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以下の記事は2016年時の記事です。
Vol.08 「尊厳死」
次項の用語 09 【安楽死】と混同する生徒が多いので注意を要す。
尊厳死は自然死を意味する。自然死とは、人それぞれが与えられた寿命の終わりを自然に受け入れて、無理な延命をせずに死んで行くことである。よって老衰死ばかりではなく何らかの病気による死や事故死をも含む。死期を自然体で受け入れることでもある。過度な延命は、【終末期患者】やその家族に、思わぬ負担を掛けるものである。例えば、人工呼吸器や栄養補給のための点滴や胃ろうなど、患者の体に幾本もの管を刺したり取り付けたりし(この状態を【スパゲッティ症候群】と呼ぶ)、一分一秒でも患者の命を永らえさせようとする措置である。何が何でも生きながらえさせることは医師として当然だというという考え【SOL=生命の尊厳】を医者の使命と心得て、善意の努力を続けることを【医の倫理】と呼ぶ。あくまでも患者のためを思っての措置だという善意に裏打ちされてはいる。
ところが、最近の医療現場では、「ただ単に生物体として呼吸しているだけの生き方は拒否する。」という患者からの強いしかも自然な要求が起こっている。この要求は、患者の【QOL】の主張である。QOLとは「生活の質」ということで、患者の「より良い生き方」を尊重しようという考え方である。
患者は自分の終末期の生き方も、更に死に方も自分で決定できるという【自己決定権】を有している。この権利は治療に際しても、医師から出来る限りの情報を提供され、医師と話し合う機会を持ち、治療のメリット、デメリットを相談した結果として自己決定できるという【インフォームドコンセント】の考え方にも通じている。これまでの医者の言うことは絶対だという【パターナリズム=温情的父権主義】が追いやられて、患者の意思や人権を尊重しようという考え方が普及してきている。
このような流れの中で、患者は自分の終末期の状態を容易に想像でき、過度な【延命措置】は拒否するという意思を表明することができるし、家族に伝えることや、文書にして残すこともできる。これを【LW(リビングウイル)=尊厳死宣言】と言い、条件が揃うことを前提として、医師は患者の意思を尊重しなければならない。
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