有機化学のオキテ38
掟38. セルロースの構造や,セルロースを用いて作られる半合成繊維,再生繊維等について説明できるようにしておくべし。
問題
セルロースは,単糖類の一つであるβ-(ア)が直鎖上に繰り返して縮合した生体高分子である。セルロースに酢酸と無水酢酸,および少量の濃硫酸を加えると,各(ア)単位の(イ)箇所のヒドロキシ基(水酸基)が(ウ)化される。得られた分子の(ウ)結合を部分的に加水分解し,その後繊維状に加工したものを(エ)という。また,セルロースをアルカリで処理して(オ)と反応させ,これを希薄な水酸化ナトリウム水溶液に溶解させるとビスコースが得られる。これを細孔から希硫酸中に押し出すと繊維が得られる。この繊維を構成しているものは(カ)であることから,このような繊維は(キ)と呼ばれる。
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問1. 文章中の空欄(ア)~(キ)にあてはまる適切な語句をa~nの中から一つずつ選びなさい。
a.アガロース b.アセテート c.エステル d.エーテル e.キュプラ f.グルコース g.セルロース
h.二硫化炭素 i.二酸化硫黄 j.再生繊維 k.半合成繊維 l.1 m.2 n.3 -
問2. セルロースの一般式を(C6H10O5)nとしたときの(エ)の一般式をa~dの中から一つ選びなさい。
- a.[C6H9O4(OCOCH3)]n
- b.[C6H8O3(OCOCH3)2]n
- c.[C6H7O2(OCOCH3)3]n
- d.[C6H6O2(OCOCH3)4]n
解答と解説
<解答>
- 問1. (ア)f (イ)n (ウ)c (エ)b (オ)h (カ)g (キ)j
- 問2. b
<解説>
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問1. セルロースはβ-グルコースを構成単位とする多糖類で,その分子は多数のβ-グルコースの1位と4位のヒドロキシ基(水酸基)がつぎつぎと縮合した直鎖状の構造である。
セルロースに酢酸と無水酢酸,および少量の濃硫酸を加えると,各グルコース単位の3ヶ所のヒドロキシ基(水酸基)がエステル化(アセチル化)されトリアセチルセルロースとなる。トリアセチルセルロースのエステル結合を部分的に加水分解してジアセチルセルロースに変化させ,アセトンに溶解し繊維状に加工したのが半合成繊維のアセテートである。
またセルロースをアルカリで処理して二硫化炭素と反応させ,これを希薄な水酸化ナトリウム水溶液に溶解させるとビスコースが得られる。これを細孔から希硫酸中に押し出すと加水分解されセルロースが再生し,再生繊維であるビスコースレーヨンが得られる。
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問2.(エ)はアセテートなので,ジアセチルセルロースの一般式b.を選ぶ。
([C6H7O2(OH)(OCOCH3)2]nと[C6H8O3(OCOCH3)2]nは同一のジアセチルセルロースを示す。)
<補足>
- 1. トリアセチルセルロースは完全にアセチル化されているためアセテート繊維を作るときに用いる溶媒(アセトン)に溶けにくいので,エステル結合を部分的に加水分解してジアセチルセルロースに変化させる。
- 2. ビスコースを膜状に再生したのがセロハンである。
- 3. レーヨンにはビスコースレーヨンの他に銅アンモニアレーヨン(キュプラ)もある。
掟38. セルロースの構造や,セルロースを用いて作られる半合成繊維,再生繊維等について説明できるようにしておくべし。