有機化学のオキテ29

有機化学のオキテ29

掟29. 分子式で炭素数が9以上の芳香族化合物についての問題は、まず問題文より必要な構造のみにしぼって考察すべし。

<22-1>問題

化合物Aはオルト位に2つの置換基をもつ芳香族化合物で、分子式はC9H10O2で示される。この化合物Aを加水分解すると、分子式C2H4O2の酸性を示す化合物Bと分子式C7H8Oの酸性を示す化合物Cの等量混合物が得られた。化合物A、BおよびCのそれぞれに塩化鉄(Ⅲ)水溶液を作用させると、化合物Cは呈色反応を示した。化合物Cを過マンガン酸カリウム水溶液で酸化すると、分子式C7H6O3で示される化合物Dが得られた。化合物Dは化合物Cと異なり、炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解した。硫酸を触媒として化合物Dを無水酢酸と反応させると、解熱・鎮痛剤として内服薬に用いられる化合物Eが得られた。この化合物Eは塩化鉄(Ⅲ)水溶液に対して呈色反応を示さなかった。

一方、加水分解反応により得られた化合物Bに硫酸を触媒としてエタノールを作用させると、分子式C4H8O2で示される化合物Fが得られた。

  • 問1. 化合物A、CおよびDの構造式(示性式)を下図の例にならって記せ。
  • 問2. 化合物A、B、C、EおよびFの中で、炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解する芳香族化合物の名称を記せ。
  • 問3. 下線部の反応の名称を記せ。
<東海大学医学部 一部改>

<22-1>解答と解説

<解答>

  • 問1. 下図
  • 問2. アセチルサリチル酸
  • 問3. アセチル化

<解説>

問1~3 芳香族化合物Aは分子式がC9H10O2であり、かつ加水分解されるため芳香族エステルであると考えられる。Aを加水分解して得られた化合物Bは分子式C2H4O2の酸性物質なので酢酸である。Bと同時に得られた化合物Cは塩化鉄(Ⅲ)に対して呈色反応を示す(フェノール類)分子式C7H8Oの酸性物質であり、Aがオルト位の2置換体なので、Cは-クレゾールと決まる。Cを過マンガン酸カリウム溶液で酸化すると分子式C7H6O3で示される炭酸より強酸の(カルボン酸の)化合物Dが得られる。さらにDを硫酸を触媒として無水酢酸と反応させると(アセチル化)、塩化鉄(Ⅲ)に対して呈色反応を示さず解熱鎮痛剤として用いられる化合物Eが得られるので、Dはサリチル酸、Eはアセチルサリチル酸と考えられる。

B(酢酸)に硫酸を触媒としてエタノールを作用させ、分子式C4H8O2の化合物Fを合成する反応はエステル化と考えられるので、その反応は次式のようになる。

化合物A、B、C、E、Fの中で炭酸より強酸(カルボン酸)の芳香族化合物はEのアセチルサリチル酸である。

<補足>

炭素数が9を越える分子式の芳香族化合物の構造異性体数は多いので、全て書き出して選ぶのではなく、問題文で必要とされている構造についてのみ考察するのが一般的である。

掟29. 分子式で炭素数が9以上の芳香族化合物についての問題は、まず問題文より必要な構造のみにしぼって考察すべし。