有機化学のオキテ15

掟15. 分子式C5H12Oは飽和一価アルコールかエーテルを表しアルコールの構造異性体が8種類、エーテルの構造異性体が6種類考えられる。この数は覚えておくべし。(C4H10Oの構造異性体数の2倍になっている)

問題

化合物A~Fが(ア)~(オ)の条件を満たすものとして、下記の設問に答えなさい。

  • (ア)A、B、Cの分子式はC5H12Oで示される。
  • (イ)A、B、Cは金属ナトリウムと反応して水素を発生する。
  • (ウ)硫酸で酸性にした二クロム酸カリウム溶液と反応させると、AはDに、BはEを経てFに変化するが、Cは変化しない。
  • (エ)A、B、E、Fには不斉炭素原子があるが、CとDにはない。
  • (オ)A、B、Cは炭素原子が枝分かれして結合している。
  • 問1. (ア)と(イ)の条件から、化合物A、B、Cに共通する構造上の特徴を(a)~(f)の中からすべて選び、記号で答えなさい。
    • (a)カルボキシ基がある
    • (b)エーテル結合がある
    • (c)ヒドロキシ基がある
    • (d)アルキル基がある
    • (e)二重結合がある
    • (f)環状構造がある
  • 問2. (ア)と(イ)の条件を満たす異性体の数を答えなさい。ただし、光学異性体の区別はしないものとする。
  • 問3. (ア)、(イ)および(ウ)の条件から、化合物A、B、Cを構造上の特徴により分類し、その名称をそれぞれ書きなさい。

  • 問4. (ア)~(オ)の条件を全て満たす化合物A、B、Cの構造式をそれぞれ書きなさい。

  • 問5. Fを分液ロートに入れ、ジエチルエーテルと水酸化ナトリウム水溶液を加えてよく振り混ぜてからしばらく放置した。このときFが反応してできた物質は、上層・下層どちらに溶解しているか。またその物質の構造式を書きなさい。

  • 問6. Eに含まれる官能基は、次の(ⅰ)~(ⅵ)のどの反応によって検出されますか。下記の(ⅰ)~(ⅵ)の中から該当するものを全て選び、記号で答えなさい。
    • (ⅰ)フェーリング反応
    • (ⅱ)ビウレット反応
    • (ⅲ)ニンヒドリン反応
    • (ⅳ)銀鏡反応
    • (ⅴ)ヨードホルム反応
    • (ⅵ)キサントプロテイン反応
<日本医科大学 一部改>

解答と解説

<解答>

  • 問1. (c)(d)
  • 問2. 8種類
  • 問3. A 第二級アルコール B 第一級アルコール C 第三級アルコール
  • 問4. 下図解答図4
  • 問5. 下図解答図5
  • 問6. (ⅰ)(ⅳ)

<解説>

  • 問1. C5H12OはCnH2n+2Oの形式にあてはまるので、飽和一価アルコールかエーテルの分子式である。A、B、Cは金属ナトリウムと反応して水素を発生するのでアルコールである。よって(a)~(f)のうち、アルコールの構造上の特徴である(c)と(d)を選ぶ。
  • 問2. 分子式C5H12Oのアルコールの構造異性体は次の8種類が考えられる。
    • 解説図2-1
    • 解説図2-2
    • 解説図2-3
    • 解説図2-4
    • 解説図2-5
    • 解説図2-6
    • 解説図2-7
    • 解説図2-8
  • 問3. Aは酸化されてDに変化するので第二級アルコールである。Bは酸化されてEを経てFに変化するので第一級アルコールである。Cは酸化されないので第三級アルコールである。lip>
  • 問4. Aは炭素原子が枝分かれして結合している第二級アルコールで、酸化して生じたDには不斉炭素原子がないため(6)と考えられる。 解説図4-1

    Bは炭素原子が枝分かれして結合している第一級アルコールで、酸化して生じたE、Fにも不斉炭素原子があるため(5)と考えられる。

    解説図4-2

    Cは炭素原子が枝分かれして結合している酸化されない第三級アルコールなので(7)と考えられる。

    解説図4-3
  • 問5. エーテルよりも水の密度が大きいため、上層はエーテル層、下層は水層になる。下層の水層には水酸化ナトリウムと反応して塩となり水に溶けるようになったFが溶解している。
  • 問6. Eに含まれている官能基はアルデヒド基なので、還元性を調べる反応によって検出される。よって(ⅰ)(ⅳ)となる。
    • (ⅱ)ビウレット反応:タンパク質の検出反応
    • (ⅲ)ニンヒドリン反応:アミノ酸、タンパク質の検出反応
    • (ⅴ)ヨードホルム反応:CH3-CO-、CH3-CH(OH)-の検出反応
    • (ⅵ)キサントプロテイン反応:タンパク質の検出反応

<補足>

分子式C5H12Oで表されるエーテルは次の6種類がある。

  • 補足図1
  • 補足図2
  • 補足図3
  • 補足図4
  • 補足図5
  • 補足図6

掟15. 分子式C5H12Oは飽和一価アルコールかエーテルを表しアルコールの構造異性体が8種類、エーテルの構造異性体が6種類考えられる。この数は覚えておくべし。(C4H10Oの構造異性体数の2倍になっている)