有機化学のオキテ19

有機化学のオキテ19

掟19. マレイン酸やフマル酸(C4H4O4)に水(H2O)を付加するとリンゴ酸(C4H6O5)になり、水素(H2)を付加するとコハク酸(C4H6O4)になることを知っておくべし。

<11-2>問題

下記の設問に答えなさい。

化合物Aは分子式がC4H6O5で、不斉炭素原子を持つヒドロキシジカルボン酸である。Aを160℃に加熱すると脱水し、BとCの異性体の混合物が得られる。BとCの水への溶解度(g/100g水)は30℃で、B:88、C:0.8と大きく異なっている。BとCはそれぞれ白金触媒下で等モルの水素と反応し、同一の物質Dとなる。Bを160℃に加熱するとEとなるが、Cは同一条件では反応しない。

  • 問1. BとCのような関係にある異性体の名称はなにか。
  • 問2. Cの構造式を記せ。ただし、単結合は-、二重結合は=の価標で示すこと。
  • 問3. BからDへの反応の名称は何か。
  • 問4. Dの構造式を記せ。ただし、単結合は-、二重結合は=の価標で示すこと。
  • 問5. Eの名称は何か。
  • 問6. BとCの水への溶解度が、大きく異なる理由を簡潔に説明せよ。
<金沢医科大学>

<11-2>解答と解説

<解答>

  • 問1. 幾何異性体(シス-トランス異性体)
  • 問2. 下図
  • 問3. 付加反応
  • 問4. 下図
  • 問5. 無水マレイン酸
  • 問6. Bのマレイン酸は極性分子であるため極性溶媒の水への溶解度は大きいが、Cのフマル酸は無極性分子なので極性溶媒の水への溶解度は小さいため。(フマル酸では分子間水素結合のみが生じるのに対して、マレイン酸では分子内水素結合も生じ、フマル酸より分子間水素結合の数が減少するため分子間の結合力が弱まること、結晶の安定性の違いも溶解度の異なる原因となる。)

<解説>

A~Eの関係は下の図の様になる。

  • (1)Bのマレイン酸とCのフマル酸は幾何異性体(シス-トランス異性体)となっている。
  • (2)Cフマル酸はトランス形の異性体である。
  • (3)BからDへの変化は白金触媒下での水素の付加反応である。
  • (4)Bのマレイン酸に水素を付加するとDのコハク酸となる。
  • (5)Bのマレイン酸を加熱すると、2つのカルボキシ基が互いに近接しているので容易に脱水して酸無水物であるEの無水マレイン酸に変化する。
  • (6)最低限、マレイン酸とフマル酸の分子の極性と溶解度との関係については説明す

<補足>

  • 1. リンゴ酸の分子式C4H6O5から水の分子H2Oを引くとC4H4O4となり、マレイン酸やフマル酸の分子式になることは認識しておくこと。
  • 2. コハク酸は脱水により酸無水物の無水コハク酸に変化する。
  • 3. マレイン酸とフマル酸に臭素を付加すると共に

    となり、同一分子内に不斉炭素原子が2つ存在する化合物を生じる。この化合物には不斉炭素原子が2つ存在するので理論上は22=4種類の光学異性体が考えられるが、分子内に対称面があるため2種類が同一のものとなり(メソ体)実際には3種類の光学異性体しかない。(酒石酸にも不斉炭素原子が2つ存在するが同様な理由で3種類の異性体しかない。)

  • 4. 乳酸、リンゴ酸、酒石酸のように、分子中にカルボキシ基とヒドロキシ基の両方をもつ化合物を、ヒドロキシ酸という。

掟19. マレイン酸やフマル酸(C4H4O4)に水(H2O)を付加するとリンゴ酸(C4H6O5)になり、水素(H2)を付加するとコハク酸(C4H6O4)になることを知っておくべし。