有機化学のオキテ16,17

有機化学のオキテ16,17

掟16. 脂肪族の炭素数が5以上の分子式についての問題は、難易度が高い可能性があると心得よ。

掟17. 分子式C5H12Oで考えられる8種類のアルコールの構造異性体のうち、光学異性体をもつのは3種類、そのうちヨードホルム反応陽性のものは2種類(陰性は1種類)であることを覚えておくべし。

<10-2>問題

下記の設問に答えなさい。

元素の質量百分率が、炭素68.2%、水素13.6%、酸素18.2%であり、分子量が88.0の有機化合物には、多くの構造異性体が存在するが、これらは官能基の違いにより、金属ナトリウムと反応して水素を発生するグループIと、金属ナトリウムとは反応しないグループIIに分類することができる。

グループIの化合物は、極性の強い(ア)基をもち、互いに(イ)結合によって結びつく。一方、グループIIに属する化合物は極性をもたないため、グループIの化合物に比べて沸点が低い。グループIには、8個の構造異性体が存在するが、これらの中で、不斉炭素原子を有するものは(ウ)個、ヨードホルム反応を示すものは(エ)個、酸化するとフェーリング液を還元する化合物を生じるものは(オ)個、酸触媒を用いて脱水すると幾何異性体を生じるものは(カ)個存在する。

化合物AはグループIに属し、ヨードホルム反応に陰性であり、酸化反応によりケトンを生じる。また、化合物BもグループIに属するが、酸化されにくく、酸触媒を用いて脱水すると臭素水を脱色する化合物を生じる。
C=12.0、H=1.00、O=16.0

  • 問1. 下線で示した化合物の分子式を記せ。
  • 問2. 文中の空欄(ア)および(イ)にあてはまる語句を記せ。
  • 問3. 文中の空欄(ウ)(カ)にあてはまる数値をa~fの中からそれぞれ一つずつ選び、記号で答えよ。ただし、くり返して選んでもよい。
    a:1 b:2 c:3 d:4 e:5 f:6
  • 問4. 化合物Aおよび化合物Bの構造式を、下の例にならって、それぞれ記せ。
<東海大学医学部>

<10-1>解答と解説

<解答>

  • 問1. C5H12O
  • 問2. (ア)ヒドロキシ(水酸) (イ)水素
  • 問3. (ウ)c (エ)b (オ)d (カ)b
  • 問4. 下図

<解説>

  • 問1. 化合物中の原子数の比を求めると よって組成式はC5H12O(式量88.0)となり、組成式量と与えられた分子量が一致するので分子式もC5H12Oになる。
  • 問2. グループIは金属ナトリウムと反応して水素を発生するので分子式C5H12Oの物質としてはヒドロキシ基をもつアルコールが考えられる(グループIIはエーテルと考えられる)。ヒドロキシ基をもつアルコール分子は互いに水素結合によって結びつく。
  • 問3. グループIのアルコールの構造異性体は次の8種類が考えられる。
    • (ウ)不斉炭素原子を有するのは(2)(5)(6)の3種類存在する。
    • (エ)ヨードホルムを示反応すのは以下の構造をもつ化合物で、(2)と(6)の2種類の化合物が前者の構造をもつ。
    • (オ)酸化して還元性を有する化合物が生じるのは第一級アルコールであるから(1)(4)(5)(8)の4種類存在する。
    • (カ)(2)と(3)を脱水するとが生じ、幾何異性体を生じる化合物は2種類存在する。((2)を脱水するとザイツェフ則(補足3)に従い主生成物シス-2-ペンテンを生じるが、副生成物として幾何異性体を生じない構造異性体も生じる)
  • 問4. 化合物AはグループIに属し、ヨードホルム反応に陰性なので(1)(3)(4)(5)(7)(8)のいずれかである。さらにAは酸化反応によりケトンを生じるので第二級アルコールであるから(3)と決まる。化合物BもグループIに属し、酸化されにくいので第三級アルコールとなり(7)と決まる。(7)は酸触媒を用いて脱水すると臭素水を脱色するアルケンを生じる。(補足3参照)。

<補足>

  • 1. この様な構造決定の問題を解く場合には、可能なら分子式で考えられる異性体の構造式(示性式)を全て書いて、その中から必要なものを選ぶのが確実な解法であろう。その意味で頻出の分子式については、構造異性体数を知っておくことが書きもらし等を防ぐための有効な方法になり得る。(脂肪族では炭素数が5を越えると異性体数が多くなり問題の難易度が上がる。)
  • 2. 分子式C5H12Oで考えられる飽和アルコール8種類の構造異性体のうち不斉炭素原子をもつのは3種類であり、この3種類のうち2種類がヨードホルム反応が陽性(1種類は陰性)である。このことは覚えておくと便利である。
  • 3. 問3で(2)を、問4で(7)を脱水すると主生成物と副生成物が生じるのはザイツェフ則による。
    ■ザイツェフ則:「有機化合物から化合物HX(Xは各種官能基やハロゲン族原子)が脱離するとき、H原子の脱離は脱離が起こり得る炭素原子のうち、直接に結合している水素原子の数がより少ない炭素原子の方で起こる。」

掟16. 脂肪族の炭素数が5以上の分子式についての問題は、難易度が高い可能性があると心得よ。

掟17. 分子式C5H12Oで考えられる8種類のアルコールの構造異性体のうち、光学異性体をもつのは3種類、そのうちヨードホルム反応陽性のものは2種類(陰性は1種類)であることを覚えておくべし。