有機化学のオキテ12

掟12. アルコールの性質(親水性,中性,水素結合の形成)や反応(酸化,脱水,製法,ナトリウムの単体との反応,ハロゲン化アルキルの生成)を反応式を含め,きちんと覚えておくべし。

問題

アルコールに関係する以下の各文中の(a),(b)に当てはまるものが正しい順に並んでいる組合せをそれぞれの選択肢の中から選べ。

  • (1)アルコール分子には炭化水素基とヒドロキシ基(水酸基)が存在する。直鎖状の一価第一級アルコールでは炭素原子の数が増えるほど水に対する溶解度が(a)なり,また一般に同じ炭素数のアルコールであれば(b)ほど水に溶けやすくなる。
    • (A)小さく――価数が増す
    • (B)大きく――級数が減る
    • (C)小さく――価数が減る
    • (D)大きく――級数が増す
    • (E)大きく――価数が減る
  • (2)アルコールとフェノールのヒドロキシ基は塩基性物質に対する反応性が異なるため,NaOHおよびNaHCO3水溶液に対して,アルコールは(a)が,フェノールは(b)のみと反応する。
    • (A)いずれとも反応する――NaOH
    • (B)いずれとも反応する――NaHCO3
    • (C)いずれとも反応しない――NaOH
    • (D)いずれとも反応しない――NaHCO3
    • (E)NaOHのみと反応する ――NaHCO3
  • (3)1-プロパノールおよび2-プロパノールの酸化によって得られるカルボニル化合物のうち,前者は(a)に,後者は(b)に陽性を示す。
    • (A)連鎖反応――フェーリング反応
    • (B)ヨードホルム反応――フェーリング反応
    • (C)ニンヒドリン反応――ヨードホルム反応
    • (D)フェーリング反応――銀鏡反応
    • (E)銀鏡反応――ヨードホルム反応
  • (4)グルコースの発酵によってエタノールと(a)が生成する反応はアルコール発酵として知られているが,酢酸発酵はエタノールが(b)と反応して食酢ができる反応のことである。
    • (A)H2O―CO2
    • (B)O2―CO2
    • (C)H2O―O2
    • (D)CO2―O2
    • (E)CO2―N2
  • (5)アルコールはナトリウムと反応して(a)を発生したり,HBrと反応して臭化アルキルと(b)を生成することから,場合によってアルコールは酸あるいは塩基として作用すると考えられる。
    • (A)H2―H2O
    • (B)H2O―Br2
    • (C)H2O―H2O
    • (D)O2―H2O
    • (E)H2―Br2
  • (6)エチレンに水を付加させると(a)が生成するが,アセチレンに水を付加させると生成する(b)は不安定であるため,直ちにアセトアルデヒドに変化する。
    • (A)エタノール――アリルアルコール
    • (B)ビニルアルコール――アリルアルコール
    • (C)エタノール――エチレングリコール
    • (D)エチレングリコール――ビニルアルコール
    • (E)エタノール――ビニルアルコール
  • (7)アルコールが分子量のわりに異常に高い沸点を示すのは(a)という分子間力がヒドロキシ基を介して働いているためで,同様の分子間力は(b)が高沸点であることの原因ともなっている。
    • (A)疎水結合――カルボン酸
    • (B)水素結合――ケトン
    • (C)水素結合――カルボン酸
    • (D)ファンデルワールス力――ケトン
    • (E)ファンデルワールス力――アルデヒド
<北里大学医学部>

解答と解説

<解答>

  • (1)-(A)
  • (2)-(C)
  • (3)-(E)
  • (4)-(D)
  • (5)-(A)
  • (6)-(E)
  • (7)-(C)

<解説>

  • (1)直鎖状の一価第一級アルコールでは,炭素原子数が増えるほど疎水性の炭素水素基の影響が大きくなるため水に溶けにくくなる。また同じ炭素数のアルコールでは,価数が増すほど,すなわち-OHの数が増すほど親水性の官能基の影響が大きくなるので水に溶けやすくなる。
  • (2)アルコールのヒドロキシ基は中性を示し,NaOH,NaHCO3両方に対して反応性を示さない。フェノールのヒドロキシ基は弱酸性を示し,塩基であるNaOHとは反応するが,フェノールは炭酸より弱酸なのでNaHCO3とは反応しない。
  • (3)プロピオンアルデヒドは銀鏡反応やフェーリング反応に対して陽性を示す。アセトンはヨードホルム反応に対して陽性を示す。 解説図3
  • (4)グルコースの発酵によってエタノールとCO2が生成する反応はアルコール発酵として知られている。酢酸発酵はエタノールがO2と反応して酢酸ができる反応のことである。解説図4
  • (5)アルコールはナトリウムの単体と反応して水素を発生したり,HBrと反応して臭化アルキルとH2Oを生成する。この場合アルコールからH+あるいはOH-が供給されたととらえると,アルコールは酸あるいは塩基として作用したと考えられる。解説図5
  • (6)エチレンに水を付加させるとエタノールが生成するが,アセチレンに水を付加させると生成するビニルアルコールは不安定であるため直ちにアセトアルデヒドに変化する。解説図6
  • (7)アルコールは分子間で水素結合が働くため,分子量のわりには非常に高い沸点を示す。またこの水素結合はカルボン酸でも同様に働くが,ケトンやアルデヒドでは働かない。

掟12. アルコールの性質(親水性,中性,水素結合の形成)や反応(酸化,脱水,製法,ナトリウムの単体との反応,ハロゲン化アルキルの生成)を反応式を含め,きちんと覚えておくべし。