有機化学のオキテ46
掟46. ビニロンの合成法を説明できるようにしておくべし。
問題
高分子化合物を合成するときに用いる低分子化合物を(A)という。(A)であるアジピン酸とヘキサメチレンジアミンの反応では、低分子化合物の分子間でつぎつぎに(B)反応が起こり、高分子化合物である(C)が生成する。これは、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンが分子中にそれぞれ2個以上の重合可能な官能基(この場合は、カルボキシ基とアミノ基)を持つために起こる。このような反応を(B)重合とよぶ。同様な反応は、①テレフタル酸とエチレングリコールの反応でも生じる。
一方、(D)をもつアクリロニトリルは、適当な条件下で反応させるとつぎつぎに(E)反応が起こり、高分子化合物が生成する。酢酸ビニルの(E)重合により得られるポリ酢酸ビニルをアルカリでけん化すると(F)を生じる。これを水に溶かした後、細孔から硫酸ナトリウム水溶液中に押し出すと、繊維となる。これを②ホルムアルデヒド水溶液で処理すると、(G)とよばれる合成繊維がある。
- 問1. 文章中の空欄(A)~(G)にあてはまる語句をa~jから一つずつ選べ。
a:単量体 b:ニトロ基 c:不飽和結合(二重結合) d:縮合 e:付加 f:置換 g:ポリアミド h:ポリエステル i:ビニロン j:ポリビニルアルコール - 問2. 文章中の下線部①の反応により生じる化合物の構造式(示性式)と化合物名を記せ。
- 問3. 下線部②の処理はアセタール化とよばれる反応に基づく。この反応に関わる二つの官能基名を記せ。
解答と解説
<解答>
-
問1.
- (A)a
- (B)d
- (C)g
- (D)c
- (E)e
- (F)j
- (G)i
- 問2. 下図
- 問3. ヒドロキシ基、カルボニル基(アルデヒド基)
<解説>
-
問1.
- (A)高分子化合物を合成するときに用いる低分子化合物を単量体(モノマー)という。
- (B),(C)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの分子間でつぎつぎに縮合反応が起こり、ポリアミド(6,6-ナイロン)が生成する。
- (D),(E)不飽和結合(二重結合)をもつアクリロニトリルの分子間でつぎつぎに付加反応が起こり、高分子化合物(ポリアクリロニトリル)が生成する。
- (F),(G)ポリ酢酸ビニルをアルカリでけん化するとポリビニルアルコールを生じる。これを水に溶かした後、細孔から硫酸ナトリウム水溶液中に押し出すと繊維となる。これをホルムアルデヒド水溶液で処理すると(アセタール化)ビニロンとよばれる合成繊維が得られる。
- 問2. 下図
- 問3. ポリビニルアルコールは親水性のヒドロキシ基を多く含み水に可溶なので、ホルムアルデヒドと反応させ、ヒドロキシ基をメチレン基(-CH2-)で結び水に溶けないビニロンに変化させる。この反応をアセタール化といい、ホルムアルデヒドのカルボニル基と2つのヒドロキシ基が次図のように反応する。
<補足>
ビニロンを合成するときには、ヒドロキシ基のうち30~40%をアセタール化するにとどめてある。残りの60~70%のヒドロキシ基は繊維に適度な吸湿性を与えるのに役立っている。(ビニロンは1939年に日本で発明された初の国産合成繊維である。)
掟46. ビニロンの合成法を説明できるようにしておくべし。