医学部受験のポイント

学力に、穴があったら入れない

医学部入試には「得意科目がいくら強くても、不得意科目や不得意分野があるとカバーしきれない」という、やっかいな特徴が ある。 だから英語・数学・理科すべて、まんべんなく基礎を固めておかなければならないのだ。
それはひとつに、受験生が多いため、1点、2点の差にたくさんの受験生がひしめいているということにもよる。 だが何よりも、 大学が「まじめで、努力ができて、大量の情報をてきぱき処理できる」学生を求めているのが大きい。 だから入試問題も、「切れ味」 よりは「全範囲をきちんと学習したか」を問うものにならざるを得ないのだ。 科目ごとの合格最低ラインを決めている大学もある。
その結果受験生は、隅から隅までシラミつぶしに、苦手をなくす勉強を強いられることになる。「苦手をなくす」のは受験一般に 通じる攻略法だが、医学部の場合、それがいっそう顕著なのだ。
膨大な範囲をいかに効率よく勉強するか、が合格のカギとなるのである。

学力に、穴があったら入れない

大学ごとの傾向は

「志望校の傾向を研究せよ」とよく言う人がいる。
たしかに大学によって「傾向」や「パターン」がある。しかし、受ける大学の特異な問題を過度に気にしたり、過去問ばかりを解くというのは決して得策ではない。
大学は基本的知識に弱点がないかどうかを鵜の目鷹の目で調べようとしているのである。この点に留意し、効率よく勉強することが必要である。そのためには、

  • ① 出題形式が、マークシート形式か記述形式か
  • ② 問題の分量は多いか少ないか
  • ③ 難易度はどうか、何割くらい取れれば闘えそうか
  • ④ 出題分野に顕著な偏りはないか

この程度を調べておけば良い。
ただし、受験本番で面食らうことの無いよう、事前に慣れておくことは不可欠。決して入試当日に初めて見た、なんてことのないように。

模擬テストをどう利用するか

予備校の多くは各種模擬テストを実施している。自分の実力を知るうえで欠かせないが、その成績表の利用のしかたには注意が必要だ。
まず、大手予備校の模擬テスト。各科目の「得点」自体にはあまり意味がない。問題の難易度が調整されているとはいえ、毎回変化する。だから得点は下がっても順位は上がる、などということは日常茶飯事である。
利用価値があるのは「偏差値」だ。偏差値は、おおむね25~75の範囲での自分の位置づけが分かる数字。平均点なら50になるわけだ。偏差値は、どういう学力の者がその模試を受けたかによって異なってくる。だから、「どの模試でどのくらいの偏差値があればいいのか」については適切なアドバイスを受ける必要がある。大ざっぱにいえば、全科目が偏差値60を超えて安定すれば、医学部の合格への第一歩が見えてくるといっていいだろう。65以上がそろえば、かなり合格が近づいたとみていい。
なお、「志望校判定」はあまり重視しないでよい。「A判定」が出ることはそもそもめったにないし、「B判定」以降はたいてい一定の偏差値ごとに区切ってあるだけだからだ。「C判定」が出れば見込みあり、という程度に思っておけばよいだろう。「C判定」でも合格者は大勢いる。
医系専門予備校の行う模擬テストは、数をたのみとする統計の点からすると若干心もとなく感じられるかもしれないが、一人ひとりの実力をこまめに評価してくれる点は、大手に真似のできないところだ。
それぞれの模試の特徴をふまえて活用したい。

新傾向が広がりつつある面接

大部分の医学部で、学科試験のほかに面接を課している。人間の生命を預かる者としてふさわしいかどうかを見るためのものだ。とはいっても、重視のしかたは大学によりずいぶんと異なっている。面接を複数回行う大学もあれば、10分程度で済ませるところもある。
最近はグループディスカッションや、MMI(Multiple Mini interview)を取り入れる大学も増えている。患者や他の医療従事者との意思疎通など、高いコミュニケーション能力が医師には必要だからだ。
しかし、基本的には人の話がきちんと聞けて自分の考えをはっきり述べられれば、面接も恐るるに足らずと思っていい。

※ MMI:複数の課題を用いた面接試験のことで、評価者と受験者が1対1で話し合いをする対話形式の面接。

小論文は怖くない

他の学部と違って医学部の小論文は「才能」や「独創性」を見る試験ではなく、「人間性」を見るためのものだ。だからむしろ「独創性」はないほうがいいくらいだ。
問題設定の仕方と論理展開の仕方、説得力を持たせるためにはどうすればいいか、主張の中心には何をおくべきか、というような方法論を事前に練習して身につけておけば大丈夫。

大学入学共通テスト(新テスト)利用入試

私立大医学部の多くが大学入学共通テスト(新テスト)利用の入試を設定している。このタイプの入試の倍率は非常に高く、必要な点数は国公立医学部合格に必要な点数とほぼ同じだ。しかし、必要な科目が国立より少なければ、その分負担は軽い。どの科目が必要かを確認しよう。
中には、倍率は高くても「意外と狙い目」になる私立医学部もあるので、余裕がある場合は、とりあえず大学入学共通テストは受けておいて損はない。万一失敗しても、最後の模擬テストと考えればよいのだ。

推薦されても安心できない推薦入試

推薦入試は、近年、多様化が進んでいる。その代表的なものは、指定校推薦と公募推薦(一般推薦)。指定校推薦は学校ごとに人数の割り当てがあるが、実は倍率が3~4倍となる場合が多い。公募推薦(一般推薦)もまた狭き門である。推薦そのものは比較的簡単にとれるが、倍率4倍程度は覚悟すべきだ。平成30年度の近畿大学推薦入試のように、30名の募集に722名(24.1倍)が殺到するという場合もある。
推薦入試は、推薦されたからといって安心はできないのである。むしろ「就職試験」に近いと心得て、いかに自分をアピールするか、十分習熟する必要がある。