有機化学のオキテ28
掟28. 分子式C8H8O2で考えられる芳香族エステルの異性体6種類は全てすぐに書けるようにしておくべし。
問題
分子式がC8H8O2で示される芳香族エステルA,B,C,Dがあり,加水分解すると芳香族化合物と脂肪族化合物が得られた。
「芳香族化合物の性質」
- (1)エステルA,C,Dから得られた化合物は金属ナトリウムと反応し,気体が発生した。
- (2)エステルB,C,Dから得られた化合物は水酸化ナトリウムと反応したが,エステルAから得られた化合物は反応しなかった。
- (3)エステルBから得られた化合物は炭酸水素ナトリウム水溶液と反応し,気体が発生した。
- (4)エステルAから得られた化合物を酸化すると,最終的にエステルBから得られた芳香族化合物と同一であった。
- (5)エステルCとDから得られた化合物は塩化鉄(Ⅲ)水溶液を加えると紫色を呈した。
- (6)エステルDから得られた化合物には3つの異性体が存在した。
「脂肪族化合物の性質」
- (1)エステルAとDから得られた化合物は還元性を示した。
- (2)エステルA,C,Dから得られた化合物は炭酸水素ナトリウム水溶液と反応し,気体が発生した。
- (3)エステルBから得られた化合物を酸化すると,最終的にAとDから得られた脂肪族化合物と同一であった。
-
〔1〕エステルA,B,C,Dから得られた芳香族化合物のベンゼン環に結合している原子団をア~キの中から選び,記号で答えなさい。原子団が2つ結合している場合はすべてを書きなさい。
ア.-COOH イ.-CHO ウ.-CH2OH エ.-OH オ.-OCH3 カ.-CH3 キ.-CH2CH3
- 〔2〕エステルA,B,Cから得られた脂肪族化合物の示性式と名称を書きなさい。
- 〔3〕エステルDから得られた芳香族化合物の3つの異性体の構造式と名称を書きなさい。
- 〔4〕エステルA,B,C,Dの中に還元性を示すエステルがある。そのエステルをすべて記号で書きなさい。
- 〔5〕エステルを(ア)希硫酸または(イ)水酸化ナトリウム水溶液で加水分解する場合,どちらを加えたら効率よく加水分解できるかを記号で答えなさい。選んだ理由を説明しなさい。
- 〔6〕水酸化ナトリウム水溶液によるエステルの加水分解を何というか。
解答と解説
<解答>
- 〔1〕A ウ B ア C エ D エ・カ
- 〔2〕A HCOOH,ギ酸 B CH3OH,メタノール C CH3COOH,酢酸
- 〔3〕
- 〔4〕A,D
- 〔5〕(イ)理由:水酸化ナトリウムはエステルの加水分解によって生じたカルボン酸と中和反応を起こし,反応の平衡系からカルボン酸が除かれるため加水分解反応が促進され,効率が良くなる。
- 〔6〕けん化
<解説>
-
〔1〕~〔3〕分子式C8H8O2で考えられる芳香族エステルとその加水分解生成物は次図のようになる。
分子式C8H8O2の芳香族エステルA,B,C,Dとその加水分解生成物について①~⑥を参考にしながら構造を考察すると
- 〔4〕ギ酸のエステルはアルデヒド基(-CHO)をもつ構造なので還元性を示す。ギ酸のエステルはA,Dである。
- 〔5〕ルシャトリエの原理を用いて考える。
- 〔6〕水酸化ナトリウムのような強塩基を用いてエステルを加水分解する場合をけん化という。
掟28. 分子式C8H8O2で考えられる芳香族エステルの異性体6種類は全てすぐに書けるようにしておくべし。