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以下の記事は2015年時の記事です。
Vol.05 「代理出産」
生殖補助医療技術【ART=(Assisted ReproductiveTechnology)】の一環として代理出産がある。子の出来ない親がどんなに子供が欲しいからと言ってもクローン技術を使うことは現在世界の殆どの国々で許されていない。子の出来ない親がせめて利用できる技術がこのARTであるが、本来不妊症患者に対する正当な医療行為として認められている。不妊症治療には、広く【人工授精】と【体外受精】の二種類が知られている。簡単に覚えるならば、人工授精は、男性側の問題により妊娠できない場合に行われる。採取した男性の精子を女性の子宮に入れて着床を待つ方法である。体外受精は、主に女性側に原因があって為される医療である。卵巣から採取した女性の卵子を体外で受精させ、その受精卵を培養し、体内(子宮)に戻し移植する方法である。人工授精は男性側に、体外受精は女性側に原因を求められる。注意を要するのは、人工授精の(じゅ)は「授」であり、体外受精の(じゅ)は「受」である点だ。小論を書く時に間違えないように。しかしこれ以外にも子供欲しさの気持ちに応える方法として【代理出産】がある。諸君はこの夏タイで何人もの(20人を超える)子供を複数のタイ人女性に代理出産させたという有名企業の息子の行状をマスコミの報道で聞き知ったことだろう。この異様さは、子供用の臓器売買の目的ではないかとの憶測まで生んで大騒ぎになったが、日本では代理出産には厳しい法的規制がかかっており夫婦以外の第三者への代理出産は人工授精であろうが体外受精であろうが許可されていないのである。その結果として、どうしても貧困国の法的規制の緩さに付けこむ事態が生じているのが現状である。問題点として、法制上の親と実際上の親の判断が出来ない現実をどう定めるかが決められるべきである。そればかりではなく、女性の体を子供を産む機械の部品のように考え、その結果代理妊娠・出産をする女性への肉体的精神的負担をどうするかもまだ法整備されていないのである。この倫理面での理解も不備である。
*更に、今年8月やはりタイでの事件だが、「豪州の夫婦、タイで依頼」との副題で、「代理出産ダウン症児引き取らず」という酷い現実を突きつけられた。これについては経緯が報道機関によってまちまちなので判断しようがないが、オーストラリアの夫婦が、タイ人女性に代理出産を依頼したが生まれた子供が【ダウン症】であった為、その子の引き取りを拒否したままオーストラリアに帰ってしまったというものである。このような倫理的問題を残したまま代理出産による子供欲しさの希望は許容されるのか、今後の課題である。
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