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以下の記事は2015年時の記事です。
Vol.15 「臓器移植」
現在、【再生医療】への期待が大きく膨らんで、【iPS細胞】を利用して一刻も早く自分の体細胞から自分の臓器が作られる日がやってくることを切望している人達(レシピエント)は地球上に数えきれない。しかし、そんな臓器移植を望む人の数に比して臓器提供者(ドナー)数の絶対的不足は目を覆うばかりである。再生医療の進歩への時間を待つまでの間の期待と絶望とを抱えたレシピエント達を救えない現実をどう捉え、どう対処するかが、現在緊急課題として全世界で取り組んでいる問題なのである。
ここで諸君には絶対に忘れてはならないこととして【臓器移植】と【脳死】問題とはセットになっているということである。端的に言ってしまうと、脳死問題があって初めて臓器提供の問題が浮上してくる仕組みになっているということである。その根底には臓器移植が、出来る限り新鮮な臓器を必要としているという現実がある。ドナーカードに自分の死後、臓器を提供する旨を記し残すことが善意の行為として推奨されている現在ではあるが、実際には【心臓死】した死体からの臓器摘出で使える臓器はごく限られている。大半が医学生の練習用として使用されるのであって、ほとんどの臓器は生体には移植不可のものとなるのが現実である。
このような中、何とかして新鮮な臓器を提供するために、脳死者からの提供に期待するのである。それは日本におけるそれまでの臓器提供がほとんど自然死体からの【心停止後臓器提供】であったものであるが、ここ15年の傾向として、海外から入ってきた脳死下臓器提供の流れによって【脳死】問題に議論が収斂されてきたのであった。その経緯は、脳死を死と認めない限り臓器提供は認められないという至ってまともな発想から始まった。だから2001年の脳死・臓器移植学界における「臓器提供の意思を表明した者のみが脳死状態を死と定める」としていたのにもかかわらず、2009年の「脳死臨調」での答申では、「脳死は死である」と法的に定めてしまった。のみならず、明確な自己意識とは認められないという理由によってそれまで許可されなかった「15歳未満の子供の臓器提供も親権者の同意があれば認める」という決定までなされた。更におとなの臓器提供も「本人の意思が不明な場合にも、家族の同意があれば認める」との決定もなされた。これらからも、いかに脳死者からの臓器提供が切望されているかという現実を読み取ることができる。この現実のもとで、死体からの臓器摘出は何ら問題がないという理由付けのために脳死問題は揺れ動いたのであった。
この問題に対して世界中の国々が知恵を出し合った結果が、現状の各国ばらばらの脳死判定基準となってしまったのである。根幹にはレシピエントの数に対する絶対的なドナー不足が作用しているのである。とにかく新鮮な臓器が欲しい、との要求にどう応えるかがすべての始まりであることを認識してほしい。
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