳細な物質名(ピルビン酸、アセチルCoAなど)とATP消費・産生過程。酵母のアルコール発酵(パスツール効果)や乳酸発酵。
- 窒素循環: 窒素同化、窒素固定細菌の働き、関与する無機窒素化合物(NO3-, NH4+)の名称とイオン式。
- 植物の環境応答: 光発芽種子のフィトクロムによる制御、植物ホルモン(オーキシン、ジベレリン、エチレン、ブラシノステロイド)による茎や根の分化制御(組織培養を含む)。
特徴的な傾向
1. 厳格な字数制限付きの記述・論述の要求
非常に多くの大問で、40字、60字、80字、90字、100字など、明確な字数制限が課せられています。これは、単に知識を持っているだけでなく、複雑な生物現象のメカニズムを正確に把握し、その要点を過不足なく簡潔にまとめる高度な表現力が試されていることを示しています。
例:
- 免疫寛容のメカニズムを80字以内で説明
- 発生における極体の形成理由を90字以内で説明
- IPTGを発現誘導に用いる理由を100字以内で説明
2. 定量的な計算と指標の理解の重視
生理学(腎機能のクリアランス計算、呼吸商の計算)や遺伝学(遺伝子頻度)、生態学(標識再捕法)において、数値を正確に扱い、結果を解釈する能力が求められます。
3. 実験原理の理解と結果の論理的考察
問題文に記載された実験(前核移植実験、遺伝子発現調節領域の欠損実験、Cre-loxPシステム、神経回路の興奮伝達)の背景にある原理を理解し、提示されたデータ(表、グラフ)から論理的に結論を導き出す能力が極めて重要視されます。
4. 医療・疾患に関連する知識の深掘り
血液型判定や血糖調節(糖尿病)、免疫寛容、心房中隔欠損症など、医学的な側面から生物学的な知識を応用させる問題が多いです。
対策
1. 基礎知識の徹底的な網羅と正確化
大問1の小問集合で広い範囲の基礎知識(例:細胞小器官の成分、ホルモンの作用、バイオームの優占種、反射弓の構成)が問われます。教科書や資料集の細部まで確認し、知識の抜け漏れを防ぐことが、安定した得点の基盤となります。
2. 記述・論述の体系的な訓練
頻出のメカニズム(遺伝子制御、恒常性維持、発生の誘導、進化の原理など)について、論理的な構造(原因 → メカニズム → 結果)で文章を構成する練習を積み、指定字数内で完結させる能力を磨く必要があります。特に、過去問の解答欄の字数を意識した模範解答の作成と推敲が効果的です。
3. 定量計算と実験考察力の強化
腎クリアランス(GFR, RPF)や遺伝子頻度計算など、計算が必要な問題は必ず解法をマスターし、正確に計算できるよう訓練してください。また、複雑な実験の図や表を見た際に、どの要因が結果に影響を与えているかを素早く分析する練習が必要です。
4. 頻出分野の重点的な深掘り
分子生物学(オペロン、工学)、動物生理学(腎、循環、内分泌)、発生学(誘導、卵割)は、毎年深いレベルで出題されるため、単語を覚えるだけでなく、その現象がなぜ、どのように起こるのかを説明できるレベルまで理解を深めることが求められます。