福岡大学 一般選抜 出題傾向 英語 2018年度~最新入試の傾向と対策
傾向と対策の概要
福岡大学医学部(医)の英語入試は、2018年度から2025年度まで一貫して70分の試験時間で実施されており、試験形式の安定性が極めて高いことが最大の特徴です。試験は、読解力、和訳能力、文法・語法知識、発音・アクセント、そして構文理解力を総合的に問う構成となっています。
出題テーマは、医学部入試に特化しているわけではなく、科学、技術、社会問題、文化、心理学、哲学といった広範な学術分野から選ばれています。特に、高度な読解力と思考力を要求する長文読解と、細かい知識が問われる文法・語法・整序英作文がバランス良く配置されているため、包括的な英語力が求められます。
試験形式の安定性と構成
この期間(2018年度〜2025年度)において、試験形式は驚くほど安定しており、大きな変更は見られません。全ての年度で以下の5つの大問で構成されています。
| 大問 | 内容 | 形式 | 傾向 |
|---|---|---|---|
| [I] | 下線部和訳 | 英文中の下線部を和訳。 | 抽象的、専門的な内容を含む複雑な構文が多い。 |
| [II] | 内容一致問題 | 長文の内容と合致するものを11~20の選択肢から4つ選択。 | 非常に詳細な内容理解が必須。選択肢が本文の細部や論理関係(原因、結果、タイミングなど)の誤りを突く。 |
| [III] | 文法・語法 | 空欄または下線部に適していないもの(または最も適当なもの)を1〜4の中から1つ選ぶ。 | 語法、イディオム、動詞の形(受動態・能動態)、句動詞、前置詞の知識が細かく問われる。 |
| [IV] | 発音・アクセント | A欄の語とB欄の語の最も強く発音する音節の母音が一致(または異なる)ものを選ぶ。 | 毎年必ず出題される。多音節語のアクセントや母音の音(音韻知識)が問われる。 |
| [V] | 整序英作文 | 日本文の意味を伝えるように、7つの語句から6つを選び、空欄(a)~(f)を埋める。 | 定型表現や特殊な構文(倒置、分詞構文、動名詞構文など)の正確な知識が求められる。 |
試験形式の大きな変化
2018年度から2025年度までの範囲では、試験形式全体における大きな構造的変更は見受けられません。
注意点:[III] の文法・語法問題の指示が「適していないものを一つ選べ」の場合(例:2018, 2020, 2021, 2024, 2025)と、「最も適当なものを一つ選べ」の場合(例:2022, 2023)があるなど、細かな設問指示は年度によって異なります。問われる文法・語法知識のレベルは一貫して高いため、設問文をよく読むことが重要です。
出題分野や出題テーマの傾向
出題されるテーマは多岐にわたり、社会や文化、そして学術的な興味深いトピックが中心です。医学・生命科学に関連する話題(例:手洗いの重要性、脳のエネルギー消費、昆虫の役割)も扱われますが、それらに限定されていません。
特に目立つテーマの傾向は以下の通りです。
科学・技術・環境問題
- 2020年度:昆虫(ミツバチ)の減少と人類の生存への影響。
- 2023年度:洋上風力発電の余剰電力を利用した水素生成に関する最新の技術と経済的議論。
社会・経済・倫理
- 2022年度:オートメーションによる失業とベーシックインカム(UBI)の社会的、哲学的な議論。
- 2025年度:孤独が世界的な健康問題と宣言される中での共同生活(Communal Living)の利点と課題。
心理学・認知科学・文化
- 2018年度:感情とデジタル/アナログの対比、絵文字の役割。
- 2021年度:夢と感情の制御、動物の協力行動(イルカのヒラタ課題)。
- 2024年度:新型コロナウイルス感染症下で再評価されたフィレンツェの歴史的建造物「ワインウィンドウ」の社会的・歴史的役割。
時事性や現代社会が抱える課題、あるいは人間行動や認知に関わる普遍的なテーマが好まれる傾向にあります。
特徴的な傾向
精度の高い長文内容理解の要求([II])
内容一致問題([II])は、10〜20の選択肢から4つを選ぶ形式であり、本文の詳細な情報や、因果関係、時期、比較対象などに関する正確な理解を求めています。例えば、2020年度では嫌悪反応が「常に (always)」生じるか「しばしば (often)」生じるか、2022年度では幸福度の変化の原因が「仕事が嫌いだから」なのか「ラベルの交換(失業者から退職者へ)」なのか、といった細部の論理的なズレが不一致の理由になっています。
特殊な文法・構文知識の重視([III], [V])
[III](文法・語法)や [V](整序英作文)では、熟語や基本的な動詞の語法に加え、非定型的な構文や表現が頻出します。
- [III]の例: 自動詞の受動態不可(occurred)、動詞の語法(e.g., make delivery in は不適)、あるいは慣用的な動名詞の主語(there being no opportunity)。
- [V]の例: 倒置構文(Attached is a pamphlet)、動名詞構文(the bus being late)、あるいは定型表現(know better than to do、be subject to)。
抽象的な下線部和訳([I])
和訳は、単なる直訳ではなく、抽象的な概念や哲学的・社会的な内容を自然な日本語で表現する能力を試しています。例えば、チェスプレイヤーの存在を「論理が夢想と交わり、理性が遊心と交わる千にもわたる手筋からなる網の目の中心に、自らの座を占めている」と訳す箇所や、「合理性(rationality)」の定義を問う箇所など、文意を深く理解し、的確な表現に変換する能力が不可欠です。
対策
この安定した、かつ高難度の試験に対応するためには、以下の対策が効果的です。
多様な学術テーマの英文読解と語彙力強化
出題範囲が広いため、特定の分野に偏らず、科学、経済、社会学、心理学など、アカデミックなトピックの英文に日常的に触れるべきです。抽象的な名詞や高度な動詞、専門用語を積極的に習得することが、読解速度と精度を高めます。
精読の徹底と緻密な内容理解の練習
内容一致問題([II])に対応するため、文章全体の主張だけでなく、細部の論理関係、具体例、筆者の意図、そして文章内で明記されている事実を正確に把握する訓練が必要です。特に、比較表現、数量(例:60%、70%、34年)、時間経過、そして限定的な表現(only, always, oftenなど)に注意して精読する習慣をつけましょう。
文法・語法・構文の徹底的な見直し
[III]と[V]は知識が直結する分野であり、ここで確実に得点することが重要です。
- [III] 文法・語法: 4つの選択肢の中から「不適切なもの」を見抜く形式は、文法知識に穴がないことを要求します。動詞の語法(SVOO, SVOC, to do/doingの使い分け)、慣用句、前置詞の正確な用法に重点を置いて学習しましょう。
- [V] 整序英作文: 定型表現(例:take into account、know better than to do)や、関係詞(特にwhat節や非限定用法 which)、分詞構文、名詞構文、倒置構文など、複雑な文の構造を迅速に構築する練習が不可欠です。
和訳技術の洗練
下線部和訳([I])では、英文の複雑な構造を解析しつつ、学術的な内容を「自然で意味の通る日本語」に再構成する能力を磨く必要があります。抽象度の高い表現や、連鎖する修飾句を含む長文に慣れることが重要です。
この試験は、単なる知識の有無ではなく、知識を正確に運用し、複雑な英文から情報を抽出・分析する思考力を測るものと言えます。総合的な読解力を鍛えることが、最も効果的な対策となるでしょう。
例えるなら、福岡大学医学部の英語試験は、医療現場における高度な診断に似ています。患者(英文)は一見すると何の病気(構造)か分かりにくいが、医師(受験生)は文法、語彙、構文といった基本的なツール(問[III], [IV], [V])を使いこなし、病状(文脈)の細部にわたる情報(問[II])を精緻に読み解き、最終的にその病気の核心(和訳[I])を的確に説明することが求められるのです。一つでも診断ツール(大問)を疎かにすれば、全体の診断(得点)に影響が出ます。